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雪舞う街に 1

3か月ぶり??の更新です

スイマセン。この季節を待たせていただきました。

今回は主人公が脇役化?してしまいますが…サブキャラが頑張ります(笑)

そんなわけで第2幕どうぞご覧下さい!

「あっちを探せ!!」

「どこへ逃げたんだ!!」

「生死は問わん!大事になる前に捕まえろ!!」

大江戸城下町の静かなはずの夜に、真っ青な羽織の侍たちの足音と叫び声が響く。


「妖怪め!」

「遠藤隊長。ここはやはりあの者たちに?」

「おう、中崎。…目には目をか…おれはあんまり賛成せんが」


遠藤と呼ばれたガタイのいい、しかし優しそうな顔をした男が中崎と言う黒装束に身を包んだ男と大江戸の裏路地で会話している。


「中崎、参謀へ伝令を頼まれてくれ。俺はひとつ心当たりを探してくるとな…」


「吉原…ですか?」



「おう。妖怪といえば吉原。あいつらにも協力してもらえるだろう」

遠藤は少しだけ表情を緩め嬉しそうに遠くに見える塀に囲まれた陸の孤島の方へ目をやった。




秋の真っ赤な色合いから季節は移り変わる。

木枯らしに吹かれた葉が舞い散り、木の幹が寂しい装いに変わった。

寒さも厳しくなり冬がやって来たと言う感じである。


そのさみしい季節とは裏腹に吉原の夜は相も変わらず賑わいを見せている。


「おい、村咲」

吉原の街中をふらふらと歩く村咲に夜間巡回中の棟方が声をかけた。


「ん?しょうちゃん?とうとう大江戸に帰るのか?寂しくなるなぁ〜」

あいさつ代わりに棟方へ向け村咲は皮肉を言う。

相変わらず派手な着物に、煙管の煙をゆらゆらと燻らしていた。


「てめぇ…」


いつもなら怒鳴り散らす棟方が珍しく怒りを押さえている。


村咲は、その態度はつまらないという顔をすると、棟方に背を向けその場を去ろうとした。


「ちょっと待てって!!」

棟方が村咲の肩をつかむ。


「なに!?しょうちゃん?」

しつこく絡む棟方に村咲は迷惑顔で応対する。


「しょうちゃんと呼ぶな!!この棟方正三。お前に聞きたい事がある!!」


「オ!オレはなにもしてないぞ!!」

「違うわ!!…そちらの麗しき美少女!なぜ貴女がこんなヘタレと?」

棟方の顔が綻び、村咲のとなりを歩く大人の姿をしたカナに熱い視線が送られる。

以前、村咲の行方を探していたカナを棟方は、いわゆるナンパしたことがあった。



その時からずっと聞きたかったようだ。


「しょうちゃん、こういうのが好みなの?」

村咲がにやにやしながら、笑いをこらえカナを指差す。


「わっちはシオンの妾じゃ…」

カナが威張りながら言った。


「めか…!貴様いつから女が平気に?」

棟方の目が飛び出そうなくらい見開かれる。


「おいっ、カナ!!勝手なことを言うな!!」

村咲は慌ててカナを叱った。


「違うのか…?違うんだな!?」

棟方の目が細められ、期待に輝いた。

村咲に熱い視線を送る。


「そうだったらいいんだろうがな…こいつは千暁さんから預かった…親戚の子だ」

村咲はため息混じりに、口から煙を吐き出すと棟方にそう告げた。


吉原の町で子どもをつれ回すのはさすがに不味いと言うことで、村咲とカナの間でその正体は伏せ、外出時は大人バージョンで過ごすと約束をしている。


村咲の言葉を聞くなり棟方はカナの方へ歩みより、その手を取った。



「そんなことだろうと思いましたよ!あなたほどの方がこんなヘタレとどうにかなるわけないですからね」


「俺がヘタレなら、お前はタラシだな…」

村咲が呟くと、棟方は村咲を睨んだ。


「タラシとはずいぶんな言い方だな!」

「仮にもこの街の吉原警護隊の隊長さんが女好きなんて、笑えるぜ」

「女性に優しいから勤まるんだろうが!!」

「じゃあ一生ここで暮らしてろ」


「…そーはいかねぇ!!オレは逸早く本部隊に合流するんだからな…」


「…ま、がんばれよ」

村咲が棟方の肩を軽く叩き反対方向へ歩きだす。

カナも棟方から手を放し、その後ろに付いて行ってしまった。


「ちっ」

棟方は小さく舌打ちをすると真っ青な羽織の背中に隊の紋が入る隊服を靡かせ歩き出した。


「オレはこんな狭いとこにいつまでもくすぶってるつもりはねぇよ…しっかし、寒くなってきたなぁ…」

吐く息が夜の闇に一層深く染み込む。


そうこうしているうちにあたりを歩く人もまばらになっていく。



「お助けください…」


「へ?」

道の影から何かが急に棟方の前に飛び出してきた。

訳もわからず、それを受け止める。


