「アクロバルカン」
蔦の周りを滑空しながら、巨大な怪物が地面に降りてきた。アクロバルカン。三皇魔の最後の存在が現れたのだ。
「オオオオオオオオ!」
耳が痛くなるようなけたたましい雄叫びをあげた。
「嘘だろ。最後に三皇魔かよ!」
「レックスさんが呼び寄せたんだ!」
「くそ。速攻で片付けるぞ!」
ブレドが自身の魔法である未来予知を使って、アクロバルカンの元に走っていく。
「未来予知で距離を! これからいける!」
「勇者の斬撃!」
ブレドが斬撃を打ち込もうとした時、周囲の建物から一斉に魔物が出現した。
「なっ!」
突然の出来事にブレドの能力が途切れた。その隙を狙って、ブレドの元に魔物達が向かっていく。
「兄さん!」
アーケオは兄に襲いかかろうとした魔物達を切り倒した。
「未来予知は対象の動きしか予測できない。この状況ではかなり不利か」
アーケオは剣を構えて、アクロバルカンとそれを守るように囲っている魔物達を睨みつける。
「くそ! 魔物があのデカブツを囲っているせいで、能力が使えない」
「あの魔物達をどうにかするしかありませんね」
アーケオは魔物達を片付けようと駆け出した。アクロバルカンの方に目を向けると喉が風船のように膨らんでいた。背筋に悪寒が走った。
「キュオオオオオオ!」
数秒後、アクロバルカンが口から凄まじい勢いで衝撃波を放ってきた。あまりの威力に周囲の魔物や建物の瓦礫が消し飛んだ。
アーケオも同じく、後方に飛ばされてしまった。叫びの影響か、視界が朧げになり、耳鳴りをする。
周囲に目を向けるとマシュロやブレドも眉間に皺を寄せて、頭を抱えていた。
その時、アクロバルカンがアーケオの頭上に翼を扇のように振り下ろしてきた。アーケオは攻撃をかわして、体勢を立て直した。
「ギャオオオ!」
奇声を発しながら、アクロバルカンが次々と攻撃してくる。そして、その際も周囲から次々と魔物達が出てきた。
「俺の能力を使わせないつもりだな」
「ええ」
「でもそうなるとやることはシンプルですよ。真正面から倒す!」
アーケオは駆け出した。迫り来る魔物達が華麗に倒していき、彼らが守っているコウモリに近づいていく。
敵の接近に焦ったのか、アクロバルカンが翼を広げて飛び立とうとしていた。
「行かせない!」
アーケオは魔物を踏み台にして、飛び立とうとするアクロバルカンに飛び乗った。
「アーケオ様!」
「オオオオオオ!」
敵に飛び乗られたアクロバルカンが上空へ飛びながら、振り下ろそうと必死に暴れている。
「地上に落としてやる!」
アーケオは振り上げた剣をアクロバルカンの飛膜に突き刺した。巨大な魔物から上がる悲鳴。そこから御構い無しに引き裂いていく。
翼を破壊すれば、アクロバルカンは飛行できなくなり、地上戦に持ち込める。
するとアクロバルカンの喉が大きく膨らみ始めた。
「兄さん! マシュロさん! また叫びがきます!」
「くそ! またか!」
喉はかなり膨らんでいて、あと数秒であの爆発のような衝撃波が口から放たれる。アーケオは急いだ。あの衝撃を二度も受けてしまえば、命の保証がない。
そして、アクロバルカンが口を開けた。叫びは聞こえなかった。
アーケオの剣がコウモリの喉を突き刺したからだ。膨らんだ喉からは衝撃波の代わりに大量の血液が漏れ出ている。
叫びにもならない奇声をあげながら、アクロバルカンが地上に向かって落下を始めた。翼と声帯の破壊を終えたアーケオは落下するアクロバルカンから飛び降りた。
「アーケオ様! また無理をなさって! 落ちたらどうするんですか!」
「ごえんごえん!」
マシュロがアーケオの両頬を強めに引っ張った。
「おいお前ら」
ブレドが顎でアクロバルカンを示した。翼を壊されて、喉も使い物にならない。これ以上、戦闘をするのは不可能だ。アーケオは少しだけ哀れに思った。
「さようなら」
アーケオはなるべく苦しまないようにアクロバルカンの首を素早く落とした。




