美少女と散歩はご褒美なのか?
「んぁーー今日は天気が良いねぇーー」
「もうちょっと寝てたかった…」
2日目の午前は宿泊施設周辺の地域を散歩することになっていた。運が良いのか悪いのか本日は天気も晴天で午前中から春らしからぬ気温にうろたえる人もいる。
「晴馬も朝から元気ないなぁ」
「うるせぇお前が元気ありすぎんだろ。これが普
通だっての」
はははと笑いながら背中をバンバン叩いてくる花蓮にジト目をかましていたところでなにやら聞き覚えある声が近づいてきた。
「おーっほっほ今日は天気が良いですわね。
絶好の散歩日和ですわ」
((現実であの笑い方する人いるんだ…))
「あー…えっと………………………誰だっけ?」
「………へ?今なんと??」
「その…誰だっけ?」
「なんで覚えてないんですの!!
花應院 み・す・ず!!」
「いやぁ人の名前覚えるの苦手でさぁ」
「ふん!まぁいいわ。次忘れたら覚悟なさい」
「…ところでなんで美鈴はここに来たんだ?」
「わたくしの班員が体調不良で人数不足のため
先生からここに入れと言われたのですわ」
「花應院さんよろしくねぇ〜!!!」
出会ってそんなに時間が経っていないにもかかわらず花蓮は美鈴にべったり抱きついている…。
これがコミュ強陽キャの力か…………。
「ん?晴馬そこでなにしてんの?」
「あーいや、古くから百合の間に挟まったら殺さ
れる呪いがかかっているからな。近くで地蔵に
なっていた。」
「っと…そろそろ時間だな。みんな遅れずについ
てくるように。」
時計をこまめに確認しながら班員がスケジュール通りに動けるように指揮を取っている班長を見てさすが真面目だなぁと思った。
これなら花蓮も迷子にならなくて済みそうだ。
「はぁ…はぁ…この坂きーつーいーよー!!どう
してこんな天気の日に山登らされてんのさぁ」
「ちょっとこの坂急すぎないか??」
「散歩ってレベルじゃねぇぞ…」
出発して15分ほど経ったのだが先ほどまでのどかな町並みが広がっていたのに急に山を登らされているこの状況はどうなのだろうか…
「あらみなさん、疲れるのが早いですわよ??
ペースを上げて行きますわ!」
「うげぇ…ちょっと花應院さん待ってぇー」
スタイルが良く足が細いのにどこからきているのだろうか。あのフィジカルは…
「ふぅ…だいぶ坂がきつくなってきたな」
ふと左を見ると小さな切り立った崖のようで、底には小川があり転落防止用の柵もない。しかも道幅が2列でやっと歩けるほどしかなかった。
「晴馬ぁーちょっと靴ひもほどけたから
ストップ!!」
呼ばれた方向を振り返ると班員よりもやや遅れ気味で歩いていた花蓮に呼び止められた。しかし、班長含めその他の人はその声に気づいていないようだったので仕方なく結び終わるまで待っていたのだが………
「ありがとぉー今そっち行くn……
うわぁぁぁっっっっ」
「ちょ、花蓮危ない!!」
「うわっ落ちるっっっ」
立ち上がると同時によろけて倒れそうになった花蓮を庇おうと半ば強引に手を引っ張ってしまい、そのせいか湿った土で足を滑らせ転落してしまった。
「あいたたたたたた……びっくりしたぁ」
「いっつ…花蓮大丈夫か?怪我してないか?」
「今のとこかすり傷くらいかな。それ以外は
大丈夫だよ」
「そうか、なら良かった。にしてもすまん。
俺のせいでこんなことになってしまって」
「ううん、晴馬は倒れそうになった私を庇ってく
れただけだから。ありがとう」
特に目立った怪我がなく安心していたのも束の間、山の中で男女2人が遭難してしまうという想定外の状況に困惑していた。それに加えて、山の中は蒸し暑く、持っていた水筒の残りはあとわずかしかない。
「さてここからどうするかなぁ…」
「とりあえず助けてって叫んでみる?」
「だな、そうしよう。おーい誰か助けてくれ!」
「う〜ん…手応えないねぇ」
晴馬たちが落ちた場所は湿っていて滑るため、今のような装備では這い上がることができなかった。
学年トップの美少女と2人きりとなれば何かしら起こるのではないかとほんのちょーーーーーーーーーーっとだけ期待していたが結構深刻な状況になってしまったためそんな考えはいつの間にか消え去っていたのだった。
「ねぇ、ちょっと待って。」
「ん?どうした?」
「やばいかも。熱中症かな…これ…」
「大丈夫か?!すぐそこに小川があるからそこ
で休もう」
いかにもクラクラしており今にも倒れそうな花蓮に肩を貸しながら小川で足首を冷やすなど保健の授業で習った方法を実践してみる。
(保健の授業に初めて感謝したかも)
「うぅ〜ん…頭痛い……」
「こまめに水分とっておけって散々言っただろ。
はいこれ、水だ。」
「ありがと…ぷはぁーしみるぅぅぅ」
「具合はどうだ?良くなりそうか?」
「体冷やしたおかげでだいぶ良くなったかな」
「念の為そこで休んでおけ。俺はどうにかして戻
る方法を探してくる」
「ちょっと待って私も手伝うよ!」
「ありがとう。でも大丈夫だ。病人はしっかり休
んでおいたほうが良い」
「でも私のせいでこうなったし…」
「気にしなくていいよ。そのかわり元気になっ
たら何か奢ってくれ」
自分のせいだと自身を責める花蓮の罪悪感を払拭できる言葉を探そうとしてもなかなか見つからなかったため変な要求になってしまった…
「じゃあちょっと待っててく………」
「「おーーーーい晴馬ーーー花蓮ーーー!!」」
「この声は…」
「もしかして美鈴たちじゃないか??」
「おーーい助けてー」
「あ、いたぞ!あそこだ!」
「はぁ、はぁ、二人とも大丈夫だった??」
「どこか怪我してないか??」
「俺は大丈夫だ。でも花蓮が熱中症気味だから
急いで救護テントに連れて行こう」
息を切らしながら班長含め美鈴たちが俺たちを探してくれたらしい。内心めちゃくちゃほっとした。俺だってあんなこと言ったものの怖いものは怖いし。そんなこんなで無事散歩(登山)を終え宿泊棟に戻ることができた。
「…晴馬かっこよかったなぁ」




