記録70_最初の挑戦者
『さぁて、早速始めようか』
《咎人》の宣言の直後、《錬金翁》、《カタクリフト》、《風姫》の3人はコロシアムの入り口から姿を現す。
そうすると、観客席から歓声が上がった。
「………イカれてんじゃねぇのか。さっきここで剣闘奴隷が、ここで何人も死んでいるんだぞ」
「そういえば!!《実死設定》はどうしたんですか!?ついてましたよね!?あなた、大量殺人鬼じゃないですか!!!」
「……安心しろ。貫かれる直前に、《ドクター》よろしく、“ハッキング”して、見事《実死設定》を無効にして奴隷を解放したよ」
杞憂していた状況にはならなかったようだが、それにしてもおかしい。
《実死設定》は、《メビウス》のゲームバランスを崩壊させるほどの『危機感』を与える、絶対的な契約の代償として扱われるものだ。
だが、それをいとも簡単に“ハッキング”なんて言葉で無力にしてしまう。
普通のゲーマーがハッキングで不正を無くしてゲームを行うと言う、前代未聞の事態を平然とこなす者。
それこそが、《メビウス》の中でも最高峰の、日本サーバーの《四天王》なのだ。
「流石だな、あれが噂の《四天王》の一角!!《錬金翁》!!」
「俺たちこれからあんな化け物と戦わないといけねぇのか?カァ〜!勝てる気しねぇ〜!!」
そして、《錬金翁》と向かい合うように居た数人の男達。
彼らが、今回の《臨時コロシアム》の相手だろう。
まぁ、相手のスポンサーの影響だろうが、相手は全員隠し能力を持っているだろう。
能力と言うのは、突然降ってる来るものだ。
それを《法皇》によって人為的に起こし、能力の発現を完全にコントロールできるように調節されたものが、隠し能力である。
その施しを受けた増援。
雑に施す程度ならば別に時間はかかからないだろうから、何百人といてもおかしくはない。
雑兵でも、能力に恵まれたかなりの手練れだ。
だが、戦闘の素人ばかり。
今、小手調べと言わんばかりの三人を出してきた。
このぐらいは頼むぞ、と煽っているのだろうか。
「《カタクリフト》、雑魚は自分で処分できるな?」
「はい。別にできますが、本当に私なんですか?」
「つべこべ言わずに」
「…………はぁい」
ちょっとしょぼんとした《カタクリフト》が前へと出る。
その姿を見て、相手の三人は嘲笑していた。
「なんだぁ?舐められてんじゃねぇかぁ?たった一人。それに、《四天王》でもない無名のプレイヤー。それが、三人の《チーター》を相手取れるとでも?」
「さぁ?やってみなければ…………わかりませんよ?」
《カタクリフト》の言葉に怖気が走る。
『無名』とは言ったが、弱いわけじゃないだろう。
隠し能力が無ければ、敵対すらしていなかっただろうが、隠し能力のお陰で今は死なずにいるだけだ。
この能力が無ければ、すでに死んでいただろう。
だが、チーター3、対、一般プレイヤー1なんて絶望的な状況はそうそう覆せるものではない。
「お、おい審判!!もう始めるぞ!!」
「そ、そうだぜ。どうせ俺たち、《隠し能力》派閥の勝利で終わるんだ!!!」
「《四天王》。ハッ!ま、まままま負ける気がしねぇわ!!さっさと終わらせてしまおう」
確かに、《練金翁》ほど恐怖はないだろう。
だが、《錬金翁》ほどじゃないからこそ、『《カタクリフト》が弱い』がイコールで繋がることなんてないんだ。
相手方三人は配置につき始める。
「ハハッ、愚かな死に様晒しやが………れ?」
ジュッ!!
耳元で、何かが焦げた音がした。
次の瞬間、頬に鋭い痛みを感じた。
「、いっ、たぁ、……….っ!!ハッ…………なんだ……今の」
「熱線だよ。俺の能力の効果による、ね」
指先に、コロシアムの予選で見せた光球を作り出す。
「《錬金翁》の出番とか、作らせませんからね?」
《鋼鉄魔人》の護衛は、能力を十全に使い、コロシアム。生き残ることを決めた。




