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二人は風邪の子

「むう…確かにちょっとあるな。熱」


体温計を見ながらしかめっ面になる優美。

千夏が寝ながら答える。


「大丈夫だと思ってたんだけどね」


「薄着が効いたか」


「かも」


「まあそこまで高いわけでもねえ。風邪だな」


千夏は風邪をひいていた。

またあの日かと最初は思ったが、周期が早すぎるのでそれはない。


「まあ安静にするだな。半日か一日寝れば治るだろ」


「たぶん」


「欲しいものあったらいいな。用意できる範囲で用意するからよ」


「ありがとう」


「気にするな。とりあえずしばらく寝てろ。必要なもの買ってくる」


「優美ちゃんが自主的に外に行こうとするとは」


「こういう時に外に出ないでどうする。まあ冗談言えるなら大丈夫だな」


そう言って千夏の部屋から出る優美。

そのまま自分の部屋に戻ってぱっぱと着替える。

普段なら外に出るのは渋るが、こういう時までそんなことを言う気はない。


「…うん、まあおかしなとこは無いよな。にしても外寒そうだ」


マフラー巻いてコートも着て外に出る。

なお顔には特に防寒対策はしていない。

マフラーで少し口元が隠れるだけである。

寒いが、顔は隠したくないので。


「…薬局どこだっけ。調べてから出てこればよかった」


相変わらず地理情報には疎い優美。

仕方ないので手持ちのガラケーで確認しながら薬局に向かうことに。


「…というかなんだかんだで一人で外に行くのってコンビニ以外だと初じゃないか」


基本的に優美が外に行くときは、二人で一緒に行動する場合が殆どだったので、完全に一人で行動するのは珍しい。

なお千夏はその限りではない。

普通に一人で出かけまくっている。


「ふっ、寒い。ちいせえ体が余計縮まるっちゅーねん」


そろそろ雪の季節へと移り変わってきている現在。

しかもまだ朝なのですこぶる寒い。


「し、心頭滅却、心頭滅却。うーさぶい」


なんとかかんとかいいつつ薬局にたどり着く優美。


「えー…とりあえず風邪薬とデコピタか」


以外と店内が広いのでとりあえず棚を物色し始める優美。


「薬種類多いな…あんま強烈だと逆効果だよなあ。む、これ鼻風邪だし。種類ちげえ」


いくつか手にとって確認する優美。


「むう…分からん。前まで俺が使ってたやつでいいか。あれならよく知ってるし」


そう言いながら飲み薬を一つ買い物カゴに放り込む優美。


「そういや風邪ひいたときの用意ってなんも用意してなかったな。予防用のも買ってくか」


店内の物色を続けながらマスク等々も放り込んでいく。

まあ優美はマスクは嫌いなので、多分使用しないが。


「あとは、あれかデコピタ。多めの買ってこ」


入れるものを全部放り込んでレジに向かう。


「これお願いします」


「あ、はい」


レジ打ちの兄ちゃんの前にカゴを置く優美。

そこで立ち止まっていると後ろから声をかけられた。


「お嬢ちゃんお使い?」


「え」


振り向くとおばちゃんがいた。

見かけ的に小学生にでも間違えられたのだろう。


「まあ、そんなとこですけど」


「気をつけて帰りなさいよ。危ない人も出るみたいだから」


「ええ、はい」


それだけ会話して袋を手に薬局を後にする優美。

後ろから小さいのにしっかりしてるわねとか聞こえた気がしなくもない。


「俺そんなにロリなんかなあ…別に身長そんなに低くないと思うが。小学生として見れば。顔がロリってるせいか?」


なお年齢的には高校生である。

決して小学生ではないので間違えてはならない。


「ま、でも不審者注意だな。下手しなくても襲われかねん。ロリコンあたりに」


見た目的には十分上位に入るので、当然その手の趣味の人にとっては捕獲対象になりうるので。

まあなんだかんだいいつつも特に何かあったわけではないが。

そのまま神社に帰った優美。

リビングに戻ると千夏がいた。


「あれ、なんでこんなとこおるん。寝とけよ」


「いや、お腹すいたからなんか作ろうかなと」


「そういや朝からなんも食ってねえな」


「うん」


「むう…俺がやってやりたいとこだが、そのスキルはねえ」


相も変わらずその手のスキルは皆無の優美である。

千夏がただの風邪でなくインフル級のに倒れた暁には、

数日間の間カップ麺と冷凍食品の生活が待ってること請け負いである。


「はい、簡単なのだけど」


