「イェルカル山脈」
目を爛々と光らせて、テントを見ている。相手の様子を伺っていると魔物がテントに向かって走って来た。
アーケオはすぐにテントから出て、応戦した。鋭い爪の攻撃を何度も捌いていく。前なら苦戦していたが今は軽く捌けている。
これまでの強敵との戦いがアーケオの実力を確実に向上させていたのだ。
「ふん!」
テントから出て来たマシュロが魔物の首にナイフを突き刺した。首から血が吹き出て魔物がしばらく痙攣した後、倒れた。
ひと息着こうとした時、近くから雪を踏む音が聞こえた。先ほどと同じ魔物がもう三体もいたのだ。
「まだいたなんて」
アーケオが剣を構えた瞬間、視界が真っ白になった。吹雪が吹き荒れ始めたのだ。あまりの勢いで視界が真っ白になった。ホワイトアウトだ。
「これじゃあ魔物がいつ来ても分からない」
「アーケオ様。背中をつけましょう」
アーケオとマシュロは離れないように背中をつける。突然、魔物の一体が襲いかかって来た。アーケオはすかさず首を斬った。生首と胴体が離れて倒れた。
「吹雪でも分かるんだね」
「おそらく嗅覚が優れているのでしょう」
するとアーケオは背後から殺気を感じた。マシュロの方に魔物が向かって来ていたのだ。
「遅い!」
マシュロが見事な短剣さばきでもう一体を刺し殺した。残りは一体。アーケオは目を閉じて、意識を集中させた。全てを白く染める吹雪。吹き荒れる風の音と自身の心臓の音。マシュロの吐息。全ての音の流れを理解して、そこから発生する乱れ。つまり敵襲に備える。そして、その時が来た。
「グオオオオオオオオオオ!」
魔物が雄叫びを上げながら、迫って来た。
「一閃!」
アーケオは剣を振った。魔物の首がゆっくりと落ちて、雪を赤く彩った。鋭心から教わった技を実戦で使用することに成功した。アーケオは思わず、口角を上げた。しばらくすると吹雪が止んで、太陽がアーケオの前に姿を見せた。
「鋭心さん。出来ましたよ」
寒空の下、極東の島にいる師に向かって呟いた。
次の日、アーケオ達は下山した。
「世界大会ってどこでやるんだって」
「確かアルタリアという国ですね」
「よし。目指すはアルタリアだ」
アーケオは強者集う坩堝に向かって、足を進めた。




