子供は風の子
一時的に名前をつけてましたが、どう考えても読みにくくなったので元のスタイルに戻しました。
描写でどちらが喋ってるかわかりやすくしていく方向でいこうと思います。
「ふあー。最近うんどうらしいことしてないなあ」
「そもそも外でてないよね」
「言うなよ」
優美は運動はおろか、そもそも神社外に出ていない。
暇さえあれば高確率で外出している千夏とは大違いである。
「む」
「どうしたの」
「子供の声がする」
「確かに」
「このくらいの時間になると毎回だなおい」
「うちの神社に来てるんでしょ」
「ああ。なんでここ来るんかねえ」
「遊ぶ場所が無いんじゃないの?」
「そうなのか?」
「もうちょっと外でよ?この周辺って遊び場になりそうなとこ、無いんだよ」
もともと優美は地理情報を覚えるのが得意ではない。というか覚える気があんまりない。
そんな人間が外に出なくなれば、そりゃそんな情報知らないわけである。
「ちょっと掃除がてら様子見してくる。怪我でもされても困るし」
「あい」
そう言って神社の境内に出る優美。
案の定というか数人の小学生と思しき人影が走り回っているのが見える。
「とくに危ないものは無いはずだからまあいいか。あの位置なら参拝客の邪魔にもならんだろ」
取り敢えず、掃除してくると言った手前、掃除しない訳にはいかないので倉庫から箒を引っ張り出してくる優美。
が、実際問題、掃除の大半はすでに済ませているので、子供たちを見ているだけである。
「昔を思い出すな…なつい」
ここに来る前の、さらに前の記憶である。
己が子供であったころの記憶。
元をたどればここにいる二人も普通の人である。
ちゃんと子供時代があったし、鬼ごっこしたりして遊んだ記憶だってある。
なお、別に今も人間をやめているわけではない。
ただ見た目の変化が著しいだけである。
「うわっ!」
「ん?」
ズテンと漫画に出てきそうな音がそのまま優美に届く。
誰かが転んだらしい。
しかも結構ド派手に。
「う、うわあああああん!」
泣き声が上がる。
どうやら一年生男子のようである。
周りの子供も似たような年代の子供が多いせいか、おろおろしているがどうにもできないようである。
「むう、いかんな」
見ちまったら見過ごせねえのである。
というかこういうことが起こるんじゃないかなと思って見ていたので、
当然動くのだが。
「はい、ちょっとどいてねー。あー君、大丈夫?」
「ひっぐ、ぐす、いたぁい…」
「むう、これは意外と…」
やはり音の通りというかかなり派手にこけたのだろう。
思いっきり膝がすりむけている上に腕の方にも傷がある。
とにもかくにも、けっこうひどかった。
「立てる?」
「ひ、一人じゃむりぃ…」
「じゃあほら、私使っていいから。よし」
手を貸して、座り込んでいたその子を起こす優美。
本当は運んでやれればよいのだが、下手しなくても小学生に間違えられそうなこの体じゃ辛いものがある。
「じゃあよし、こっち来て。歩けないほどじゃないでしょ。頑張ってほら」
そのまま神社内のトイレにある蛇口まで連れて行って怪我の部分を水で流す。
腕の方は軽かったので水洗いだけでどうにでもなりそうであったが、
膝の方はひどかったのでそれだけだと少々不安であった。
そのまま裏手にある家の縁側まで連れて行く優美。
子供たちもその子が気になったのか何名かはついてきている。
「はい、それじゃあここに座って少し待っててね」
「う、うん…」
そのままついてきていた他の子供たちにその子を見ていてくれるように頼んで家の中にダッシュで戻る優美。
「千夏」
「あ、優美ちゃん。どうしたの、そんなに慌てて。表で大きな音したけど」
「案の定というかずっこけた奴がでた。絆創膏どこにあるか知らんか」
「あ、なるほどね。了解です。ちょっと待って持ってくるから」
そのまま雑貨関係が押し込まれている棚の中を探る千夏。
家の物品管理は基本的に千夏である。
優美だとぐちゃぐちゃになる可能性大なので。
「あ、あったよ。はいこれ」
「あざし。じゃちょいと行ってくる」
「大丈夫なの?行こうか?」
「ああ、別にそう大人数えらいことになってるわけじゃないから大丈夫だ。あんがと」
「いいよ別に。だけど気になるから近くに行く」
「りょ。とりあえず先行ってるわ」
とそのまま走って縁側まで戻る優美。
戻ってみると上級生と思われる子が数人、その子をなだめているところであった。
3年生くらいだろうか。
「あ、君たちありがとね」
