記録80_《武功超過》
《疾走監獄》の側面で刀を弾き返すが、刀の切先が当たりバッドステータスが降りかかる。
そこで両者一歩引き、様子を伺う。
「………デバフっていうのは、案外効くもんだな」
「正直、この刀じゃないとそこまで効かないと思うよ?」
看守は先ほどとは打って変わって、互角の状況を崩されつつあった。
少しでも掠ればデバフの数々が掛かるからだ。
刀は斬ることによって威力を発揮するが、バッドステータスの呪いや破滅、苦悶は当たっただけでも効果を発揮する。
例えば呪いは、遅延、継続ダメージなどのランダムのバッドステータスを与える。
破滅は、相手の装備や持ち物を一個破壊する。が、対象外の物もある。
苦悶は、視界不良と継続ダメージ。
あの刀にはその他にも、ちょっとしたデバフが全体的な少しずつ入っている。
そのせいで、斬られていないのにも関わらず、HPは6分の1は削られているし、何度も食らってたらたぶん能力使用不可の呪いを引き当てられる。
そうなれば一貫の終わりだ。
だから…………。
「短期決戦だ、な」
先ほど《風姫》から奪った刀を取り出す。
ちなみに、多分この刀は《百戦錬磨の一閃》だ。
『攻撃力:+1765
攻撃速度+112
破壊力+96
クリティカル威力+50%
クリティカル発生率+50%
切り札:+9999』
うん、使い捨てみたいに使っていい性能してないぞ。
まず、破壊力は物質に対する攻撃力だ。
《メビウス》内での硬度の上限が100なので、ほとんどの物が壊せる刀だ。
攻撃力は強化済みだろうが、このゲームにあるまじき数値をしてる。
さらに、切り札+9999。
切り札は、一撃のみ、攻撃後の隙が大きい大技を打った時に追加される攻撃力だ。
普通は100〜多くても500ぐらいが普通なのだが、9999まだ鍛えたのは異常だ。
しかも恐ろしいことに、切り札はクリティカルの一種なので、50%アップなわけです。
そうすると、9999の攻撃力で出たダメージに+約5000という、もはや馬鹿な数字だ。
それに加えて、切り札はクリティカルの一種だが、ごく稀に切り札でクリティカルが出る場合もあり。
そうなると、切り札の9999攻撃力によるダメージ+約5000+1.5倍クリティカルという、クソデカ数字を叩き出す、言わば《最強の一撃》。
だが、それを出すことができれば、絶対に噂は立つはずだ。
つまり、まだ切り札&クリティカルを出したことがないか、実戦で使えるほど出し方が確立していないのだろう。
そんな一撃が出せたら、あの《鋼鉄魔人》ですら砕ける一撃だ。
ならば、《風姫》は多分この刀を持ってまだ時間も経ってないだろう。
これほどの刀を作れるのは《隼鬼》だけだろうから、きっと今回の《コロッシウム》出場に合わせて《隼鬼》から授かったのだろう。
「なら、この刀を十全に使うことができれば………」
看守は早くも《百戦錬磨の一閃》を構え、タイミングを合わせて切り札の準備をする。
周囲からも《疾走監獄》のワープホールが出現し、四方八方から唸りながら《風姫》に突進する。
看守は早くも決めるつもりだ。
周囲からは能力が。
正面からは元自身の物である最高火力の刀が。
看守はもはやここで決めるつもりだ。
看守は急ぎ過ぎた。
もっとゆっくり準備を整えていけば、勝てる可能性はあった戦いだった。
彼女から手の離れた刀。
《事象》である彼女の能力の発動条件はまだ完全に理解されていないが、この場合。
彼女の刀と看守の刀がぶつかった時に能力によって、《亡者の一太刀》による『一方の刀を弾く力』と、ぶつかったことにより能力が発動されてしまった《百戦錬磨の一太刀》に加わった『弾かれる力』が『拡大』されてしまったのだ。
《風姫》の《武功超過》は、自身の行動を拡大するチカラだ。
一度持ったことのある刀ならばその能力に適応できるのだろう。
それにより、刀を弾く時に、自身の持っていた《亡者の一太刀》を介して、相手が持っていたはずの《百戦錬磨の一太刀》に能力が発動し、『弾かれる力』が拡大したのだった。
切り札を弾かれた看守は、切り札直後にくる大きな隙と、切り札を弾かれたことによる反動で身体が痺れ、動けなくなっていた。
そこに、刀を弾いた《亡者の一太刀》を構えた《風姫》が来る。
避けられない。
そう確信し、緊急で能力を発動し、自身を《疾走監獄》に収容して逃げようと、自身の隣にワープホールを出現させる。
しかし、もはや遅かった。
彼女の能力であれば、鞘に納めずとも居合いが扱える。
つまり……………。
「《七点抜刀》」
掲げられた刀より繰り出された神速の7つの刃は、《疾走監獄》やワープホールをものともせず、看守を切り裂いた。