「むう、悪い」


「いいよ。いつものことだし」


「食ったら熱引くまでは寝ろよ」


「うん」


「とりあえず色々買ってきたかんな」


とりあえず遅めの朝食をとった二人。

優美が買ってきた薬を千夏が飲んでいた。


「じゃあもう一回布団に戻ってる」


「ああ」


と生返事を返しつつも部屋までついてくる優美である。


「なんでついてきたの?」


「これこれ」


優美の手で振られているのはデコピタさんであった。


「ああ、買ってきたんだ」


「というわけで寝ろ」


「貼ってから寝る」


「いいから。寝ろ」


少々強引に千夏を布団に押し込む優美。


「じゃあ貼るぞ」


「あ、貼ってくれるの」


「最初からそのつもりだったんだよ。ヒヤッとするぞ」


ペタリとデコピタを貼り付ける優美。


「つめたっ」


「まあ、変わらんわな」


「ふふ」


「なんだ」


「いや、こう美少女にこんなことされるってすごくいいよね」


「俺だぞ」


「知ってるけど。知ってるけど、見た目が美少女ならいい」


「美少女が看病してやってんだからさっさと復活しろよ」


「あい」


「んじゃ、お休み。なんかあったら俺の部屋いるから声かけてくれ」


その後、デコピタのおかげか、はたまた美少女の力かは知らないが、

夕方くらいには回復していた千夏である。

本当に軽い風邪であったようで。


「ふっかーつ」


「お帰り」


「ただいま」


「とりあえず、軽くてよかったな」


「風邪はひきたくないものです」


「まあ、治ったからよしとしよや」


「まあ、そだね」


「とりあえず今日は外には出るなよ。病み上がりだし」


「ぐ、外で遊びたい」


「我慢せんかい」


が、数日後のことである。


「…むう、熱あるし」


「あれ、風邪ですか」


「風邪っぽいのです」


「移った?」


「やもしれぬ」


頭痛がするのか頭を押さえる優美。


「…とりあえず寝てくる」


「看病は」


「学校あるだろ」


「でも」


「気にするな。死にはせん。というか金払ってんだし休むとかダメ絶対」


「いいの」


「熱あるだけだからな。まあ寝てれば治るさ。この前のお前と同じならなおさらな」


そう言って部屋に戻る優美。


「…なあ」


「うん」


「なんでついてきてるの」


「いいからいいから」


「なんかデジャヴなんだけど」


自主的に布団にもぐりこむ優美。


「はい、では貼ります」


「やっぱりか」


「この前やられたからね」


「ん、嫌だったか」


「ううん。ただやってみたくなっただけ」


「そうか」


千夏にされるがままに頭にデコピタを貼られる優美。


「…うん久しぶりだこの感覚」


「そうなの?」


「健康体だったからな。風邪なんざ滅多にひかなかったし」


「そうなの」


「まあ中3の時にインフルかかってえらい目にあったけどな」


お正月くらいにインフルになったのである。

受験前で助かったものだ。


「じゃあ、まあ俺のことは気にせず行って来い」


「うん、分かった。早く帰ってくるね」


「ああ、病にぶっ倒れてる友人を見捨てて学校行って楽しんでこい」


「ちょ、そういうこと言われるといけなくなるんだけど」


「ふっ、冗談だ。本当に大丈夫だから行って来い」


気になったようだが、早く帰ることを約束して千夏は学校へと向かっていった。


「…静かだな。一人だと改めて」


小鳥のさえずりが響く。

逆を言えば、その手の音がしっかり聞こえるくらいに静かである。


「…まあ、…こういう方が、ゆっくり寝られるってもんだよな…」


そのまま睡魔に飲まれて沈んでいく優美の意識。

次、覚醒したのはお昼すぎであった。


「…あー…かったるいのは少しは治まったか?」


ぐーとお腹がなる。

朝食べてから何も食べてないので当然であるが。


「…腹減った。食うか。カップ麺」


台所に向かう優美。

といっても料理できないのでやっぱりカップ麺であるのだが。


「…カップ麺どこだっけ…ん」


カップ麺を探しているとふと目に入る見慣れぬ物体。

千夏が書いたのだろうか。

チンして食べてね的なことが書かれていた。


「…ふっ、気が利くじゃないですか」


久々にお昼に冷凍食品とカップ麺以外の物を口にした優美であった。

うまかったそうな。


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