記録84_《ブラッド・メイデン》
「さぁ行くぞ、《血の死神》。突然だが、空間ごと喰われた経験はあるか?」
彼から出現した巨大な白龍は、見えないほど天高く登り、この地を見下ろすように雲の間から顔を覗かせていた。
《血の死神》は、頭のてっぺんであっても3階建てのマンションの屋上をギリ超えるか超えないかの大きさだ。
天に届く白竜と、マンションに収まりきる死神。
どちらが大きいかなど、もはや一目瞭然である。
しかし、大きさなどは関係ない。
両者睨み合い、互いに威嚇し合っている。
先に動き出したのは、《食龍》、《顎門》の方であった。
一度雲の上に引っ込んだかと思うと、とてつもない速さで《血の死神》の腹へと突っ込んだ。
白龍の口は、常時《顎門》を発動している状態なので、《血の死神》の腹は空間ごと食い尽くされた。
だが、《血の死神》は大技の溜めをやめない。
意を決して、白龍は《食龍》の背後につく。
《血の死神》の両手の檻に現れたのは、二つの大きな血液の球体。
その表面は輝くほど綺麗であり………。
いや、輝いているのではない。
血液が、とてつもない速さの回転により球体の形態を保っているのだ。
そのため、その血液球には莫大なエネルギーが溜まり、徐々に浴びていた熱が、今では輝くほどに発光しているのだ。
空間を食らうと言っても、白龍にも耐久値がある。
耐久値がゼロになれば、もうおしまいだ。
だからと言って、白龍なしで《顎門》を使えば、自身の腕がボロボロになって使い物にならなくなる。
さらに言えば、白龍がいなければ喰える範囲もそれだけ狭くなるから、背後に被害が及ぶ可能性もある。
つまり、コレは賭けだ。
あの《血の死神》の大技を白龍で受けて、白龍の耐久値が尽きるのが先か、《血の死神》の大技が終わるのが先か。
こんなところで新技を出すっていうことは、まだまだ体力はあるだろう。
それか、最後の一撃かもしれない。
あの馬鹿エネルギーの塊のような血液球は二つの檻から出てきて、一つに混ざり合った。
その血液球はさらに回転を早めていきながら、遂にはそれを展開し始めた。
最初はその血液球が拡大していき、次第に槍の形となり、次は弓の形になり、そして盾の形になり、そして球に戻った。
そして、その血液球の表面から複数の何かが生え始める。
血の触手のような、気味の悪いなにかが伸びてきて、周囲のものを掴んで血液球の中に含んでいた。
そして、真正面から見れば、そこからはとてつもなく大きな目玉を開いていた。
《血の死神》の眷属。
《血の檻》が生成され……………。
《血の檻》は、いつのまにか《血の死神》の至る所を触手で貫いていた。