「冷てぇ」

棟方の懐に飛び込んできたのは、白く長いさらさらの髪に薄桃色の着物を着た女だった。


寒い夜の空気に長く薄着で居たためか、その女の体は驚くほどに冷たかった。


「おい、どうしたんだ?」

「不審な輩に、追われております…お侍さん、お助けください…」

息を切らしながら途切れ途切れに話すと、女は棟方に体を預け、気を失ってしまう。


女を片手に抱き寄せながら、刀に手をかける。

女の飛び出してきた道の奥に確かに気配を感じる。

ぼんやりと影が近づいてきた。


「何者だ…」

その影に向かい静かに問いかける。


「貴様のような下等な者には告げる必要はない。その女を渡せ」

その声は不思議なことに棟方の頭のなかにだけ響くようだった。


「寒さのせいで頭がおかしくなりやがったか…」

女を抱えながら棟方は踵を返し大通りの真ん中にでた。

タイミングなのか、人の気配がほとんどない。


また、頭のなかにだけ声がしてきた。


「最後の忠告だ…その女を置いていけ」

「なんだってんだよ!!」

棟方は女を背負い直し、派手な着物の男の去っていった方へ走り出す。


だが、気配はしつこく後を付けてくる。


必死で走っていくと目当ての男の背中が見えてきた。


「おい!村咲!」

とりあえずその男を呼び止める。


「しょうちゃん!?」

「貴様に借りは作りたくないが!頼む!!」

そう叫びながら棟方は村咲とカナの脇を駆け抜け道の果てに消えてしまった。


「なんじゃ!?なんか背負っておったぞ!!」

「どうやら、お互い巻き込まれたようだな…」

村咲が脇に差した刀、『蜘蛛切』に手をかけ、棟方の走ってきた方へ向けて低く構える。

カナもその気配を感じとり、辺りを見回しながら小さくしゃがんだ。



やがて、なにかが真っ直ぐ空を飛んできた。

村咲は躊躇なく刀を鞘ごと上に振り上げる。


辺りを見回しながら飛んできた何かはそのまま村咲の刀に正面からぶつかり、あまりの衝撃に、地面に落ちた。


「必殺ハエ叩き!!」

村咲は続けて仰向けに倒れたソレに、刀を向ける。

その姿を確認すると、二人は目を見開いた。

真っ赤な顔に、呑み込まれそうな眼。

天まで伸びるような長い鼻。


「お、珍しい…天狗」

「き、貴様ら…何なんだ」

奇妙な存在は、頭を押さえ立ち上がる。


「山伏ではないか?なぜ山から降りてきた?」

「『座敷わらし』か、貴様らには関係のないことだ。お陰で見失ってしまった!上に報告しなけば!!」


山伏は向けられている村咲の刀を叩き、マントを両手でつかみ広げた。

鳥のように羽ばたくと宙に浮かび上がり、あっという間にどこかに飛んでいってしまう。


「タラシ、やらかしたな…」

「山伏は妖怪警察じゃ。この街に良からぬ輩が迷い込んだようじゃな…」

二人は棟方の走り去った方を哀れみの表情で見つめていた。



「イチ!!帰ってるか!?」

棟方は警護隊の番所兼屋敷に慌てて駆け込んだ。


中から足音が聞こえ、暖簾を挙げて、イチが顔を出す。


「なんですか?」

ほんの少しだけ、表情が和らいでいる。

棟方はイチの微妙な変化に気づき尋ねてみた。


「…なんかいいことあったのか?」

「いや…私と言うよりはあなたの方が喜ぶのでは?」

イチがそう言って今度は棟方の背中に視線を移した。


「棟方さん?そちらは?」

「み、道に倒れていてな…早く暖めないと凍えちまうと思って引っ張ってきたんだ」


「遊女ですか?」

「たぶん違うな。とにかく頼んだ」

背負っていた女を下ろし、イチに預けた。


「冷たっ!!」

その女を受け取ったとき背筋に寒気が走るほどに体温が低く、イチの身が縮まる。


「息、してる?とにかく暖めて寝かせておけばいいですね?」

女の状態から、顔には出さないがイチは若干慌てた様だった。


「おう。目、覚ましたらあいつのとこに連れてけ」

「あいつ?」

イチが少し意地悪な顔を向ける。


「聞くなよ!!訳ありっぽいんだ…」


「わかりました。それから、棟方さんにお客さん。奥の間でくつろいでますよ」

「客?」

イチは少しだけ笑顔を向けると、小さな体で女をひょいと抱え上げ、屋敷の奥へ入っていく。


棟方は首をかしげながら羽織を脱ぎ、着物の襟を整えて奥の間に向かって歩いた。



ご覧いただきありがとうございました。

今回はこんな感じで進行いたします。


方向を見失わないように、気を付けつつ執筆していきます。

どうぞこれからもよろしくお願いいたします。

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