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夕日がきれいですね。君の赤い目もキレイだけど怖いですね

お水はおいしい

石畳の街道を歩いていくと街並みが見えてきた。

背中から指す夕日が石造りの建物を赤く染めている。

振り返ると山間に日が沈む寸前だった。

普段の生活、工場の帰りのバスから見える夕焼けと全然違う気がして

「夕日ってこんなにキレイだったのか・・・」

感動して立ち止まってしまった。

アレックスも立ち止まり夕日を少しの間無表情に見てから

「ケンよ、お前食べれないものはあるのか?」

「は?え?あ、ひ、人の肉とかは無理です・・・」

「そうか。信仰上での戒律を言え」

「え?ええ?あ・・・えーと信仰は無いです」

「そうか、羊で良いか?」

「は、はい。アレックスさまの好みで大丈夫です」

「おい!」

重低音の声が腹に響いた。

え?なんか俺怒らせた?目が赤く光ってるんだけど、この吸血鬼!

「様はいらん!呼び捨てでよい」

「え?ええええええ?あ、はい」

こうして街に入り、服屋?なんか皮鎧みたいなのも売っている店で二人分の服を買って宿を取って、宿屋で着替えて食事に出た。

日は沈み、街の中心部には街灯があるようで明るかった。

宿もそうだったが、宿の紹介のレストランも街の中心っぽい噴水広場みたいなトコに面した高そうなお店でボーイさんがドアを開けてくれて席まで案内された。

小市民な俺は無一文な事にビビりまくり、口の中がカラカラで喋る事が出来なかった。

出された水を一気飲みして

「ぷはーっ」

と言ったら、少し遠くから「ぷっ」と笑い声が聞こえたが、薄暗い店内だったので大人な俺は無反応を決め込んだ。

ボーイさんは水の容器からすぐに水をついでくれて

「お水がご入用ならお呼びください。またメニューが決まり次第伺いますね」

と微笑を浮かべて静かに立ち去った。あやつ出来るな!!

お店の雰囲気とかもあるのかもしれないが、なんだか俺はすっかり気分が落ち着いて、また水を一口飲んだ。ちょっとレモンの味がする水だった。さっきはまったく気付かなかった・・・

「あ、あのアレックスさ・・・」

アレックスの片目が光った気がして「ヒッ」と言う口になったが声は出さないで我慢した。

「あ、アレックス。あ、あのお金は大丈夫ですよね?」

「・・・心配するな。好きなものを頼め」

そういって見開いたメニューを自分に差し出した。

あれ?なんかこの人俺に気使ってくれている?

「ど、どうも」

と受け取ったはよかったが、メニューが・・・読めない。

何語とかも理解できないような初めて見る文字。

左から右に書いている、それだけしかわからなかった。

「あ、あの。アレックスさー。アレックス!」

「・・・」

無言でじっと見られたら怖いのです。出来たらお返事してください。心の声ですが言えません!

「え、えっと実はですね。文字が読めないんです・・・」

「そうか」

アレックスはすっと手を上げてボーイを呼んで

「今日のおすすめは?」

と堂々とした態度でボーイと何かを話していた。

料理名もわからないので、やりとりを見ていた。

アレックスは黒のズボンに白いシャツだった。

最初に見た時は真っ赤だったけど、多分だけど白いシャツだったんだろうけど洗っても赤いシャツだった。スタイルがいいから何を来ても似合うのだろうけど、よく似合っていたが吸血鬼は赤黒マントじゃないのか・・・

俺は服屋でも同じように、アレックスが店員に「丈夫で動きやすい服上下」と言われて出された茶色のシャツに黒いズボンだった。両方とも軽くてしなやかな絹のような服を買ってもらった。

「それでは同じものをお二人様分ですね。ワインのグラスもお二つでよろしいですね?」

できるボーイは俺より若く見えるが、やり取りが非常にスマートだ。

ってかワインも飲むの俺?お酒飲めないよ?

「あ、あの俺お酒飲めないんですが・・・」

「・・・」

反応無し!

「ええ、えっとアレックスさ・・・アレックス。明日からの予定なんですが」

「・・・予定は宿で話す」

「あ、はい」

「こちら12年物の~~~ワインでございます」

聞き取れない名前のワインの栓を開け、俺たちの前に置かれたワイングラスに注いでくれた。

っていうかボトルで頼んだのワイン?まあこの御仁酒豪そうだし一人で飲むだろう。

そんな淡い期待をあっさりと裏切り

「グラスを持て、乾杯だ。飲め」

・・・ま、まあ缶ビール一本くらいなら飲めるし、大丈夫だろう。

チンッ

とグラスを軽く合わせ飲んだ。

「え?何これ?うまい???」

予想外だ。芳醇な匂いで口に入れた瞬間は甘味と酸味が強いのに、後味はさわやかフルーティ。残りも一気飲みしてしまった。

そして当たり前のようにグラスにワインをついでくれるアレックス。

何かの骨付き肉とかサラダとか料理もたくさん出てきたが、全てうまい。

二本目のワインが届いた時に俺はもうかなり酔っていた。

「俺にもつがせてくれ、アレックス」

「うむ」

グラスを持つアレックスにワインを注ぎながら

「アレックス。お前なんでそんなイケメンなんだ?」

「あ?イケメン、とはなんだ?」

片目だけ閉じてワインを飲むアレックスは平常運転のようだ。

「お前みたいな男前でかっこいいヤツの事をイケメンと言うんだよ!」

「そうか」

「くそ、そんなクールなとこもサマになりやがって。背も高くて男前で細マッチョってなんなんだ!」

「細マッチョ、とはなんだ?」

「体は細身でシュッとしてるのに筋肉質で無駄な贅肉がない。お前のことだよこんちくしょう」

「コンチクショウ?ケンよ。お前も細身で筋肉質ではないか」

「ん?ま、まあそうなのか?でもなー俺は、俺は女にモテないんだよ。もっと言えば男の友達だってす、少ない・・・ううう」

「・・・泣くなケンよ。私はお前の友になれるかもしれん」

「はあ?きゅうけ・・・」

アレックスは一瞬で俺の横にきて口をふさいだ。

「休め」

俺は意識が急速に遠のくのを感じた。

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