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遺跡を目指して

ジンナと別れ遺跡へ向かう

ケン達一向はジンナのいた村から遺跡を目指した。

ケンは気絶して担ぎ込まれたので初めて見る場所だった。

ジンナの村は土を塗ったような平屋の小さな家が多く、住民のほとんどがエータのようにフードを深く被っていたのが印象的だった。

数人がアレックスの姿を見て深々と頭を下げている姿が見えたが、アレックスは無反応だった。

村の周りの景色は一言でいうと「あれ地」だった。

赤茶色っぽい岩場が目立ち、草や木はあまり生えてなかった。

小さな小川などもあったが、水は少なく、乾いた土地という印象を受けた。

俺たちはあまり生命を感じない荒地を進んでいた。

俺はいつ豚人が襲い掛かってくるのかとヒヤヒヤして、雑草が風になびくのさえもが恐ろしかった。

アレックスが守ってくれるのは心強かったが、目の前で豚人が虐殺されるのをみるのもイヤで憂鬱な気分になっていた。

憂鬱なのはそれだけが理由ではなかった。ケンはジンナをもう一度見たかった。

ジンナの笑顔がずっと頭から離れなかった。

ジンナの家を飛び出してしまったあの時に

「ジンナは醜くなんかない。顔を見せてくれ」

となんで言わなかったんだと後悔していた。

しかし、出発から1時間ほどすると、そんな事を考える余裕がなくなった。

エータとアレックスにしてはゆっくりとした移動なのかもしれないが、俺はずっと小走りでヒザが笑い始めていた。

「す、少し休憩しませんか?」

俺は無理しても後半動けなくなりそうだと思い、思い切ってそう発言した。

先頭をあるくエータが次第にゆっくり歩き出し

「ここは少し見通しが悪いから、あの丘の上で休息しよう」

首だけで振り返りそう言った。


無事に丘の上までたどり着き、俺は地べたに座り込んだ。

アレックスは無言で水筒を出したが、受け取ったけど離してくれない?

「あ、アレックス?」

「・・・もう少し下がれ」

「え?」

俺はアレックスにお姫様だっこをされて岩の裏に座らされ、水筒を手渡された。

アレックスは少し離れた所で、俺を隠すように背を向けて立っていた。

俺はなんだか顔が熱くなったが

「あ、あ、ありがとう・・・ございます」

とアレックスの背にお礼を言った。

エータがそばに来て

「見通しの良い場所というのは、相手からも見えるということだ。飛び道具があればいい的だ。ではアレックス。行ってくる」

そういって、ものすごいスピードで丘を下り大きな岩の裏に消えた。

俺はアレックスの背中と走り去るエータを、呆然と見ていた。

片手に何かを持ったエータがゆっくりと戻ってきた。

「やはり豚人の縄張りにはいったか」

そういってアレックスの足元に茶色い物体をドサリと落とした。

大きな生首だった。豚のような鼻にとがったちいさな耳、そして全体が茶色い毛におおわれていて、額の部分だけ線のように毛が白かった。何かを叫んでいるような口の下あごには長い犬歯が見えた。

俺はカチカチと何か音がすると思ったら、自分の口の中で歯が音を立てていた。

震えて上下の歯が音を出していたのだ。

豚人と聞いて、なぜかピンクのブタを思い浮かべており、「ブヒー」と鼻をならしている姿を想像していた。

目の前の生首はイノシシのように見えるが、うるんだ焦点の合ってない目は人間の目に似ていた。

その目が動いて俺を見たような気がして、俺は後ずさった。

「豚人は群れて行動する。コイツはおそらく斥候で、本体に戻らなければ援軍がくるだろう」

俺は豚人の生首にビビっていたが、段々とエータが何を言っているのか分かってきて

「か、帰ろう!ジンナの村に戻ろう!」

「・・・お前には指一本触れさせぬ」

片目がキラリと光ったアレックスが憤怒の表情で俺を睨んだ。

なんかそれって、壁ドンとかしながらいうセリフじゃないんですか、そうですか。怖いのですアレックスも豚人も何もかも。

「吾輩は偵察型のE3だ。索敵範囲で吾輩に勝てる生命体はいない。アレクシウスでも無理であろう」

エータのそれはフォローなのかわからないが、俺を安心させようとしている?

