の灰鬼鬼大頭
鏡界。
人はそこを鬼の住まう地獄と言う。
また、極楽浄土と言う者もいる。
魂の行き着く先、仙郷、天界、地獄、楽園、様々な呼び名で呼ばれるこの世界。
かつての人と妖怪の大戦で、妖怪の為に作られたもう1つの世界。
鏡の中の世界、鏡界。またの名を妖魔界。
人間の住む日本。
永遠に昼の国の裏側。
魔物と妖怪の住まう世界。
永遠に夜の国。
「通りで、人が全く居ないわけだ」
「たまに妖怪に商いをしに来る物好きもいれば、ただ単に馬鹿な人間は居るけどね」
「ふーん」
2人はそんな話をしながら、居酒屋や出店に賑わう妖怪達の大通りを堂々と歩いている。
大通りの入口には大きな鳥居のような門があり、そこには『天童門』と大きく書かれ、そこから多くの妖怪達が現れていた。
鹿の体をし、人の顔を持つ妖怪もいれば、人そっくりの妖怪もいれば、猿のような妖怪、宙を泳ぐ人魚のような妖怪。
その姿は多種多様。
「天童街。ここら一帯の妖怪はここに集まる」
「これが、妖怪の国···············妖怪の街か」
ここに来て驚くことばかり。
1000年の時を封印され、目を覚ませば本当に自分の知る世界なのかと、何度も疑った。
アザミが一番最初に目を覚ました禁獄山で子供が襲われているあの光景だけが、1000年前から唯一変わらなかった光景。
なのに、その他は全て違う。
血と肉の腐った匂いもない。
妖怪と人間の慟哭の声も、妖怪と人間のぶつかり合う殺意も、音も、全てが本当に夢から覚めたように綺麗さっぱり消えている。
自分の生きた時代が、この1000年封印されていた時に見た夢なのでは無いかと、錯覚するような感覚だった。
───いつか創りたいね、妖怪と人間が肩を並べて酒を飲める国を。
「···················あぁ、俺もそう思うよ」
「アン?なんか言ったか?」
「いや、なんでもねぇよ。それよりHUN○ER×HUNT○R完結した?流石に1000年も経てば完結するだろ」
「HUNT○R×HUNTE○は作者がハワイ旅行に行くって言って1年前から休載してる」
「マジか··········」
え、1000年たってもHUN○ER×HUNTE○完結しないならいつ完結するの?
「え、じゃぁメイド○ンアビ○は完結した?俺まだ不動○に主人公がボコされた所までしか見てねぇんだよ」
「お前、ケモっ娘は好きか?」
「なんで?」
「多分それ以上メイドインアビ○見たら性癖ねじ曲がるぜ」
「元々作者の人間性がねじ曲がってるからな、自分の性癖がねじ曲がる覚悟もない奴がメイ○インアビス見ないだろ」
「恐らくそれ以上○イドインアビスを見たら、お前は絶望のドン底に叩き落とされて、性癖を5回ほどねじ曲げられる」
「マジで今どうなってんだよ」
「とりあえず妖怪達がメイドイ○アビス見たら泣きながら『詐欺だー!』『これが人間のやることかよぉぉぉぉぉ!』て叫んでた」
「とりあえずこの1000年で妖怪からの人間への評価がマッハで下がっていってるのはわかった」
一体どんな内容になってんだよ。
軽く内容を想像したが、正直1000年前から作者の性癖と人間性が上位者に達していることもあり、人間である俺には作者の脳内が想像できる訳もなく、考えるのをやめた。
それよりも、今はハズキが『最高に美味い居酒屋紹介してやるよ』と言って向かっている居酒屋の方が気になる。
「ここだ」
そこには、、忘里と書かれたのれんの、車輪の着いた出店の居酒屋がありだった。
見た目は古く、木製で、出店と言うこともあり、店自体は人が4、5人座れるくらいの大きさしかない。
そして奥に立つ背中に『酒命』と文字の書かれた甚平に、顔と体には幾つもの大きな切り傷の痕。 左腕は付け根から無く、隻腕の腕で器用に料理を作る鬼の女将。
「···············久しいお客さんだ」
「なんだよ、昨日来たばっかだろ」
「いや、後ろのお客さんさ」
「え?」
そこの女将は鬼だった。
鬼が酒屋に居たり、働いたりしてるのは珍しいことでは無い。
鬼は誰しも酒と喧嘩が好きで、一番それが近くにある酒屋は、鬼のたまり場だったり、家になっていたりする。
だが、その鬼はアザミがよく知る鬼だった。
「よぉ、蟒蛇」
「懐かしいな、アザミ」
「は?··········は?」
この酒屋の鬼を知らない者は居ない。
忘里は忘れた頃にやってくる。そんな酒屋で、5年か、あるいは10年後か、そんな周期もバラバラ、いつ来るかも分からない、どんな店だったかも分からない、だけどその居酒屋がってくればひと目でわかる。
何せこの居酒屋の女将は妖怪ならば誰でも知っているから。
───鬼の大頭・酒呑丸、伊吹蟒蛇。
「ハハッ、今日は祝い酒だな!」
「てめぇにとっちゃァ毎日が祝い酒だろうが」