幻想入り
この世界には妖怪というものが存在している。ここ数百年でほとんどの妖怪は幻想郷という場所に行き、この世界から忘れられているが確かに存在していた。
私、古明地ゆきもその妖怪の1人である。覚妖怪、心を読み人を恐れさせるだけの妖怪だ。第3の目〈サードアイ〉を使うことで人の心を読むことができる。普段は人の生活をするために隠してはいる。ただ長時間隠していると苦しいため定期的に人がいないところで数分出す必要がある。覚妖怪の本体とも呼べる部分なのだ。人間で言うと呼吸を無理矢理止めているのと一緒だ。
「今日の夜ご飯は何にしようかな」
私が今日の夜ご飯を考えている時、それは突如私の目の前に現れた。無数の目がある空間の裂け目、どこか禍々しく、見た瞬間から畏怖の対象となる。
「なに…これ」
どう考えても人間の仕業ではない。妖怪、もしくはそれに類する存在の仕業、身構えるがそれも虚しく足元に現れた“それ”によって私は中に引き摺り込まれた。
目を開けるとそこは見知らぬ場所だった。空を見上げても太陽が見えない、なのに屋外のような雰囲気、地下の洞窟などだろうか?私が倒れていると1人の女性が話しかけてきた。
「おい、大丈夫か?」
「えぇ、大丈夫です」
私はゆっくり彼女の顔を見上げる。彼女の額にはツノが生えていた。仮装などでもなさそうだ。私はゆっくりとかつ小さく第3の目を出し、彼女の心を読み取る。
『この感じ、外の世界から来たやつか?にしても驚かなすぎだ。普通私のツノを見たら聞いたりしてくると思うんだが…』
外の世界…なるほど、なんとなく話が見えてきた。多分ここは噂の幻想郷という場所なのだろう。それならあの裂け目も彼女のツノも納得がいく。
「心配ありがとうございます。一つ質問なのですが、この周辺に覚妖怪はいませんか?」
「…!?」
「驚かれるのも無理はありません。私の見た目は人間、それにさっき幻想郷に来たのに何故覚妖怪を知っているのかと。警戒するのもわかります。」
この反応からして、覚妖怪は近くにいそうだ。覚妖怪同士ならすんなり話が通るだろう。問題はこの先どうするか…外の世界に帰るか、ここに残るか…それはまあ、後回しでも大丈夫だろう…
「私はこう見えても妖怪なんですよ。」
隠していた第3の目を解放する。
「覚妖怪の第3の目…なるほどな…だがそう簡単に合わせるわけにもいかない。あんたが会おうとしている奴はここの管理をする立場にいるからな」
「じゃあどうしたらいいと?」
「私と戦え!私を倒せたらなんて狡い真似は言わない。私を満足させられたら紹介してやる」
なんとなく読めていたがやはり彼女は戦闘狂だ。
「構いません。その前に自己紹介を。私は古明地ゆきです」
「!!…なるほど、私は星熊勇儀だ。ちなみにもうわかっていると思うが私は鬼だ。」
「では、私も…何故かバレているっぽいですが私は覚妖怪です。」
ここの主の苗字も古明地らしい。それで勘づいた感じだな…バレたのならしょうがない。それにもう正体も明かした。隠す必要もなくなった。
私は第3の目を出した。
「ちなみに覚妖怪とはいえ、手加減をしていたら…死にますよ?」
「そうかい、そりゃ楽しみだ」