「ケンの体力が回復したら出発しよう。長居すれば戦闘で無駄な時間を消費する」

エータの「豚人の命<時間」という説明にドン引きだった。

アレックスは無言だったが、彼の羽織っているマントが風たなびき、俺を守ってくれるように見えた。

「よ、よし!行こう!」

俺は自分にも気合を入れるように大きな声を出して立ち上がった。


その後も俺はビビってはいたが、豚人に出くわすことなく大きな岩というのか岩山というのかわからない麓までたどり着いた。

「ふむ?この岩の中か地下か、シグナルはこの岩の中のようだ」

エータは岩壁をペタペタと触りながら一人でブツブツ何かを言っていたが、俺は生まれたての小鹿のように足が震え、膝に手をついて座りたいのを我慢していた。

アレックスがそばに来て

「あそこの岩に座れ」

俺は無言で岩までなんとかたどり着き、岩に座り水を飲んだ。

「はあはあ。ありがとうアレックス」

アレックスは俺を隠すように目の前に立っていた。

その時に俺はお尻が冷たく感じ

「ま、また漏らしてしまったのか!?」

と絶望した。

が?

手でお尻を触っても濡れていなかった。

ひざ丈くらいの四角い岩に座ったつもりだったのに、触った感触は岩ではなかった。

「エータ!アレックス!この岩。座っている岩。鉄でできている!」

俺の手は岩に見えるデコボコの物体が、車のボンネットと同じスベスベの金属だと言っていた。

アレックスは相変わらず俺の前に仁王立ちしているが、エータはすぐに俺のよこでしゃがみこんで調べ出した。俺もしゃがみこんで岩を見たが、岩にしか見えなかった。

「なるほど、表面を視覚加工しているのか。ケン、やるではないか」

エータは岩をまさぐり、岩の一部をフタのように取り外し、俺に手渡した。

裏側は灰色の金属色の薄い鉄板だった。

エータはフタを開けた空洞に手を突っ込み「カチリ」と何かを押した。

岩山の一部がスライドした。

高さ2メートル幅も2メートル程の空洞が口を開けた。

「では行こう。この仕掛けなら中に豚人はいないだろう」

エータは躊躇せずに薄暗い空洞に入っていった。

俺はしゃがんだままアレックスを見上げたら、アレックスはあごで

「先に行け」

と言ったので、恐る恐るエータの後を追った。


空洞の中はのっぺりした無機質な作りだった。

うっすらと角の部分が光り、四角い不自然な通路が浮かび上がっていた。

「こ、ここの電源は生きているのか?」

俺は薄く光る空間で疑問に感じた事をエータに聞くでもなくつぶやいていた。

「ほう、君はやはり機械にたいして、いい視点を持っているな」

先ほどからエータがやけにほめてくるような気がしたが、悪い気はしなかった。

5メートルほど進むと行き止まりに思えた。

スベスベで飾りのない壁だけだった。

俺はドアを見落としているのかと後ろを振り返ったが、のっぺりした通路だけだった。

エータは突き当りの壁に手を広げてつけて

「コード:ジェネシス・・・あdfkぁvけおいいふじc。jp」

謎の呪文を唱えだした。

いや、違う。おそらく音声認識コードとか機械信号とかそんなものだろう。

「よし、ケンの読み通り電源は生きているようだ」

正面の壁は斜め十字に光が走り、上下左右に三角形に分かれ、すっと開いた。

俺は興奮して

「うわ、すごい。エータ!さっきのは音声認識?何かの解除コード?このドアはどんな仕組みになっているんだ?動力はエアー?いや音がしないからモーター?フラットかつ同時に開くってすごいしす・・・」

「いくぞ」

アレックスは俺をちらっとだけ見てエータとドアの中に入っていた。

俺はなんだか情けないやら悲しいやらだったが冷静を装い中に入った。

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