始まりってね、大抵、唐突なものなのよ
暖かな日差しが、春の麗らかな雰囲気を形取り、桜の花弁がそれを彩る。
まさに、入学式にうってつけの日だ。つい数日までは、天候が悪かったのだが、調度よく晴れてくれた。
私立嵐波高等学校。そこが、俺―――有村遥が通う高校の名だ。……今、女っぽいって思ったやつ後でぶん殴る。
ここの、公園を抜けて行ったほうが早い。それは、入試の時に、確認済みだ。あっ、猫。気持ちよさそうに眠ってやがる。羨ましい。5匹位の猫が丸まって、寝ている。Xにあげたら、バズりそうだと思い。写真を1枚パシャリ。
「早速、あげよっーと」
「それ可愛い!!私にも、送ってくれない?」
「わっぁ!!」
突然、後ろから話しかけられて大きな声を、出してしまい猫が逃げてしまった。悪いことしたなぁ。
「あぁ、逃げちゃったー」
「っていうか、あなた誰です? 見たところ先輩? だと思うんですが」
服装は、俺と同じ制服だが、佇まいがその雰囲気を醸し出している。
「君は……新入生……だよね」
「はい、有村……遥と申します」
笑わないだろうか、今まで大抵の人に名を告げると笑われてきたから……。
「遥……君、うんいい名前だね」
この人は、女神か何かだろうか。笑わずに、しっかりと、受け止めてくれて。
「私は、夜笠静流。学校でも会うと思うから宜しくね」
静流……先輩……。
「ねぇ、連絡先教えて!」
「えッ……あっ……はい」
QRコードを差し出し読み取ってもらう。俺の方にも、追加の画面が出てきた。可愛いクマのアイコンが、静流先輩の……。
「ありがと、後で送っておいてねぇー。あたし先に行くからー」
そう言って静流先輩は、走り去っていった。綺麗な人だった。姿だけではなく、声もどこか安心するようなそんな声だ。……でも、入学式に先輩っているっけ?
中学の時は、休みだったんだけど……。高校は、違うのかな。取り敢えず高校へと向かうことにしよう。
入学式が、行われる予定の体育館にきたのだが……。
「え、何で誰もいないの?」
そう、人の気配すらしない、トイレに行っても誰もいなかったし。事前に渡された、案内をもう一度読む。やっぱり、間違ってない。日付も時間も合ってる。どういう事?疑問ばかり湧いてくる。……取り敢えず、1時間くらい待ってみるか。何もなかったら、一旦帰ろう。
1時間後。結局、誰も来なかった。悲しい。
「はぁ……帰るか」
せっかく重い、カバン背負ってきたのに。
「待ちなさい!!」
突然、後ろから声をかけられる。聞き覚えのある声がして振り返る。
「静流先輩?」
振り返った先の壇上には静流先輩がいた。
「ふふっ……遥君……遅れてごめんなさいね!! ちょっと準備に手間取って。歓迎するわ! ようこそ、私たち学校保全運営委員会へ!!」
その日から、俺の激動の高校生活が幕を開けた。