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引きこもりの外出

「ちょっと出かけてくら」


「あれ?珍しいね自分から外に出ようとするとか」


「ちょっとひさしぶりにあれやりたくなったんでな」


「あれって?」


「テニス」


「あー…そういえばやってたんだっけ」


休みの日の昼過ぎの会話である。

優美はもとはテニスをやっていた人間である。

週1であったが10年以上やっていたのでそこそこうまい。


「でもラケットとか何にもない気がするんだけど」


「ねえよ。だから買ってくる」


「お金あるの?」


「月変わったからな」


月初めに二人それぞれが自由に使っていい分のお金の配分をしている。

その範囲内であれば自由に使っていいことになっているので趣味に回すのである。


「というか」


「なんだ」


「今日は私がやったわけでもないのにスカートなんだね」


「いや別にズボンでもよかったんだが」


「うん」


「無かったことに気付いた」


「おおう」


「連日巫女服しか着てなかったせいで全く気付いてなかったわ」


「それで何買ってくるの?」


「ラケット、ボール。あとできればテニスウェアとテニスシューズかな。スポーツショップでも行ってこようかなと」


「場所分かるんですか?」


「さっき調べたけどぶっちゃけよく分かってない」


「駄目じゃん」


「最悪ガラケーも一応ネットつなげてるから調べながら行くさ」


「というかついてっていい?」


「ん、いいけど。別に」


「じゃあついてく」


というわけで久しぶりに外に出た優美である。

その横についていく千夏。


「というかお前この辺り来まくってるみたいだし、近場にそういうの売ってるとこないか?調べた場所結構遠いのよね」


「んーあったかもしれない」


「近い?」


「すぐそこだよ。確か」


「んじゃまずそこに行くべ」


そう言ってやってきたのは近所の大型スーパーであった。


「こんなのあったのか」


「ここわりと目立ってると思うんだけど」


「まあうん。だいぶ遠くからでも見えてたもんな」


「どんだけ外出てないんですか」


「俺の最近の行動範囲って家からコンビニまでだからな」


「ああ、あの例のプリン買ってきたとこ?」


「そうそれ」


「本当に近場なのね」


「近場です」


そう言いつつ中に入ってみれば日曜なのも相まってかなりの人数の人がうろついていた。

子連れにカップルに実に多種多様である。


「ぐお。めっちゃ人多い」


「そりゃ今日休日ですし」


「うげぇ…人多いとこいやだぁ…」


「まあまあ。多いって言ってもぎゅうぎゅう詰めってわけでもないし」


「最近ずっと見てなかったからこれくらいの人でも多すぎるように感じる今日この頃」


「外に出なさすぎです」


そうしてスーパーの中を歩く二人。

そんな中優美が呟く。


「ただ、人多すぎるせいかあんまり視線が飛んでこないな。そこだけは助かる」


「確かに。もっと注目してくれてもいいのよ」


「いやいいから。視線浴びると余計疲れるから」


「でもせっかく美少女なのに」


「いやそうだけどさ。そうだけど疲れないんですか」


「むしろこうテンション上がる」


「見られたいん?」


「うん」


「そこ頷くんかい」


そしてしばらく歩き続けた二人。


「そいで」


「うん」


「スポーツショップどこにあるの」


「え?知らない」


「え?」


「え?」


「…」


「…」


「いや、俺は来たことないから知らんよ?」


「私も行かないから知らないよ」


「知らんのかい!今までどこに歩いてたんや!」


「え、優美ちゃんが行く方に」


「俺はお前についてってたんだが」


「私は優美ちゃんに」


「…マップ見るか」


「そだね」


結局スポーツショップは一階の端っこであった。

その時二人がいた場所は二階であった。

大間違いである。


「時間を食ってしまった」


「まあいいじゃないですか。あんまり外でないんだしゆっくり見て回れば」


「とは言えど他に見たいものも俺ないんだよね」


「え、服とか」


「お前服見たいだけだろ」


ようやくたどり着いたスポーツショップ内でテニスエリアを探す。


「何処だし」


「初めて来たから知らないや」


「…聞いてくるわ」


「いってらー」


「やっぱついてこないのかよ」


優美が店員に聞いてみたところ隅っこの方であった。


「また端っこかい」


「またとは?」


「俺が前よく行ってたスポーツショップも端っこにしか置いてなかったの」


「そうなん?」


「そうなの」


最初はラケットを見ることにしたのかラケット周辺をうろうろする優美。


「むぐぐぐ…重い」


