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穏やかな食事は狼の煮込み

拠点を確保したケン達。

食事をしながら今後の計画を立てるが・・・

 屋外で焚火を囲み、狼肉と野草を煮込んだ食事を取った。

 野草で煮込んだものはハーブの効果があるのか、臭みもなく食べやすかった。

 余った肉をゴーは干し肉にすると火に当てていた。少し焼いた肉も食べてみたが臭みがひどくて後味も悪かった。

 エータは「周囲の警戒と探索をしてくる」と席を外していたが、穏やかな時間が過ぎていた。

 また、たくさんの人が死んでしまった。そして苦しんでいる人や戦っている人がたくさんいるのだと理解しはじめていたが、そんな中で今こうして食事をして落ち着いている自分が恵まれているのだと実感していた。無意識に

「みんな、いつも助けてくれてありがとう」

 そう言ったら、ゴーやエミカは謙遜していたが嬉しそうに見えた。

「ワガハイに感謝などフヨー」とエルがエータの物まねを面白おかしくして笑っていた。

 そうしていたら、無性にジンナに会いたくなってしまい、また無意識に焚火を見つめたまま

「・・・ジンナ・・・」とつぶやいてしまった。

「ケンの奥さんをちゃんと紹介してくださいね。今度こそちゃんと!」

 何故か強くゴーにそう言われて「あ、ああ」と曖昧に答えていたが、「奥さん」と言う言葉に俺は自分の顔が赤くなっているのがわかった。

「私もケンの妻には興味がある。じっくり話したい」

「あっしも!兄貴はモテるからさぞかし美人なんだろうな!」

 そう言われて、俺はジンナの姿を思い浮かべ「人に見られたくない」と言っていたのを思い出した。

「あ・・・その・・・ジンナはあんまり人に見られたくないんだ。ちょっとだけ見た目は普通じゃないんだけど、普通に対応してほしい」

 ゴーとエルとエミカが何か顔を見合わせていたが、アレックスが

「・・・ケンの妻を侮辱したら殺す」

 そんな物騒な事を言い、空気を凍り付かせていた。

「あ、アレックス!気持ちは嬉しいけど、殺すのはやめてくれ!あ・・・」

 俺は前に同じセリフを聞いた。母に会わせるが『侮辱したら殺す』と言われた。

 その時に、自分やジンナがアレックスに認められている、母を思うように思われているのかと思ったら、何故か涙が出てきた。

「あ、アレッグズ・・・ありがどう・・・ぐずっ・・・で、でもみんな信じてるから殺さないで・・・」

 そう言うとエルが手を叩いて笑い出し

「あ、やっぱりケンの兄貴は情緒不安定だ!また泣き出した!」

 俺は恥ずかしいのか嬉しいのか楽しいのかよくわからない感情で泣き笑いをしていた。

 こうして穏やかな夜は静かにふけていった。遠くでは狼か何かが遠吠えを繰り返していた。





 翌朝、日が登り皆で朝食の準備や井戸で顔を洗ったりしていた。

 昨日の残りの狼汁を朝食に取って片付けをしている頃にエータが戻ってきた。

 エータは返り血にまみれており、朝日に照らされる銀色のボディについた血はまだ乾いておらず瑞々しく光っているように見えた。

「軍事兵器開発局を見つけた。内部に居座っていた滞在者は排除済である」

 そう言っていたが、排除の内容は怖くて聞けなかった。


 ここから南下した場所の山間部を超えた谷か渓谷のにあるようだが、山間部は峻険で馬では向かえないとの事だった。

 エータは単独で補助電源を復旧し、開けられたドアの先を見てきたがメイン電源を復旧させないと他のドアやほとんどのシステムは使用できない状態だと言った。

「やはりケンが同行して、吾輩の接続や電源復旧の協力を要請したい。吾輩単独では限界がある」

 俺はエータに頼られていると思い、嬉しくてにやけたのだが

「距離的にはどれくらい?」

「片道で200~250キロほどであるな。山間部の抜け方を工夫すれば短縮できる」

 往復500キロの距離を往復して、戦って作業してきたエータがやっぱり怖かった。

「どうするね?すぐには再訪できない可能性も考慮し、施錠してきたから優先する必要はないが」

 一斉に俺に視線が集まる。やっぱり俺が決めるのか・・・少し確認しておこう。

「そこだけでエータの腕は修理できるのか?」

「応急的な接続は可能だが、基礎骨格部分はやはり地底人の協力が不可欠であるな。順序的には骨格の修復後に配線や接続に関する内部構成の再構築をするのが理想的である」

 それを聞いて俺は決めた。

「よ、よし!じゃあ骨格をなおしてからにしよう。最初の予定通りローレン領を目指そう。最後になるかもしれないけど、エータ。それでいいか?」

「問題ない。しかし、君にしては合理的な判断だ。君にしては」

「え・・・なんで二回も言うんだよ!?」

 話しの内容を理解できずに口を開けていた聞いていたエルやゴーも笑い出した。

 アレックスも穏やかな顔で頷いていた。


 その後にも少し話し合いをし、今後の移動ではやはり馬車があったほうが便利だという結論になった。確かに馬と同じ速度で並走する人がいるのはおかしい・・・

「吾輩が再度偵察を行うので諸君らはもう一日ここで休養するが良い」

 そう言われて万歳をして喜んでいたエルにエータは

「エルロット、君は吾輩に同行したまえ。街に潜入してもらう可能性がある」

 両手を上げて固まっているエルを俺は見ないようにした。

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