最後の英雄
世界はあるいは一人のために存在するのではないかと考えられる瞬間というものが多く存在する。
世間ではそれを「主人公」だと表現するのだと思う。
物語の中の主軸である彼らは困難に立ち向かい、仲間と共にそれを乗り越えて、最後には大団円。
そんな話ばかりだ。
それは決して悪くはない。
素晴らしいだろう。
ハッピーエンドを望んで誰が責められよう。
しかし中にはいるのだ。
独りを選ぶような者も。
これから語るは一人で戦場を駆けることを選んだそんな『一人』の物語。
彼は何度も戦った。
一人で。
独りで。
そして何度となく世界を救い続けた。
世界を救った英雄は数いれど、あそこまで一人を選び続けた存在も、そういないであろう。
黒い髪をゴーグルでかき上げた背の低い元少年兵。
彼は独特な戦い方をする。
右手には大型の直刀。
左手には拳銃。
これだけだ。
服装など着飾る気もないと言いたげに黒い、ジャージのような恰好にブーツ。
型破りというにはあまりにも気だるげな見た目をしていた。
しかしそれでも彼は誰もが認める『主人公』であった。
誰もが彼のために世界はあると、認めた。
これは少年兵として若くから戦場に立ち続けた男、瀬戸大輝が『死線』と呼ばれ、『最後の英雄』と呼ばれるまでに至る軌跡を記す、そんな物語。