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記録79_《疾走監獄》






「《疾走監獄(プリズン・トレイン)》、ね………」




 《風姫》によって四肢を切り刻まれる寸前に放った能力(アビリティ)は、看守の周囲に現れた円形のワープホールから、車輪の付いた檻が縦横無尽に走り出してきた。




 車輪付きの檻の先頭には扉があり、薄汚れていて鯖が酷かった。


 走った先にはまた円形のワープホールがあり、そこを通った後に次の檻が走ってきたため、一本の檻の車両をワープホールで至る所に出現させているカタチだろう。




 だが、腐っても隠し能力(チートアビリティ)



 ただの檻を走らせる能力ってわけでもないだろう。






「にしても、硬いね。《武功超過》だったら大体スパッと行けるのに」



「そんな簡単に切られればこちらも立つ瀬が無い。俺も無駄な殺しはしたくないから、大人しく()()()()貰いたいものだ」






「ふーん。考えが甘いくせに、無駄に口を回してる…ねっ!!」



 彼女、《風姫》の強みは、『初速』。



 ちょっとしたズルにより刀の抜き初めを《四天王》と同等の速さにできる抜刀は、急にやられると反応できる者は少ない。




 その例に違わず、今《風姫》が放った《七点抜刀》でも、本来ならば為す術もなく7つの斬撃によって八等分される理不尽技だ。










 だが、看守の場合は違う。



 《疾走監獄(プリズン・トレイン)》は自由度が高く、ワープホールから出現という特殊な攻撃方法なため、どこから来るかの予測も困難である。



 そのため、《四天王》並の速さに反応することはできずとも、『ほとんど無敵状態』を作ることは可能だ。






 自身の周囲に一度、自身を守るカタチで能力(アビリティ)を走らせて、大体の攻撃をカバー。




 そうすると、次はカバーしきれない、能力(アビリティ)の間を突いて攻撃しようとするのが普通だ。




 だから、順次走り終えた《疾走監獄(プリズン・トレイン)》を、その穴を塞ぐように走らせる。





 それを続けていくことで、ほとんど穴のないバリアが出来上がるわけだ。




 そのバリアにより、速度を馬鹿みたいに上げた《七点抜刀》を弾く。






 まぁ、本気で防ごうと思えば、全リソースを使って自身を穴が無くなるように防ぐことができるのだが、そうすると能力(アビリティ)を攻撃に回せないから却下だ。




 この《疾走監獄(プリズン・トレイン)》の使用上限距離は決まっているからな。




 この使用量削減バリアを使えば、残りの使用量で攻撃が行える。




 《風姫》の周囲に無作為にワープホールが生まれる。




 《風姫》に当たれば重畳、だが当たるとは思っていない。




 これの狙いは《風姫》に当てることじゃない………。







 看守の両脇からもワープホールが出現し、先ほどのワープホールからもほぼ一斉に《疾走監獄(プリズン・トレイン)》が発動する。






 もちろん、今の《風姫》は《七点抜刀》の直後で隙が大きいが、流石に攻撃をまともに食らう程ではないし、《武功超過》ならば防ぐことも可能だ。





 だが、防がせることこそ、看守の狙いである。




「チッ、反応できないと思うな………っ!?」




 刀で防ごうとした時、向かってくるものが《監獄》であることに多少違和感を感じて回避を選択する。





 その時、《疾走監獄(プリズン・トレイン)》に刀が掠った。





 ただ一度、《疾走監獄(プリズン・トレイン)》の先頭に『コツン』と当たっただけである。






 その瞬間、《風姫》の手元から刀は奪い取られ、《疾走監獄(プリズン・トレイン)》の檻の中へと収容されてしまった。




「あれ、私が刀で防いでたら私ごと中に入ってたってこと………?」




 小さな疑問の後に続いた光景はなんとも無惨なものだった。




 刀を収容した《疾走監獄(プリズン・トレイン)》は展開したワープホールに入って行った。




 ただし、ワープホールは《疾走監獄(プリズン・トレイン)》の檻しかワープさせないようで、檻の中に入っていた刀は移動中の檻とワープホールに潰されて砕け散った。





「そんな、武器を取られた………っ」




 正面に扉があったからまさかとは思っていたが、正面が出入り口か。




 まぁ、ひとつ未解明要素が明らかになったと言うことで手を打とう。




 能力(アビリティ)の効果範囲や、どのような効果かが理解できなければ、今のように動画の無駄遣いになってしまう。




 だが、それ以降は効果を理解していれば充分に対処可能だ。


 《疾走監獄(プリズン・トレイン)》の危険性はもうわかった。





 イベントリから、とっておきの刀を出す。






「この刀、1発でも喰らいなよ、看守さん。流石にここまでデバフが込もった刀、私作ったことないし」





 その刀は、《亡者の一太刀》。



 中級ダンジョンや上級者ダンジョンでたまに落ちるような、そこまで希少ではない武器だ。




 だが、大事なのはステータスだ。


『ステータス:攻撃力:318

      呪い:+1,205

      破滅:+985

      苦悶:+769

      生者特攻:+582』







「おいおいそりゃあ………だいぶ頑張ってデバフを盛ったな」



「オークションで買ったんだけどさ、かなり痛いらしいよ?」






 互いに、相手の攻撃の危険性は重々承知し、先ほどよりも空気が重くなる。




 されど、やることは同じだ。









 呪われた刀を鞘に納め、双方再び能力(アビリティ)と刀をぶつけ合い、弾き合いながら火花を散らした。






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