棲まうものたち
久々の更新です…
なんか、強烈な回だ…
新キャラ登場です!
「なんじゃこりゃー!!」
玄関先でカナが絶叫した。
村咲の住み家は、なんだか入り組んだ路地の先にあり、何かの店の二階にある。
カナとその玄関を開けた瞬間の叫びだった。
「え?何かあった?」
村咲が震えるカナの脇から中を覗く。
「何かあったじゃない!何もないではないか!!」
確かにだだっ広い部屋の中には布団が敷いてあるだけで何もなかった。
「寝床だから」
寝れればいい。
そんな感じだった。
「お主は犬かっ!!」
「ははっワンッ!」
ふざけ笑いをしながら村咲は部屋に入る。
そして続いて入ったカナはさらに叫び声をあげる。
「何じゃお前は〜!」
村咲を迎えたのは、一匹の犬?ではなく、顔が猿で体はタヌキ、腕は虎でその尻尾は蛇の何とも奇妙な生き物だった。
「ピューイッ」
鳴き声も不気味な生物は村咲の足に絡み付く。
「旦那、お帰りなさい」
さらに中には窓際に腰掛け、子供のクセに煙管をふかす姿があった。
「お前な…勝手に上がり込むなと何度言ったらわかるんだ…しかも鵺まで連れ込んで…」
村咲が呆れ顔で少年に話す。
「ここは居心地よくてな。ぬえ、おいで」
少年が呼ぶと鵺はその膝元に納まる。
「しかし、旦那、初めてじゃないか?女を連れ込むなんて…呪いは解けたのかい?ん?」
鵺の頭を撫で、吸い込んだ煙を吐きながらカナを見る少年の、髪がかかっていない方の目が見開かれた。
「なんだ、仲間か…」
そう言うとまた、煙管に口をつける。
「あ、やっぱり?」
村咲がカナを見つめた。
「な、なんじゃ」
カナの震え方が、変わっていた。
「また、すごいのをつれこんだじゃないか…次は貧乏神かい?」
「そんなやつが来たらこいつで叩き斬ってやる」
村咲は腰に差している刀に手を置く。
「ムラサキ…憚ったな!!」
カナが急に殺気だった。
「まてまて!!俺はカナの正体なんか知らないぞ」
「そうなんだ。教えましょうか?旦那〜」
「だまれ!!ぬらりひょん!!…っ!」
カナが突然叫んだ。
少年の口元が上がる。
カナは、口を押さえたが遅かった。
そして、踵を返して玄関に向かう。
「昨晩、そして朝、世話になったな」
「朝?」
村咲が首をかしげるが、カナは振り向かずそのまま玄関を開け、階段を降りていく。
その日差しを浴び、影になった背中はどこかで見た子供のようだった。
「あれ!?あの子…」
階段を降りる音がなくなったときだった。
「ぎゃーっ!!塗壁ぇ〜」
女の叫び声が街中に響きわたった。
「へ?塗壁!?」
村咲が刀を構えながら玄関を駆け降りる。
「誰が塗壁じゃ!!こわっぱが!!」
家の前では、今朝の小さな少女と巨大な人物がにらみ合いをしている。
「あ、ハル…」
「あ〜らっシオンちゃん!!」
村咲の声に巨大な人物はすぐに反応し振り向く。
そして、少女がいなかったかのように走りだし村咲に抱き付いた。
「も〜ひどいのよ、私の事見て、塗壁ですって!!傷ついたわ〜シオンちゃん、い・や・し・てっ」
ハルは村咲をきつく抱き締めながら、甘い声を出す。
確かに化粧は厚いし、声はガラガラで、デカイ。
塗壁に間違われてもしょうがない。
「まあまあハル、こんな小さな子供相手だ。子供には大人はみんな塗壁に見えるさ」
「なによ〜シオンちゃん〜子供の味方なの?ひどいわ。だけど優しいシオンちゃんも好きよ」
ハルは口をぷくっと膨らませかわいい仕草をしてから、ウインクをする。
「な、なんじゃ、その妖怪は…」
あの体でこの仕草。少女はまだ、ハルの存在が理解できないでいる。
「あんたっ!踏み潰すわよ!!」
ハルが、すごい剣幕で睨み返した。
「ところでハル、新作の着物は出来上がったのかい?」
なかなか村咲を離そうとしないハルの手を村咲がそっと触れる。
そして解放された。
「出来たわよ!待っててね!!」
嬉しそうにハルは村咲の家の一階にある『呉服屋』に入っていった。
「あいつはここの管理人で、呉服屋の亭主のハル、確かに塗壁みたいだけど、人間だぞ」
「亭主じゃと?女将では?」
「男だから、ホントは治男だから…」
「は?はるお?」
少女の小さな頭では話が繋がらないのだろう。
「だ、だから、お主にさわっても平気だったんじゃな」
女に寄り添われるとヘタレる。
たしか村咲には厄介な呪いがかけられていると話した気がした。
「そういうことだ。よくわかったな。カナ…」
「ふん、バカにするでないぞ!!それくらいわかるわ!!」
その途端、少女は口を手で塞いだ。
「っつ!貴様、またまた憚ったな!!」
「小さい少女と、カナ!やっぱり二人は一つか!!あ〜スッキリした〜って、なんでだ?」
村咲は少女の前で眉を下げながら、微笑む。
「いでっ!」
しかし、少女…カナは村咲を蹴飛ばし、そのまま走り去ってしまった。
「たく、なんなんだ?」
訳もわからず蹴られた腹をさする。
「旦那〜だからあなたは呪われたんですよ。乙女心がわかってない」
二階から覗いていたぬらりひょんと呼ばれた少年が楽しそうに村咲を見下ろす。
「どーお?菖蒲をあしらって爽やかに作ってみたわ!これで、私と祭りにでも行きましょうよ〜ってあれ?あのガキは?」
白地にきれいな菖蒲が描かれた着物を抱きながらハルが戻ってきた。
手にはもうひとつ小さな着物を抱えている。
「いや、それが…」
「も〜シオンちゃんたら!わかってないわ!はい!」
ハルが、村咲に小さい着物を渡す。
「は?」
「女はプレゼントひとつでコロッと機嫌よくなるものなんだから!!」
ハルがまた熱いウィンクをとばす。
「旦那〜、あいつが何で変身してまであんたに近づいたかわからないのかい?」
またまた、ぬらりひょんが村咲に話しかけてきた。
「え?」
「モテる男は辛いね〜」
完全にバカにしてるような目を向けている。
「ちょっとあんた!!」
ハルがぬらりひょんを見上げ眉を寄せる。
「ガキが余計なこと言うんじゃないよ!」
その勢いに驚いたのか、いつの間にかぬらりひょんの少年は後ろへ身をひいた。
「あれ?ハル…あいつ、見えるのか?そう言えばカナも見えてたな」
「シオンちゃん、なにブツブツいってるの!早く追いかけなさい!」
「あだっ!!」
治男が村咲の背中を叩くと、村咲はそのまま数メートル吹き飛んだ。
「あ、やっぱりハルは妖怪だったのか…」
納得するとハルに渡された着物をつかんで、村咲はそのあとを追いかけた。
今度は村咲がオニ〜
この追いカケッコはいつまで続くんだぁ…




