十分に幸せ
「幸せになれる薬を手に入れたぞ!」
挨拶もそこそこに薬瓶を振り回してそんなことを言う友人のことを私は呆れた顔で見ていた。
この薬を飲んだあとに宝くじを当てた人がいるだの、間一髪で事故に遭わずに済んだだの、そして手に入れるための倍率がどうだの色々と語っていた友人は私の視線に気が付くと悪いな、と本当に済まなさそうな表情を浮かべて謝る。
「こればっかりはお前にもあげられねえ。幸せは俺のもんだ! 俺が幸せになれたあとならあげるぜ!」
「いや、別に欲しくないから」
私の言葉に友人はそうか? と言うとまた早速薬瓶から薬を一粒取り出してそれを飲み下した。そしてにんまりと笑うと、いつ幸せがやってくるのかなとワクワクしたように呟く。
それを見ながら私は言葉には出さずにこんなことを思っていた。
すでに幸せな頭は持っているようだから別にこれ以上は必要ないのでは?




