表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/167

異世界?エルフ登場!!そして退場…

山田健やまだけんは専門学校を卒業して自動車工場に勤務していた。

実家を出て工場の近くのアパートに一人暮らしをして8年目。

いつも通りに出勤していつも通りに帰宅して、かえってアニメの続きを見ようか、マンガを見ようかとバスに揺られてうたた寝していた。気が付くと…

「役に立たなければお前も餌だ」

目の前に立つその人物は、口から血を滴らせ、全身が返り血で染まっている。真っ赤な血がその人物の衣服に染み込み、まるで恐怖の象徴のように見える。松明の炎が揺れる牢の中で、その人物の血にまみれた姿が薄暗い光に浮かび上がる。

俺は地べたにへたりこんで、膝が震えている。恐怖と混乱で頭が重く、身体は麻痺したように動かない。もしかしたら、少し漏らしたのかもしれない。湿り気が尻の下にじわりと広がっており、その冷たさが更に恐怖を引き立てる。

目の前の吸血鬼が、鉄の牢の扉を無造作に、いとも簡単に引き剥がす。その圧倒的な力に、俺の心臓はさらに激しく鼓動を打つ。吸血鬼の目が俺を捉え、冷酷な視線が全身を貫く。その眼差しがまるで「お前もその運命に変わりない」と告げているかのようだ。


俺の名前は山田健、年齢は28歳。とある自動車工場で働いている。いつもと変わらず、アパートから駅まで歩き、工場行きのバスに乗って仕事に向かう。今日も仕事が終わり、帰りのバスでうたた寝をしていた。

いつものように揺れるバスの中で、心地よい眠気に包まれていた。だが、今日はいつもと違う。バスが妙に揺れる感覚がして、目を覚ますと、見慣れた工場の風景どころか、広大な草原に寝転んでいた。


目の前に広がるのは見たこともない風景。青々とした草原が果てしなく続き、遠くに見えるのは中世の城のようなもの。夢か現実かもわからないまま、俺は頭をかかえて立ち上がるしかなかった。

これは事故や事件じゃないのか?も、もしかして異世界転生とか?

で、でも神様が出てきてなんか力をくれるとかもなかったし、服装も体も元のまま。

あ、あれ?いつものリュックも財布もスマホもない!ど、どうしよう!?

と、とりあえず落ち着け俺!

はい深呼吸ーすってーすーはいてーはー。

よし、警察、警察に行こう!

で、でもバスが事故とかアクシデントにしてはバスも道路もない。

あ、向こうに家がある。電話だけでも貸してくれないかな。

お、お、お俺初対面の人と会話できるかな・・・

草原を進む俺は、周囲の風景に目を奪われながらも、少しでも安全な場所に辿り着こうと必死だった。

目の前には人が通った跡のある土の道が広がっており、その道の両脇にはわずかに石が並んでいる。どうやらこれが民家へとつながっているようだ。少しでも早く人に会いたいと、心の中で祈りながら道を進んだ。

「こんな広い草原の中に、こんな道があるのか…。」

道を歩きながら俺は辺りを見渡し、あたりの景色がいかに異世界的であるかを実感する。

遠くには、ヨーロッパの古いお城のような建物が見え、思わず目を見張った。

ラ、ラブホテルとかだったらどうしよう…と一瞬不安になるが、今はそれよりも電話を借りるための会話をどうするかに頭を悩ませる。

「よし、何とかしなきゃ…。」と心の中で自分に言い聞かせ、道の先に見える民家に向かって歩みを進める。まだ外は明るいし、何とか親切な人に出会えることを祈りながら、少しでも不審者に見られないように注意深く行動しようと心がけた。

民家に到着する頃には、心臓がドキドキしていた。扉をノックする前に深呼吸をし、どうにかして冷静を保とうと努力する。果たしてどんな人が出てくるのか、そしてその人にどうやって電話を貸してもらうか、俺はひとまず目の前の状況に全力で立ち向かう覚悟を決めた。

