記録83_《大罪なる暴食》
その頃、《ブラッディ・グリム(仮称)》討伐組はどうかと言うと………。
「グ、グギャガガガ!!」
「チッ……、さすがに正規の使用方法である、『過去の敵への再挑戦』の部分が顕著に出てるな」
やはりと言うべきか、プレイヤーに襲いかかる奴の方が多いし、《ブラッディ・グリム》に向かってるのも少数だ。
今は、《ブラッディ・グリム》よりも、目の前にいる《再挑戦》の方に気を取られ、いつ全滅してもおかしくないような状態になっている。
まさに、諸刃の剣だ。
だが、収穫はある。
「かなりの物量攻撃で、かなり消耗してるみたいだ。《ブラッディ・グリム》に徐々にダメージも入ってるぞ」
「こう言う時にHPゲージとかが表示できれば楽なんだけどなぁ……」
《再挑戦》を使ったことにより、一年半ほど《睡魔》が戦ってきたモンスターを複製して放つ。
『元々一体ずつ戦う様に作られたボス級が何体も一箇所に集まったら、もう推奨レベルを乗算するなんてレベルじゃありません!!バカなの!?』
って、昔ちょっとの間組んでたやつに言われたことがあったっけか。
曰く、一体ずつ倒すことを前提作られたボスを何体も何体も溜め込んで、それを一気に放出すると、そのボスを倒すための戦力が足りなくなる可能性が大いにある、と。
たしかに、一人でギリギリ倒せるやつらを大量にストックして、一人の時にうっかりそれを開けたら待っているのは『死』だ。
まぁ、コンテニュー不可なのはプレイヤーからキルされた場合のみで、モンスターに倒されても基本的にコンテニューできるのだ。
《ブラッディ・グリム》は再生能力がピカイチなのだろう。
それこそ、認識できないほど早く。
僕が絶対的な切断である《空間断裂》を使っても生きていたのだから、その時の再生がめちゃくちゃ早いと、全ての攻撃が効かない、という錯覚が起きるわけだ。
「でも、気をつけろ………。多分だが、《再挑戦》を使って出てきちまった血も、《ブラッディ・グリム》の操作ができる範囲だ」
そう言った瞬間、やはり《ブラッディ・グリム》は血を操作し始めた。
「クソ、もう《ブラッディ・グリム》に敵対してた《再挑戦》の相手をし終えたのか!?」
次から次へと刀を振り下ろしながら、《集眼》が叫ぶ。
《ブラッディ・グリム》は、両手の檻の中心に血の球を作り出し、何かの準備をしているようだ。
「まーたなんか来たよ………。《再挑戦》達の相手しながら行ける?」
「ギリギリっ、だなぁ!!敵が多すぎるから刀の属性もコロコロ変えなきゃいけないし!!」
「じゃあ、俺が行こう」
たった一人、《再挑戦》の波を超えて出てきた男が挙手をして言った。
立候補したのは《食龍》だ。
「空間を喰らうにしても……大技丸ごと飲み込むのは、かなり腕がキツいんじゃないか?」
「しょうがないだろ。能力を鍛えるためにきてんだから………」
《食龍》がため息を吐きながら《再挑戦》の波から這い出て、《ブラッディ・グリム》と対面する形で立つ。
おもむろに手を掲げ、彼の能力の奥義を展開する。
体内に、現実では味わえないようなチカラが巡る不思議な感覚が走る。
その技は、今まで食ってきた空間を吐き出し、凝縮させ、普段は不可視である《顎門》の白龍を実体化させる荒技。
かつて、《ウォーマー》という惑星の街、《ウォーハーツ》で披露した、大魔術級の大技。
かつての技より進化して、技名も少し変わり、地味に厨二心くすぐられるネーミングとなった、《顎門》の奥義。
「《大罪なる暴食》」
掲げられた手からは、その瞬間に歓喜する数多の子龍が舞いながら、腕から空へと放たれていた。
今、白龍は天高く上り、血の死神と相対したのだった。




