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第一章 白狼に育てられた少年(16) 光の使い(1)

 カイ達はカーター・ホフの森にあるオベロンの宮殿にいた。

 ワーロックのことを訊いてもオベロンは答えない。

 教えてくれても・・と食い下がったが、どうしてもオベロンはその事には口を開かなかった。

 カイは宮殿を真ん中にした街に出た。そこには雑多な妖精達が住んでいた。その者達に話を聞いて廻った。妖精達は総じて口が軽い、にもかかわらずワーロックのことについては話さなかった。

 ワーロックとアレンがここに来たことはカーター・ホフの村で聞いていた。が、ここの妖精達はそれを知らないという。途方に暮れ傍らの切り株に腰を下ろした。

 空から調べてくるとカチュとシルマはペガサスを駆って飛び立った。

 「どうしたの・・」

 「どうしたの・・」

 一人の美しい女の口から二つの声がした。

 「困っているんだ。」

 「何が・・」

 「何に・・」

 「人を探しているんだが誰も教えてくれない。」

 「どんな人・・」

 「何て人・・」

 カイはワーロックの名は伏せ、その姿形を伝えた。

 「そんな人ならここに来たわ。」

 「私が導いたの。」

 「以前助けて貰ってその人にお礼が言いたいんだが、名前は何て言うんだい。」

 カイはワーロックのことを聞き出す為、わざと知らない振りをした。

 女は少し言い淀んだが言いたくてうずうずしている様子が見て取れた。そこでカイは話題を変えた。

 「あなたは・・・」

 「エコーよ。」

 「エコーのファーよ。」

 「で、その人の名前は・・・」

 「ワーロックよ。」

 「それを言っちゃあいけないわ。」

 カイはワーロックがこの森にきたことを確信した。

 「独りで来たのですか。」

 「言えないわ。」

 「男の人と二人の女の人。」

 そこまで言ってファーは口を押さえた。そこでカイは又話題を変える。

 「ここにはどれ位の妖精がいるんですか。」

 「いっぱい。」

 「たくさん。」

 「あなた達みたいな女の人が多いんですか。」

 「男もいるわ。」

 「男もいるわ。」

 「どっちの方が多いんですか。」

 「女かなぁ・・」

 「男かなぁ・・」

 「さっきの話しの女の人もあなた達と同じ妖精・・」

 「違うわ。」

 「人よ。」

 「どんな人だったのです・・」

 「エルフよ。」

 「一人は赤ん坊のドワーフを抱いていたわ。」

 「ふーん・・その人達はどこに行ったの。」

 「言えないわ・・」

 「言えないわ・・」

 そこに空から探索を続けていたカチュとシルマが帰って来た。

 「この先に霧に被われた所があります。」

 シルマが言うと、

 「ミーミルの国よ。」

「霜の国よ、ワーロックが行った。」

 と、ファーが教えてくれた。

 「ありがとう、よく解ったよ。」

 カイはファーに頭を下げた。

 エルフが二人というのは解せないが一人はドラゴの妻でありウィーゴの母親、ルシールだろう。もう一人の男は当然アレン。だが・・・

 霜の国への入り方も訊いて廻ったが、これは本当に誰も知らないらしい。

 そこまで解ったことでウィーゴの村に行くことにした。

 カーター・ホフの森を出てそこを回り込むように北へ北へと進む。カイは道を知る為にシルフを飛ばせた。

 「どうして北なの。」

 「ウィーゴと会ったのがクリクリ、そこから南へ順にカーター・ホフの村、ハライカルと続いた。

 ウィーゴは何処から来たと思う。」

 カイは質問を発したカチュを見た。

 「北。」

 「その通りです・・なぜそのくらいのことを考えようとしないのですか。」

 シルマが苦々しく言う。あれから・・カイとカチュが一つになってからシルマはなぜかカチュに妙によそよそしくなっていた。


 森の北、岩山近くで羽民を見た。

 道案内を頼もうかとカイ達はその後を追った。

 上空から聞き覚えのある声が聞こえてくる。

 サンダール・・カイはその声の主に呼びかけた。

 羽民が一人舞い降りてくる。その姿は紛れもなくサンダール。

 「どうした、どうした。」

 サンダールの声は相変わらずガーガーとうるさい。

 「ウィーゴの村まで案内してくれないか。」

 「ニュールベルクか・・場所は知っているが、俺も行ったことがない。」

 「場所が解るならいいでしょう。」

 カチュが明るく言った。

 「解った、解った。だが今日は俺の家に泊まれ。」

 羽民の家は外敵から守る為、断崖の上にある。当然そこには馬では登れない。カイの馬は下に繋ぎ、二頭のペガサスは空に放した。

 サンダールは両親と暮らしていた。その両親にはハライカルでの話しはしないでくれと頼まれた。

 元々羽民は争いを嫌う。その為昔は他の人族の眼を避け、山奥の谷にアルランダルという王国を造っていたという。だがそこを魔物に追われて逃げだし、今はこの山で細々と暮らしていた。ここ十何年でこの地に入ったのはウィーゴ、そして今日のカイ達だけであった。そのせいかサンダールの両親はあまりいい顔をしなかった。それをサンダールが頼み込み、どうにか泊めてもらえることになった。

 「なんだか・・・」

 「野宿よりマシです。」

 不平を漏らそうとするカチュをシルマが嗜める。それをカイが笑ってみている。

 そこへサンダールが入ってきた。

 「頼みがあるんだ。」

 神妙な顔をしている。

 「何なの。」

 カチュはどこまでも明るい。

 「俺をあんた達と一緒に連れて行って欲しい。」

 「なぜ。」

 シルマが大きな声を出した。

 「この安定した生活を捨てて、なぜ。」

 「安定した・・私達の祖先もそう思っていたはずです。ですが・・・

 外敵は何時現れるか解りません。それに備える為・・色んな経験がしたい。

 いけませんか。」

 「ご両親は。」

 「納得させました。」

 カイの声にサンダールが応えた。


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