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第一章 白狼に育てられた少年(2) 二人の少年(1)

ディアスの村ロニアスには皆が待ち望んだ新しい命が誕生していた。生まれたのはマルスとは一つ違いのディアスとカトリン・ル・フェイの児、アレク。

 マルスとアレクは競うように成長していった。が、その性格は正反対、マルスはその名を頂いた太古の戦いの神とはほど違く温厚で物静かだった。後に生まれたアレクはやんちゃな暴れ者。そんな二人はディアスを父と慕いその下ですくすくと育っていた。

 アレクの母、カトリンは相変わらず“永久の(エヴァー・ハウス)”で自分の子であれ他人の子であれ分け隔てなく教育していた。だがそのカトリンが最も手を焼いていたのが我が子アレク、悪戯(いたずら)が好きでいつも“永久の(エヴァー・ハウス)”の子供達の世話役の女達を困らせていた。

 そのアレクもディアスの前では温和しくなり、ディアスによる歴史、政治の学習に頭を悩ませる。逆にマルスはその時は活き活きとしていた。

 そしてシーナやクラレスとの武術の修練。他の子供達を遥かに凌ぐマルスとアレクの腕はほぼ互角。だがマルスは相手を傷つけるのを厭がった。


 マルスは七歳にアレクは六歳になっていた。マルスは年下のアレクに(そそのか)され二人でロニアスの南の森を探検と称し歩いていた。そこへ絹を裂くような女の悲鳴。二人はその声の元へ向け駆けた。二人は一人の女がならず者に組み敷かれているのを見た。アレクは木ぎれを拾いすぐにその男に殴りかかった。が、その一撃はその男には通用しなかった。マルスもまた木ぎれを手に持ってはいたが足が竦んだのか動けなかった。

 「ガキ共が。」

 男は二人に凄んだ。

 それでもアレクは木ぎれで殴りかかろうとした。

 「何をやっているんです。」

 暴漢に飛びかかろうとしたアレクは襟首をつかまれマルスの足下に投げ捨てられた。アレクを投げ捨てたのはネル。ならず者はすぐに剣を抜いた。

 「私が相手しましょうか。」

 剣を抜いた男は笑みを湛えたネルの眼の力に負け、その場を立ち去った。

「無茶をするんじゃないよ。」

 ネルは二人の頭に手を載せ懇々と言い聞かせた。だが、アレクのやんちゃはそれでも治らなかった。


 ある時、村の東に魔物が出たという噂が拡がった。その噂をアレクが聞きつけ、マルスを魔物狩りに誘った。いつもは尻込みするマルスがその話には即座に乗ってきた。

 二人で作戦をたて、いろんな画策をした。はやるアレクを抑えマルスはまず、魔物の素性を調べた。その魔物は幻魔ベス。取るに足りない魔物だった。とは言っても子供二人には荷が重かった。それを倒す為には・・マルスは考えた。

 武器・・魔物を倒すには特殊な武器がいるという。

 特殊な武器と言えばシーナの“雷の剣”またはディアスの槍“グングニール”のどちらか、雷の剣はシーナがいつも肌身離さず持っている。ディアスのグングニールは通常長押(なげし)に掛けてあり魔物退治の道具として格好のものだった。が、グングニールの重さはとても子供の力では扱えない。そこで思いついたのが二つに折れたディアスの“破邪の剣”。これならば子供の手でも扱える。問題は斬れるかどうか。マルスはこっそりとディアスの寝室に入りその剣を物色した。剣は斜めに二つに折れており(つか)のついた剣の刃渡りは約五十センチ、その刃は鋭く、その刃に触れたマルスの指は血を滲ませた。それだけを見定めるとまた静かにその部屋を出た。

 マルスは誰にも見られていないと思った。が、それを見ていた者が居た。客としてディアスの家の応接間に座ったアシュラ族の元女王メアリ。翌朝、メアリはそれをディアスに伝えた。

 「マルスであれば問題ないですよ。」

 剣を見ていたのがアレクではなくマルスだったことを聞き、ディアスはそれを軽く受け流した。


 メアリはアシュラ族の掟通り四十五歳で女王の座を退き、巫女の筆頭となっていた。今の女王はディアスの村ロニアスと親交の深いアファリ。その女王の意を受けここに来ていた。

 「北の山に魔物が棲み着きました。その魔物退治に手を貸して欲しい。とのことです。」

 悪魔の名はアミーと言うらしい。その配下をロニアスの東まで蔓延らせている。その内の一体が幻魔ベス。その噂がマルスとアレクの耳に入っていたのだった。

 幻魔ベス、茶褐色の全身に青い入れ墨を入れ、肩には大きく鋭い針を釣り糸の先に持った釣り竿を担いでいる。雌性態でありながら身の丈は二メート近くもあり幼い子供が相手するには危険すぎた。

 まずは武器、それも魔物を相手できる武器。それはカミュとサムソンとの思い出として応接間に飾ってあった。

 アレクは作戦をたてた。メアリがマルスが剣を物色していたことをディアスに伝えていたのを知り、それを利用する事とした。

 「アレク・・アレク。」

 マルスは遊びに来た風を装い、そのままアレクの部屋に泊まり込み、眠りこけるアレクを揺すり起こした。

 「父さん、寝たようだよ。」

 アレクに準備を急がせ、自身はこっそりと部屋を出て行く。

 不審な物音と気配にディアスは目を覚ました。

 音を立てずに自分とカトリンの寝所の扉を開ける。

 眼の先に辺りを警戒しながら応接間の扉を開けると、そこに入るマルスが見えた。

 マルスが折れた剣に手を伸ばそうとした瞬間。

 「こら。」

 ディアスが声を掛けた。

 その声に驚きマルスが慌てて逃げる。

 ディアスはその小さな躰を捕まえカトリンがいる寝所に連れて行き懇々と説教をし、そして、剣の由来を話した。

 その間にアレクは応接間に忍び込み長椅子の下に隠していた偽物と剣を代え、マルスの部屋に戻り、いかにも寝ぼけた顔で、

 「何があったの・・・」

 と、ディアスの部屋に入ってきた。

 ディアスはアレクもベッドの上に座らせ、剣の由来を話した。

 ディアスが語る剣の由来、そしてディアスとマルスの父サムソン、ティアそしてカミュの物語をカトリン共々聞き入った。だがその話しに心は動いても二人の行動は止まらなかった。


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