民家に辿り着くと、少し古いが整った家が目の前にあった。

扉をノックすると、しばらくしてから中から夫婦と10歳ほどの子供が顔を出した。

しかし、彼らは俺を警戒する様子で、何かを話しながら首を横に振った。

俺は焦りと不安が募り、もどかしい思いでうろうろしていると、突然、外から馬に乗った兵士たちが現れた。

「え、何だこれ!?どうしてこんな…」

俺は驚きと恐怖で体が震える中、兵士たちが自分に近づいてくるのを見て、急いで逃げようとしたが、すぐに取り押さえられてしまった。

言葉が通じない状況に、俺は何が起こっているのか分からず、ただただ捕まる運命に身を任せるしかなかった。

兵士たちに連れられていく中、俺は城のような大きな建物に入ると、その中の冷たい雰囲気に圧倒された。牢屋に投げ込まれると、薄暗い中で鉄格子の向こうに閉じ込められた。周囲の壁には、松明が掲げられている。

しばらくしてから、城内の魔法使いらしき人物が現れた。

お供の兵士二人が牢を開け入ってきて俺を地面に叩きつけ取り押さえた。

横向きに頭を押さえつけられ、頬が地面の石畳に押し付けられ声も出せない中、魔法使いが近寄りしゃがみおでこに触れた。

触れられている最中に、だんだん兵士や魔法使いの言葉が理解できている事に気付いた。

「これでやっと…話ができる…のか…?」

俺は地面に押さえつけられたままなのに少しほっとした。

どうにか助けてもらえないか、まずは牢屋から出ることが最優先だと感じていた。


魔法使いや兵士に解放され、俺はまた一人牢屋で途方に暮れていた。

しばらくぼーっとしていたが、牢屋の前にさっきいた魔法使いがいた。多分魔法使い。それっぽい服装。彼の長い耳と青白い肌、そして落ち着いた切れ長の目が異世界の風景の中でひときわ異彩を放っていた。

「さっきは手荒なマネをしてすまなかった。これで少しは話しができるだろう」

青年は頭を下げ優しく言った。

俺は驚きとともに、感謝の気持ちを伝えようとしたが、言葉がすぐには出なかった。

青年は説明を始めた。

「この付近には吸血鬼が出没していて、私たちは彼らと戦っています。君がここにいる理由は分からないが、今はただの囚人ではなく、何かしらの意味があるのかもしれない。君は異世界から来たのだろう?」

俺は話を聞きながら、外で起こっていることを理解しようと努めた。

しかし、その直後、鐘の叩かれる音や怒鳴り声が響いた。青年が驚いた表情を浮かべると、急いで外に向かって走り出した。


騒がしかった音が静かになり、牢屋の鉄格子の前に立つ俺の目に恐ろしい光景が飛び込んできた。エルフの青年の首が、首から上だけが鉄格子にガシャンと投げ込まれた。

彼の口からは何かの叫び声が聞こえてくるかのような気がしたが、それが何かを話す前に真っ赤な吸血鬼が現れた。


吸血鬼と思われるそれは、全身が血にまみれており、その血はエルフの青年のものであるように見えた。彼の冷たい視線と口元にうかぶにやけた笑みに、俺はへたり込んだ。

彼は何も言わずにただじっと俺を見つめ、牢屋の前で立ち尽くしていた。

だらりと下げた腕の指先から血がポトリと音を立てて落ちた。

「お前が役に立たなければ、次はお前が餌だ」

吸血鬼の冷たく、そして不吉な言葉が低く牢に響く。

俺は震えながらその場の状況を呆然と見守るしかなかった。

普段やっているゲームと違う。ゲームのように戦うなど考えもしなかった。

吸血鬼の存在感とエルフの青年の死が、俺を動けなくしていた。

今後どうやってこの恐怖の中で生き延びればいいのか考えながら状況の行く先を見守るしかなかった。

この作品はカクヨムにも連載しているものを一部改編して投稿しています。

ストックのあるうちは更新頻度は高めにしたいと思っています。

感想などお待ちしていますが、続きが気になったり面白かったらコメント欄に「b」だけでも書いてみてください。

作者が喜んで毎日投稿するかもしれません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