ベイビィ~good bye~
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ニコニコ動画にて公開中の動画の
半スピンオフ小説です。
ナチュラルキラードロップス
http://www.nicovideo.jp/mylist/44318811
ベイビィ
http://www.nicovideo.jp/watch/sm25886588
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窓の外を見ると
遠くの方でプール授業をする小学生が見えた。
真新しい白いキャップにビート版。
夏が来たんだと知った。
今は何時だろうか。
時計を探すも、この部屋には時計がないんだと思い出した。
隣を見るとチカゲくんが寝息を立てている。
「寝てるとホント、赤ちゃんみたい。
肌つやつやでぷにぷにだなぁ」
髪の毛もさらさらで猫みたいだ。
本物の猫のかづきは窓の外を見てから、そこに丸まった。
私は、2日くらい前からチカゲくんの家に入り浸っている。
まさか、こんな展開になるなんて
思ってもみなかった。
なんとなく、気持ちがお互いに傾いているとは思ってたけど
私達にはそれぞれ大切な人がいるのだ。
気持ちを傾けてはいけなかったのだ。
だから、それが暗黙のルールとなって
そこから進まないようにお互いにセーブしていた。
昼顔妻の気持ちが少しだけわかった気がする。
私達がひょんなことで出会ってから
1年くらい経ち、間もなく2度目の夏休みに入ろうとしていた。
私達は同じ傷のある友達で、
それ以上何かあることはこれまでなかった。
この1年で
チカゲくんはちゃんと大学に行くようになり
髪の毛もたまに私が無理やり切っている。
チカゲくんが一斉送信した
“女の子達”と総称されている彼女達の何人かも
そんな連絡はなかったように入れ代わり立ち代わり彼の元へ訪れ
無碍に断られたあと、逆上して帰っていたそうだ。
これについては、チカゲくんの自業自得だと
私からも言うと、彼は笑いながら
「フミに怒られたみたいだ」とドMな反応を見せた。
―――そして、問題の一昨日の夜の急展開。
ダイスケのことをチカゲくんに話すと
彼は黙った後、急に私を抱きしめた。
そして、思いもよらない一言を私に預けてから
私の顔を見つめた。
私は、泣いていた。
気持ちがダイスケじゃなく、
チカゲくんに向いている罪悪感からなのか
やっと他人に吐き出せたからなのか。よくわからなかった。
それから、もう、なし崩しのように
足りない穴を埋めるみたいに
お互いがお互いを求めあった。
朝なのか夜なのかわからないまま
何度も気が遠くなって、起きては求めた。
「思い出したら急に我に返っちゃったよ……
恥ずかしい……」
ちらっとまたチカゲくんを覗くと
まだスヤスヤと寝ている。
この1年でチカゲくんは人間らしくなった。
わがままで、横暴なところは変わらないんだけど
私以外にも感情を少しずつ表に出すようになっているみたいだ。
一昨日、私にくれた人間らしい一言が心を刺した。
すっかり心を閉ざしていたのは
チカゲくんじゃなくて、私の方だったのだと
今ならわかる。
チカゲくんは、殻にこもって
栄養を蓄えていた。
私は殻にさえ入らず、平気な顔をして
見ないふりをして生きていただけだった。
故人を悼むことができるかできないか
そこが重要なのだと思う。
チカゲくんは、殻に閉じこもりながら
彼女じゃない女の子に触れながらも
ちゃんとフミちゃんを悼み続けていたのだ。
この1年、彼を見ながら私も変わっていった。
いつの間にか、同情じゃなく
チカゲくんを好きになっていた。
「ほんと、こいつは、なんなんだろう」
チカゲくんの鼻をつまんでみる。
「うーん」と苦しそうにする姿がかわいい。
しばらくするとチカゲくんが寝ぼけながら起きた。
と、思ったら、いきなり私に覆いかぶさってきた。
「ちょっと、チカゲくん、もう明るいよ」
「関係ないでしょ、そういうのはもう」
そう言って、キスをしながら
私の体を再びベッドに寝かせる。
「もう……」
「嫌じゃないくせにね」
チカゲくんが意地悪を言って
2人で抱きしめながら笑う。
好きな人に抱きしめられたら
こんなに嬉しいものなんだ。
もう何度目かもわからない行為に及びながら
私は、最低なことを考えていた。
―――チカゲくんからは離れなきゃいけない。
私だけはダイスケを手放しちゃいけない。
「大丈夫、僕は、側にいるから」
そんなことを言った一昨日のチカゲくんは
側にいてほしかったフミちゃんを想いながら
側にいられなかったことを悔いて
私にそれをしようとしている。
あの言葉で私はそう思った。
“私のため”をしてくれたダイスケ。
“私のため”をしようとしているチカゲくん。
もう誰も、私のために動いてはならないと思った。
私を大切にする人達は、不幸になってしまうと本気で思っているし
何より、その不幸から私が守ってあげられるだけの力を持っていないのだ。
今の私は、一定の距離を置いておかないと
全てを傷つけてしまう。
チカゲくんは、一定の距離を置けるような存在じゃないと
私自身わかっていたのだ。
次にチカゲくんが眠ったら、そっとここから出ていこう。
チカゲくん、チカゲくん、チカゲくん
弱虫な私を、どうか許してね。
きっとチカゲくんなら理解してくれる。
それに、君はきっと大丈夫。
エツ先輩や、時々電話をしてくる幼馴染の子
チカゲくんを心配してくれる人が沢山いる。
エアコンがきいた涼しい部屋で
外から小学校のチャイムが聴こえる
それは授業の始まりなのか
それとも終わりなのかわからないけど
私達のとろけるような時間は
終わりを迎えようとしていた。
つづく
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