「い、いや別に。もともと俺らがふざけてたのが悪いし」
ほんのり上級生の子の顔が赤くなったのは気のせいであろうか。
「じゃあ絆創膏はるからね。お家に帰ったらお母さんによく見てもらってね」
そう言いながらペタリと少年の怪我部分に絆創膏を貼っていく優美。
傷が大きかったので1枚じゃ足りずに2枚重ねである。
「よし。終わりっと。はいもう泣かないの。男の子なら強くあれ」
「う、うん…」
「よしよし。よく頑張った」
いまだにぐずついていた少年だったが、痛みが少しはましになったのか、
言葉が効いたのか、ようやく涙を止めた。
「えーと…君たちにこの子のこと頼んでいいかな。家の方まで送ってあげてくれる?」
「あ、えっと、いいぜ」
「じゃあごめんね。お願い。私じゃこの子の家分からないから」
やっぱりどこかほんのり顔を赤らめながら頷く上級生の少年。
さっきから優美が時たま見せる軽い笑顔が爆弾になっているのだが、
本人は気づいていない。
少年は、他の子共たちに連れられて神社を後にしていった。
「大丈夫かな。あの子」
「さあな。まあでも見てる限りじゃ大丈夫じゃないか。傷は結構広かったけどあんなの俺もいくらでも作ったことあるしな」
「昔は私もよく作ったね。最近だと石畳に引っかかってこけかけるけど」
「それはちょっとどうなのさ」
そのまま縁側に腰掛ける二人組。
「それにしても」
「なんだ」
「優美ちゃんのあんな姿初めて見たよ」
「何がだよ」
「少女っぽい行動とか言動は何回か見たことあったけどね。お姉さんっぽい。少し」
「まさか、この見た目でお兄さんやるわけにもいかねえだろう」
「そういうんじゃないけどね。私が言いたいの」
「何が言いたい」
「子供が相手だと行動が変わるなーと」
「それは認める」
「子供あいてじゃないならあんなに走り回らないでしょ」
「たぶんしないな。なんか子供は放っておけぬ」
「子供好きなんですか?」
「嫌いじゃねえよ」
「好きなんですね」
「否定したいが否定できんな。好きかもしれぬ」
「このロリコン」
「ロリだけでなくショタも含む」
「自分でショタコンまで含めたぞこの人」
「事実ですから」
「開き直った」
「まあ決してそこにしか愛情を感じないとかそういうんじゃないし」
なお二人ともノーマルである。
あくまでも元の性別基準なので対象は女なのだが。
「しかしまあ」
「うん」
「あんな子供、現代に残ってたのか」
「なかなか外で遊んでる子見なくなったもんね」
「遊ぶ場所もねえしな。遊んでてもゲーム外に持ってきてたりするパターン多いし」
「外にいるだけでいくらでも遊べたもんだけどね」
「現代っ子は物が無いと遊べないとか聞いたことあるしな」
「それが本当かどうかはしらないけど外で遊ぶよりも外にゲーム持ってきてる子が多い感じはする」
「外出るなら外で遊ぼうぜ」
「と引きこもりが申しております」
「良い子のみんなは俺みたくなるなよ。絶対だぞ。少なくとも遊びまわれるのって小学生くらいまでだからなっ!」
誰に向けたわけでもないメッセージを吐き出す優美。
優美も小学校時代は外でよく遊んだものだが、中学校からは本当に外で遊ばなくなった。
中学の校庭が使えなくなったのが一番の理由ではあったのだが。
「怪我もあの時代の勲章だよね。大怪我はだめだけど」
「体に絆創膏が無かったためしがなかったな。肘と膝あたりってほとんど毎日のように怪我してたし」
「まあ私、何もないとこでこけて作った傷も多かったけどね」
「何に躓いてるんだし」
「さあ?本当に何にもない所で躓いてたし」
「空気に躓くとはやりおる」
「おかげさまで保健室に行きまくる羽目になりました」
「毎日か?」
「ほとんど毎日だったね」
「ある意味すげえなそれ。聞いたことねえぞ」
「怪我以外でも行ったりしてたしね。常連だったよ」
「でも、その時期はそれでいいんだと俺は思う」
「そうだよね」
「怪我してなんぼ。砂だらけになって帰るあのころの何と楽しかったことか」
「楽しかったねあのころは」
「中学入ったあとって本当にできなくなるからなあ、そういうこと」
「ねー」
「あー、もう一回ああいうのもやってみたいなあ」
「よしじゃあ優美ちゃん」
「どうした。改まって」
「まずはこの神社から外に出ましょう!」
「あ、やっぱ今の発言なしで。家のコタツでグータラしてるわ」
「手のひら返し早いよ!」
結局神社から出ない優美であった。
数日前に購入したコタツが余計引きこもりを加速させている気がしなくもない。




