地底人の元へエータの修理へ
エータの修理の為に、地底人の元へたどり着いたケン達
そこでは・・・
エミカを先頭に森を抜け、登山道を登る。
相変わらずの険しい道のりで、俺は息も絶え絶えになり、会話もできなかった。
岩場に着き、亀裂の前には数人が出迎えに来てくれていた。
皆手を広げて手のひらを見せている?多分地底人の歓迎か何かだろう。
「よくぞ、おかえりになられました。ささ、こちらへ。エミカは長老たちへ報告を」
俺は返事もできず、フラフラとついていった。
亀裂から内部に入ると、湿った空気に包まれ、音が遠のいていくようだった。
電気的な照明に照らされた洞窟を抜け、鉄の扉をくぐり、内部の部屋に案内された。
岩を削り、スベスベの床や壁の部屋の中にある金属の椅子に腰を降ろす。
やはり、外の世界とのギャップに違和感を感じる。
すぐにティーセットの台車を押した人が来てお茶を入れてくれたが、汗だくの俺を見て
「果実水もお持ちしますね」
そう言って持ってきてくれた。
俺はそれを一気飲みして、ふーっと息を吐いてやっと落ち着いた。
落ち着いたと思ったのも束の間、すぐにエミカの父のリグンがやってきた。
「皆さま、よくお戻りになられました。長老たちも話しを聞きたいとの事なのでこちらへ」
ちょっと、休憩させてくださいと言えない雰囲気のまま、俺たちは会議室に移動した。
部屋に入ると三人の地底人が座り、エミカがその脇に立っていた。
地底人たちは立ち上がり、挨拶もそこそこに、長老たちは本題にはいった。
「皆さま掛けてください。エミカより、話しは伺っております。やはり我々が見込んだ救世主さま。話しを取り纏めてもらえたのですね」
無駄話をせずに要件を話し始めるのは、コミュ症の俺には助かるのだが・・・
俺は忘れていた訳ではなかったが、久々に「救世主」と言われて背中がかゆくなってきた。
「え、ええ。エミカや仲間たちの協力で・・・」
俺がしどろもどろにそう答えると、地底人たちの空気が緩んだように感じた。
「またまた、ご謙遜を。さっそく数人の同胞に移住をさせようと計画しています。約束通りエータ殿の腕の件にも取り掛かります。それと・・・」
地底人たちはお互いに何か目くばせをした。
「以前に来た時にはお話ししなかったのですが、我々の一部の者たちは、外の人間の力を借りたり、移住することに反対の態度を取っています。エータ殿の修復は行いますが、その場は我らの聖域とも言える場所なので、エータ殿だけで同行を控えていただきたいのです。申し訳ありません」
一斉に席を立ち、頭を下げる。エミカも頭を下げている。
まあ、突然現れた俺たちを全面的に信用しろって方が無理があるよな・・・
「だ、大丈夫です。エータをよろしくお願いします」
俺も立ち上がって頭を下げると、地底人たちは困惑したようでオロオロしていた。
なんか、合理的でエータみたいだと思っていたけど、少しだけ親近感が持てた。
「救世主さま、頭を上げてください。我らの至らなさで不快な思いをさせてしまっているのに・・・」
そんな事を言っていたが
「事前にエータ殿より、設計図と事前の指示を頂いています。救世主様の働きに報いる為にも完璧に仕上げます」
そうしてエータは奥に連れていかれ、俺たちも会議室を出た。
リグンに部屋まで案内してもらう途中、
「滞在中は不便ないようにするつもりだ。なんでも言ってくれ」
そう言われたら、エルが
「風呂に入りたい」
と即答して、俺たちは浴室に案内された。俺もゆっくりしたかったし、エルには感謝しておこう。
その後、部屋でくつろいでいた。
地底人は相変わらず合理的で現実的なのに、俺を「救世主」と呼ぶ事には違和感を感じる。
だが、彼らの目は希望に輝いていて、その輝きを壊したくはなかった。
エルはシャワーを気に入っていて、「また明日の朝に行く」と言っていた。
エミカが部屋にやってきたが
「移住者の選別や準備もあるので、時間が取れないが顔を出す」
そういって出ていった。忙しそうだから無理しなくてもいいのに。
石の床に金属のテーブルやベッドだったが、ここでの生活は快適だった。
案内人が来て、毎食食堂でおいしい食事をしてくれた。
やわらかいパンと、しっかりした味付けの肉や野菜に安心感を覚える。
シャワーを浴びて人工的な照明で生活をしていた。
会う人が輝くウロコを持っているのと、アレックスとエルの存在が「ここは以前の世界とは違う」と言っているが、俺は以前の世界のアパートの自室のように、リラックスしていた。
書籍などもあり、俺はエルとアレックスに文字を教えてもらったりしながら過ごした。
一度、俺だけ会議室に呼ばれた。
長老たち三人とエミカがいた。
そこで、ジンナの技法のような事を聞かれたが、俺も詳しくはわからないので
「うまくいくかどうかわからないけど、不妊治療ができるみたいです」
そう答えたのだが、長老たちはワイワイと喜んでいた。
「では北方に三組と、ケン殿の奥方のほうには五組・・・いやもう少し増やしたいが」
なにかそんな相談をし出していたが、エミカに連れられて部屋を出た。
「呼び出してすまないな。しかし、皆希望を見出して明るい。全ては君のお陰だ」
そう言う嬉しそうなエミカを見ると嬉しかった。
しかし、うまくいくのかという不安もあった。