「重いの?持ててるけど」


「いや、持てるよ。持てるけど駄目だ。これじゃしっかり振れない」


「そうなの」


「前はこれくらいでも一応よかったんだがな…」


「力は落ちてるからね仕方ないね」


「軽いの選ばにゃやれねえわ。まあ、前もわりと軽いの使ってたけどさ」


「ならいいじゃないですか」


「なんかねー最初の六年間くらい軽いの使ってたから重いのに切り替えられなくなったんだよねえ」


最終的に優美が選んだのは材質的にかなり軽量の部類に入るラケットであった。


「ラケット高いねー」


「まあラケットだしな。あー面倒だしガットもはってもらうか」


ガットも一緒に手に取る優美。

後ではってもらう気らしい。


「あーいかんいかん。ボールボール。一応買っとかねば。忘れる」


「テニスボール?」


「うんそう」


手にしたテニスボールは3個入りである。


「あれ、少なくないですか」


「いんや、とりあえずこんだけあれば大丈夫なの。今のところやる相手もいねえしな」


「そういえば相手はどうするの?」


「うちっぱなしにでも行くわ」


「何それ」


「機械相手にボール打ち続けるやつ。近所にあるかは知らんけど。正式名称も知らん」


「そういうのあるんですか」


「うん、前は近所にあったしな」


というわけで必須アイテムは一応購入しておく優美。


「まあテニスシューズは後で選ぶとして…テニスウェアの方ですな」


「そうですね」


「さて、どうせお前ついてきてるんだし選んでくれね。ぶっちゃけなんでもいいので」


「いいの?」


「いいのいいの。特にこだわりないから」


「じゃあ選ぶよ」


「ああ。あ、一個だけ注文付けとくとシャツっぽいのでよろしく」


「あい」


その後選んだものはシンプルな赤色のテニスウェアであった。

下は相変わらずスカートであったが優美的にも特に問題ないらしい。


「サンバイザーっているかね」


「さあ?外でやるならいるんじゃないの?」


「んじゃ買ってこうかね。結局前は使ったことないけど」


「ないんだ」


「俺基本室内ばっかだったから」


「なるね」


サンバイザーも引っ掴んでシューズのエリアへと行く二人。


「相変わらずシューズしっかりしたやつ高えなおい」


「1万近いのとかもあるね」


「さすがにそこまで高いのは買えねえしなあ…」


「そういえば靴のサイズ分かってるの?」


「あ、そういや知らねえや。測ってないし」


というわけでお店の人に頼んで足サイズだけ測ってもらった優美であった。

なんか微笑ましそうに見られていたのは姉と一緒に妹が靴買いにやってきたみたいに見られたせいかもしれない。


「何cmだった?」


「に…22だった。小さすぎやしませんかね…」


「22ですか。確かに小学生並みだね」


「もととのサイズ差ありすぎい!」


「ちなみに元々はどんなもんだったの?」


「26.5から27くらいだったと思われ。はっきりしてないけど」


「5cmくらい小さくなりましたね」


「子供に戻った気分」


「見た目子供だけどね」


「だから言わんでよろしい」


全部レジに持っていったら結構目玉飛び出すほどの金額になったが、

まあ想定の範囲内である。


「ええ買い物した」


「というかそもそもちゃんと買い物らしい買い物したの初めてじゃないですか?」


「たぶんな。コンビニ最強伝説」


「どうせだから服も見ていきませんか」


「ん…別にええよ。ついてきてくれたし」


「やった。じゃああそこのお店から行きましょう」


「ん。分かった」


それから数時間後である。

神社に戻った二人がいた。


「ぐ、ぐふう。つ、疲れた。あそこまで大量に回る羽目になるとは」


「そんなに疲れた?」


「なんでお前はそんなに涼しい顔してるんだ…」


結局その後両手でぎりぎり数えられるか分からないレベルの量のお店を回り、

両手で数えられる量を遥かに超えた分の量の服を見た上で、

千夏が試着してるのを見たかと思えば、

予定にはなかったのに着せ替え人形にさせられたわけである。

あっさりと見て回るのを許可したのを激しく後悔した優美であった。


「楽しかった」


「まあ、買いたいもの買えたしよかったよ」


「それでいつ行くんです」


「何故それを聞く」


「見に行く」


「なんでじゃ」


「美少女のテニスって絵になるじゃないですか。揺れるポニテがみたいじゃないですか」


「来週くらいにゃ行く予定だが…欲望丸出しじゃねえか」


結局その次の週にオートテニスに行った優美についていった千夏であった。

なおその後優美が久々の運動すぎて、筋肉痛に倒れたのは言うまでもない。




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