テス勉なんてするんじゃなかった
花蓮と海で遊んだのも束の間、新学期はすぐにやってきた。ちなみにあの後はしっかり全身筋肉痛になって2日間動けなかったことは誰にも言わないでおこう。自分の運動不足の現状を深く後悔した日であった。
「はる、おっはよぉぉーー」
「なんでお前新学期の朝っぱらからそんな元気なんだよ」
「だって病は気からって言うじゃん??」
「どういうことだよ」
花蓮のギリギリ合ってるかわからない理屈にジト目を向けながらため息をついた。
「はぁぁぁぁぁ…………」
「どしたん?話聞こか??」
「いや、いい。言うだけ無駄だ」
「ちぇっ、つまんねぇーのー」
花蓮が残念そうに自分の席に戻っていく。
まぁ実際大したことはないのだが。
ただあとほんのちょーーーーっとだけでも惰眠を貪っていたかった。
そんなことを考えながらぼーっとしていると担任が「お前ら席座れー」と言いながら教室に入ってくる。懐かしいような少し変わったような変な感じがする。まぁ今までに何回も見てきた光景なのだが。やっぱり何かもどかしい。
多分俺も何か変わってきたってことだな。うん。
ところで花蓮の様子もちょっと変わったような気もする。なんかこう…前より距離が近くなったというか。
現に今横目でチラチラ見られている気がするし。気の所為だといいんだが。
「お前ら夏休み明けで浮かれていると思うが来週からテスト期間が始まるからな。ちゃんと勉強しておけよ〜」
担任の一言で周りから絶望の言葉が湧き出てくる。まぁ俺も絶望的なのには変わりない。といっても隣の人は余裕そうな顔で先生の話を聞いている。なんだかんだでお嬢様だからなこいつは。今回のテストも余裕のよっちゃんなのだろう。
(また勉強教えてもらわなきゃな)
「ねぇねぇ」
「ん?どうした?」
「朝から思ってたんだけどさ、シャツのボタンずれてるよ?」
「は、はぁ?!」
「おい北町どうした?てかなんでお前シャツのボタンずれてるんだ?」
「あ、ちょ、すみません」
「にっしっし」
これでもかと馬鹿にするようにニヤニヤしている花蓮にジト目をぶつけた。
「お前なんで知ってたのに言わなかったんだよ」
「だって面白いし。流石に気づくかなぁーと思ったけどこんなに気づかないとかやばいって」
今すぐにでもこいつの顔面にパイを投げつけてやりたいと思った。
「まぁまぁ結果オーライってことで」
「なにがだよっ」
始業式の日は授業はなく午前中で帰りとなっていたため晴馬たちは早めに解放された。
もちろん部活がある人はこれから行かなきゃいけないらしいが部活に入っていない晴馬には
関係のないことだった。
あぁ腰いてぇ…
「ちょっとそこのあなた止まりなさい」
ん?なんだこの聞き覚えある声は。なんか嫌な予感するんだが。
「え、俺?」
「そうよあなた以外に誰がいるの?」
「まじかぁ嫌な予感当たったわぁ…」
「ん?なんですって??」
「すんません、何でもないです。はい。」
「まあいいですわ。あなた私のテスト勉強に付き合いなさい」
「は????」
「何ボケッとしてるのよ。私がテスト勉強に誘ってあげてるのよ。喜びなさい?」
「え、無理」
「なんで断るのよ。あなた頭空っぽなんじゃないの?」
なんだこの人は。会うなりいきなり勉強手伝えと言いながら人のこと罵倒してきやがって。
「いや一体どういう風の吹き回しだよ」
「第一回期末考査の時にあなた朝峰花蓮に勉強を教えてもらっていたそうじゃない?」
「まぁそうだけど…それが何か?」
「今度は私があなたに教えることで朝峰花蓮に勝てると思って」
「んんん?全く意図が掴めないんだけど」
「だーかーら!私があなたに勉強を教えて朝峰花蓮に教えてもらった時より点数が高かったら私の勝ちってことよ」
やっぱりこの人の考えてることはよくわからない。
「美鈴の点数で勝負すればいいんじゃないのか?てかなんでそこまで勝ちたいんだ?」
「だってあのアホ面にこの私が負けてるのが気に食わないんですもの。私じゃなくてあなたを使えば平等に勝負できると思ったのよ」
思った以上に単純な理由だった。しかも花蓮とばっちりうけてるし。
「てことで来週から特訓開始よ」
「え、ちょ、俺やりたくないんだけど」
言うことだけ言っておきながら返事も聞かずに帰っていったんだけどあの人。
ややこしいことになったなぁ…めんどくさいなぁ
帰るかぁ…
「はる遅いよぉーー」
「あれ?花蓮なんでここに?」
「待ってたに決まってんじゃん。はるったらすぐ教室出ていったと思って追いかけたらいないんだもん。どうして遅れたの?」
「まぁちょっと色々あってな」
「色々って私に話せないようなこと?」
「話せないというか…話すめんどくさいというか…」
「ふぅーんまあいいや。遅れたからジュース奢ってよ」
「お前ってやつは…まぁわかったよ。いちごミルクでいいか?」
「やたーさすがはる!わかってるぅ!」
これまでに結構奢らされてきたおかげでだいぶ花蓮の好みを把握できるようになってきた。
いつかこいつのせいで俺の財布空っぽになるんじゃないか…