記録88_圧倒と恐怖と違和感
「おいおい?大丈夫かよ《血の死神》サマ?再生する間も無くボロボロだなぁ?」
相手の体の一部を強制的に異空間に送り込んで切断する《空間断裂》。
《顎門》と同系列の空間に作用する攻撃技であり、斬った分や食われた分など、別空間へと送られた肉を再生するには、自分で作るしかない。
他の生物であっても、指をくっつけるのと、何もないところから指を再生させるのとでは全く違うように、《血の死神》もそれによってかなり消耗しているようだ。
それに対して《睡魔》は、笑っていた。
なんと言ってもこれはゲームだ。
楽しまなければ意味がない。
これを見た《集眼》は、“怖い”と思った。
当たり前だ、なんと言ったってこれは、『命を賭けたゲーム』なのだ。
プレイヤーに負ければ一生をプレイできない。
今では多くの働き方が《メビウス》になっていっているこの世の中、《メビウス》がプレイできないと言うのはもはや『死』に他ならない。
それに、裏社会では『実死設定』と呼ばれる『情報漏洩を防ぐために、負けたら殺す』とか言う人の命を軽々と潰す機能まで、メビウスにはついてしまった。
そもそも、脳波を読み取る機械がついた影響でもあるが、『人の死は覆らない』の思想をゲームに持ってくること自体間違っているのだ。
そんな殺人マシーンのようなものを『ゲーム』として、あろうことか楽しんでいる《睡魔》と言う人間を、心の底から恐怖したのだ。
「死ぬのが怖いか?《血の死神》。ただの作り物であるお前が、そんなものを感じるのか?気になるなぁ?」
ただ、無邪気な子供のように。
純粋な好奇心を満たすかのように。
彼は、おもちゃを壊すかのようにバケモノのような死神を斃すのだ。
これさえも、最強が最強たる所以なのかもしれない。
この狂気的なほどのゲーム脳。
これほどの楽しむ心。
「?どうした《集眼》、震えているぞ」
「あ、あぁ。なんてったって、恐ろしいからな」
あぁ、この後の返事はなんだったか。
確か、『確かに、《睡魔》の戦いは見ていて狂気的だが、恐怖を感じるのか?』みたいなことを言っていた気が───……
「恐ろしいのか?どこがだ?何故、おそろしししいんだ?」
──────────は?
今、なんで言った?
なんで、俺が聞いた内容と、今こいつが言った内容が違うんだ!?
まて、その前に。
なんで俺は、今これから《食龍》が言うはずのセリフを、まるで聞いてきたかのように考えていたんだ?
それに、俺よ。
俺が聞いた内容とは、なんだ?
しかも、《メビウス》では珍しいバグが起きていた。
どういうことだ?妄想?
…………───ではない。
言っていた確証は、ある。
「………一体、何が起きたっつんだよ………」




