縁側
2015年8月のお話。
「ただいまー」
家に帰った千夏が家の中へと帰りのあいさつをする。
が、ほとんど家の外に出てこない家主のような存在の返事がない。
「…?また何かやってるのかな?」
大抵こういう時はリビング内にいるのでそちらの方に向かってみる千夏。
が、いつもそこでだらだらとパソコン開いたり、アイスを食らってたりする幼女の姿は無い。
「あれ…?優美ちゃーん!」
リビングは大体家の中心に位置する。
まあここで思い切り声を張り上げれば風呂場で水を全開にしてたりしなければ聞こえるはずである。
「おかえりー」
「どこー!」
「ここー」
ここってどこだよという突っ込みが内面から湧くが幸い二階が存在しないので、
声の聞こえた方角からある程度予想はつく。
「あ、こんなとこにいた」
「ん、わり、おかえり。聞こえんかった」
「なにしてるの?」
「見ればわかるっしょ」
「スイカ?」
「スイカ」
縁側スペースに行ってみれば案の定そこにいる優美。
その脇にはスイカ。
どうやらここで食べていたらしい。
「なんでここでスイカ食べてるの」
「いや…縁側と言えばスイカかと」
「どういう繋がりなんですかね…」
「なんかアニメとかドラマで食ってるシーンあるやん。それ思い出してさ」
「スイカどっから持ってきたし」
「冷蔵庫に余ってたやつをこう」
「…ああ、あれ。昨日の」
「そ、俺が切るなんて面倒なことをするわけが無かろう」
「安定の面倒くさい精神」
「ほっとけ。つか食べる?」
「ん、食べるー」
「じゃあとりあえず着替えて来いよ。まだ冷蔵庫に残ってるはずだから」
それから数分。
縁側に戻ってくる千夏。
「ん、お前の分」
「ありがとー」
「あとお茶」
「準備いいですね」
「まあこれくらいやるわ。飯は作らねえけど」
「作る方もやっていいのよ」
「やる気ねえ」
「幼女巫女の手作りとか需要あるんじゃないの?」
「どこの層にだよ。というか仮にあってもここでそれを食う人間なんざお前と俺しかいないではないか」
「まあね」
「あえてあげるのであれば偶に茂光とか川口とかはありそうだがそんくらいだろ」
スイカを一かじり。
「ぷっ」
「え?」
「ん、どうした」
「いや、なにしてるの」
「種を発射しただけだが」
「いや何故に」
「いや縁側でスイカ食って種をまき散らすのやってみたかったんよ」
「まき散らすって」
「悲しいかな縁側があるような家なんざ俺の周辺になかったもんでな。とか思ってたらいい感じにこの家がやれそうだったからやってみた」
「まあなんかやりたくなるのは分かるけどね。行儀はいいとは言えないけど」
「大丈夫。今のところ参拝客が来る気配無いのは確認済みだ。最悪来ても正面にいる分は見えん」
「でも正面誰もいないから探しに来るかもしれないじゃん」
「その時はその時」
「運営適当過ぎるでしょうに」
「今に始まったことでもねえ」
順調に大地に種を蒔いていく優美。
まあ生えても雑草だけであろうが。
「しかし熱い」
「熱いね。汗かいちゃう」
「タオル常備しとらなやっとれんな」
「でも巫女服は脱がないのね」
「いや自室だと脱いでるけど」
「脱いでんですか。めんどいとか言ってたのに」
「まあさすがに暑いしなあ…脱いでる。シャツ一枚。その状態でクーラーガンつけで布団にくるまる」
「おい」
「いやまあ見る人いないですしおすし。てっきとうでいいでしょ適当で」
「いたら駄目ですわ。女の子としてそれあかんとですよ」
「いいんですいいんです。自室くらい適当でかまわんのです」
「駄目だこの人。早く何とかしないと」
「まあ外に出るときはこの格好だから大丈夫だろ」
「…あれ、というかもうスイカ食べたの?早くない?」
「そうか?」
「え、結構置いてあったよね?」
「4切れくらいだろ」
「いや今の短時間で早」
「安心しろ全部種はマシンガンしといた」
「いやそれは聞いてないから」
なおキレイさっぱりスイカの皮以外無くなっていた。
種は本当に全部発射したようである。
「まあゆっくり食えよ」
「せかされても私そんなに早く食べれませんから」
「まあそうか」
「というか私が遅いというか優美ちゃんが早すぎるだけなんだよなあ…」
「早く食べないと食った気しないし」
「その思考回路は…優美ちゃん、体重気にした方がいいよ?」
「一応増えてない」
「あ、見てたんだ」
「一応な」
なおここに来た当初から大した運動もしない割に
結構ドカ食いしてる気がするが、その分のエネルギーがどこにいっているのかは謎である。
「ん」
「どうしたの?」
「いや、木になんかいるなと」
「え、どこに」
「いやほら正面。黒いの」
「え、G」
「いやなんでもGにするなよ。違うから…たぶん」
「Gだったら全力で私逃走するからね」
「あいあい」
縁側から木の方へ近づく優美。
「おお、カブトムシ」
「カブトムシ?」
「うむ。いや久々にまともに見たな。網あったっけ…」
「え、何する気ですか」
「え、せっかくだから捕まえようかと。まあすぐ離すけど」
「私虫嫌いなんですが」
「カブトムシくらいならいけるっしょ?」
「Gよりはましだけど…」
「ん、これくらいなら手でいけるか。どれ」
さっと手づかみで捕まえる優美。
慣れたもんである。
「よっしゃゲット」
「ささっと行きましたね」
「ひっさしぶりだったから自信なかったけどな。最後にこんなんやったのいつのことやら」
角に軽く触れる優美。
今でこそ家に引きこもり気味だが、
昔はこれでも外ではしゃぎ倒していた人間である。
「昔はいろいろ捕まえたなあ」
「そうなの?」
「ああ、バッタ追いかけて遊んだわ。セミが一番難敵だったかな。掴むの的な意味で」
「とりあえず私の方に近づけなくていいですからねはい」
「まあまあそう言わず。幼虫じゃないから大丈夫大丈夫」
「それあなたでしょうが!」
「まあね」
芋虫タイプはどうも苦手な優美である。
「寄るなといってるんですが」
「お前の隣に座ろうとしてるだけなんです」
「あ、はい」
隣に座りなおす優美。
千夏の目線がカブトムシに注がれる。
「そんなに虫駄目なん?」
「この前セミ乱入したときに叫んだでしょうが。嫌いなんです」
「カブトムシかっこええのに。男のロマンちゃうの」
「裏が…ねえ?あと今女の子だからいいの」
都合よく女の子を使っていく千夏であった。




