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記録85_傷治反転












「………は?」





 《血の檻(ブラッド・メイデン)》はただひたすらに、主人である《血の死神(ブラッディ・グリム)》を貫き、切り裂き、バラバラにしていた。





 そして、それが終わったあと、《血の檻(ブラッド・メイデン)》はこちらはと向き直り、巨大な一つ目をぎょろぎょろと動かしてコチラを見ていた。







 当の《血の死神(ブラッディ・グリム)》はと言うと………。













 《食龍》の白龍が腹に開けた穴さえも塞ぎ、完全復活を成し遂げていた。









 一体どういうことだ?



 大技のようにみえた溜めで、反逆意識のある眷属を召喚する?




 いや、現状《血の死神(ブラッディ・グリム)》が生きているにも関わらずこちらに向き直っているのだから、その可能性は低い。





 ならば、さっきの傷つける行為自体に何かがあると思うべきだ。








 たとえば、弱体(デバフ)解除……そもそもデバフをかけた覚えがないな。



 強化(バフ)付与……ダメージによって強化されるなら、多分もうちょっと苦戦してるはずだ。





 ならば…………!?まさか!!!








「何やってんだあのデカブツ………?《睡魔》、どうした?」





「いやな、試したいことがあって…………」








 そういいながら、インベントリから《ポーション》を出す。







「俺の仮説が正しければ…………ふっ!!」




 《睡魔》は片手で持った《ポーション》をできる限りの全力で投げた。






 リアルの方では筋トレはしていないが、ゲーム内ではどのステータスも最強格の《睡魔》の腕力で投げられたポーションは、音速と同レベルの速さで直進し、《血の死神(ブラッディ・グリム)》に直撃した。




 その瞬間………












『『『きいいいぃいいぃいいぁぁぁああぁ!!』』』







 何重にも重なった叫びが木霊した。





「おい《睡魔》!!一体何した!?」


「何って、見てのまんまだ」



「じゃあなんで、倒すはずの敵を回復させたわけ!?」





「さっきの眷属を見て考えた仮説だ。まぁアイツが怯んでる間だけ説明してやろう」







 《睡魔》が考えた仮説は『ダメージと回復が反転している説』だ。




 《血の死神(ブラッディ・グリム)》はさっきからずっと戦っているがダメージが入っている様子はみられない。



 この時点で、コイツの倒し方は普通ではないことがわかる。






 だが、稀にダメージを負っている素振りを見せる時がある。






 それをまとめると、《食龍》の《顎門(アギト)》によって空間ごと食われた時、《再挑戦(リトライ)》で大量の魔物をけしかけた時だ。



 そして今、眷属の攻撃によって回復した。









 ここで、アイツが出現した経緯を振り返る。



 あの《血の死神(ブラッディ・グリム)》は、《錬金翁》の《内壊針華》により、惑星の性質が《殺し合い》から《大虐殺》へと変更された。



 そのため、それに合った《惑星主》が新たにリスポーンされたわけだ。







 つまり、コイツは幾万もの犠牲によって作られた、『暴力』の権化。



 その発生条件から、『暴力』を『正』と捉え、『慈悲』を『負』と捉えるモンスターであると推測する。







 ならば、ダメージを与えることで回復し、回復させることによってダメージを負う、ある種の矛盾を持った生き物なのだ。





 そう考えれば、眷属が《血の死神(ブラッディ・グリム)》を滅多刺しにした理由も辻褄が合う。





 それに、《再挑戦(リトライ)》には味方を回復させた後に敵に突っ込んで自爆する《エネライダー》がいたから、《再挑戦(リトライ)》でダメージを与えられたのも、その影響だろう。





 《食龍》の《顎門(アギト)》は例外だ。



 《顎門(アギト)》は『空間を食らう』という絶対的なダメージであるため、《血の死神(ブラッディ・グリム)》にも有効だ。












 と、《睡魔》はこのように、《血の死神(ブラッディ・グリム)》はダメージと回復が反転しているのではないか、と仮説を立てていた。





 予想は的中、ポーションで《血の死神(ブラッディ・グリム)》はダメージを負った。











「弱点さえわかれば、ここからは反撃の時間だろ」




 3人のプレイヤーが、今一斉に牙を剥いた。






そういえば、先週1周年でした。


こんなに続けられたのは定期的に読んでくれている読者の皆さんのおかげです。



これからも、暖かい目で見守ってもらえると嬉しいです。





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