ちょっとした気の迷い
ステラは考えた。
たいして良くもない頭で考えたのだ。
(何故、男は許されるのかしら…。)
2つ年上の婚約者のマシューはなかなか顔がいい。口も上手いし、家柄もいい。侯爵家の長男に生まれ、両親との関係も良好。政略結婚ではあるが温かな家庭環境で育った。
幼い頃より婚約者としてというより兄妹の様ではあったが、穏やかな関係を築いてきたと思っている。
年頃になり貴族学園に入ってからは会う頻度は減ってしまったが、手紙のやりとりはしていた。
(…それも少しずつ減ってきてはいたけどね。)
格下である伯爵家の私からはあまり問い詰めたりは難しいので友人に学園での様子を聞いてみたのだ。
性別が違うのでわからないかもしれないけれど、少しでも情報が欲しかった。
「ステラ…。言いにくいのだけれど、マシュー様は…。」
1つ年上のローゼマリーが顔を曇らせたのを見て、(あぁやっぱり。)
と思ってしまう。
「子爵家のケイト様とお付き合いされているみたいなの。」
聞くところによると、朝も寮の前で待ち合わせて昼食も放課後の図書室も、殆どずっと一緒にいるらしい。
「前々から色んなご令嬢とお話しされているな、とは思っていたけれど…ここ2、3ヵ月はケイト様が常にご一緒しているわ。」
薄々感じてはいたのだ。
やりとりしている手紙もどんどん素っ気なくなり、こちらが聞いたことに返事はあるけれど向こうからは何も聞いてこない。
たまに返事すらないことも。
「…ねえ、ローゼマリー。いっそのこと私も」
「っだめよ?!何を考えているの!」
酷く驚いた表情をして慌てたように窘められる。
「何故、いけないのかしら。不誠実なことを先にしたのはマシューなのに。」
「それは、そうでしょう?はしたないわ。それに結局最終的にはステラと婚姻するのだから、一時の事よ。」
だから何も言わずに待っていればいいーーー
「でも先に私が恋人を作ったら、おそらくすぐにでも婚約はこちらの有責で破棄されるでしょう?何故、彼は許されるのかしら…。」