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選択肢  作者: 山羊ノ宮
3/3

B.カルテにまた視線を戻した

「もう!言ってるそばから仕事する。ちょっとぐらい休んだらいいじゃないですか!」

「ですが、まだ途中ですし・・・」

「ほら、コーヒーでも飲んで、一息つく」

「はあ。まあ、そこまで言われるんでしたら、小休止としましょうか?コーヒーも冷めちゃいますし」

コーヒーを勧められた熊谷はカップを取る。

そして、口元に近づけたところでその動きが止まる。

「あの、神村先生・・・」

「はい。何でしょう?」

「そんなに見つめられると飲みにくいのですが」

「どうぞ、お構いなく。さあ、ずずいとお飲みください」

熊谷はカップの中の茶色い液体を見る。

色も香りもコーヒーそのものである。

だが、不審な神村の態度に熊谷は疑わずにはいられないのである。

「神村先生、コーヒーに何か入れました?」

「いえ。全く。何も。全然。これっぽちも」

即答であった。

やはり怪しい。

「じゃあ、神村先生一口飲んでくださいよ」

「いえ、それでは意味がありませんので」

「意味がない?・・・それどういう意味ですか?」

「しまった」

「やっぱり変な物入れてたんですね。神村先生」

隙を見せた神村に熊谷は間髪いれず突っ込む。

「へ、変なものなんて入れてませんって。信じてください、熊谷先生」

「本当ですか?」

「本当ですって。じゃあ、そんなに疑うんなら、証明してみせます。けど、私が一口飲んだら熊谷先生も飲んでくれますよね?」

「ええ。それでしたら・・・」

熊谷からカップを受け取る神村。

そして、一口。

すると、神村はいきなり仰向けに倒れたのだった。

「ちょっ?!神村先生!神村先生!大丈夫ですか?」

突然のことに熊谷は神村を抱き起こし、揺する。

神村のうめきが聞こえ、熊谷は安堵した。

ゆっくりと神村の瞳が開いていく。

「あは♪熊ちゃんだ~」

目を覚ますと同時に熊谷に抱きついてくる神村。

思わず神村の肩を持って引っ剥がし、地面にたたきつける熊谷であった。

「ぐへっ・・・負けない。律子、負けないもん」

「もしかして神村先生酔っぱらってるんですか?」

神村は両手をグーに握り、胸の前で構え、頭をふった。

「ううん。りったん、酔っぱらってないよ。だって、コーヒーに入れたのはぁ、惚れ薬だもん」

「は?惚れ薬?」

「うん。熊ちゃんはナルシストの語源って知ってる?この間、りったん、ギリシャに旅行に行ったの。そこでぇ、妖精さんと仲良くなっちゃってぇ、惚れ薬もらっちゃった。テヘッ」

もう何から突っ込んでいいか分からない熊谷は、頭痛と吐き気とめまいを催していた。

きっと風邪だろう。

「もしかして、熊ちゃん心配してる?大丈夫だよ。もらった惚れ薬の効果は一日だけだから」

「一日だけ」

「だ、か、ら、今日一日りったんのこと、好きにしていいんだよ」

「・・・そうですか・・・では、そこの椅子に座ってください」

うきうきと椅子に座る神村。

だが、神村の望む展開は訪れはしなかった。

「いい機会です。この際神村先生には言っておかないといけない事があります。そもそも神村先生は思いつきで行動し過ぎる。この間だって・・・」

そうしてコンコンと熊谷は神村に説教をし始めるのだが、神村の顔はにやけたまま、怪しい笑い声を洩らしていた。

「にへへへ、熊ちゃん、だいしゅき」

「神村先生!人の話は真面目に聞いてください!」

「はーーーい」

その後も神村は堪える様子も無く、不毛な説教は続くのだった。


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