記録62_あの女子の正体は?
翌日。
《コロッシウム》での獄中生活は、正直言ってかなりキツかった。
なんの需要があるのかわからない労働が強制されていて、それも剣闘奴隷として闘う時以外はずっとこうだ。
「ホラホラァ。体力つけないと、死んじゃうぞ☆」
さらに、看守の下卑た視線で舐め回すように監視され、事あるごとにサンドバッグにされる。
まぁ、身分的には奴隷。
仕方ないことといえば仕方ないことだ。
何がキツいって、看守が気持ち悪いのが一番キツい。
なんか、男に対して欲情してそうな視線が身体を這ってきて………。
いや、もう考えるのはよそう。
これ以上は吐き気を催してくる。
そう思いながら業務をこなしていると、昨日俺を切り刻んできたあの女子がいた。
「よぉ〜っす。昨日はよくもやってくれたな」
「あぁ?また斬られたいんスか?Mなの??」
「なんだよ。そう、かっかするな。もう調子乗らねぇからさ」
「じゃあなんの用よ?」
明らかに嫌がられてるなぁ……。
まぁ、昨日よくわからない絡み方をしてきたおじさんってなれば、確かにそういう対応にもなるか。
「ちょっと聞きたいことがあっただけだって。アンタあんだけ強いんだから、負けることなんてないだろ?」
「………そんなことない。師匠は余裕で私より強いし、師匠と同レベルのやつも数人いる。この《コロッシウム》にも、私より強いやつは数人いやがる」
「ほえぇ。お前が一番じゃねぇんだな」
「当然でしょ?私はか弱い女子なんだからね?」
ウインクしながら言う。
いや、そんな可愛いわけでもないんだがな………。
「今、失礼なこと考えたっスよね?」
「い、いやぁそんなことないケド……………」
女子、コワイ。
〉〉〉
「なぁなぁ。後何日かかる?俺もうすでに疲れたんだけど」
「早すぎるだろ。俺がゲーム再ログインしたばっかりなのに」
《睡魔》が飽きてゲームを抜けて本格的な睡眠をしに行ったのを皮切りに、《ドロース》のメンバーは全員ゲームを抜けた。
ちなみに、学校はよくわからない理由で欠席した。
というか、させた。
「あ、あぁ。これがかなりキツいんだ」
「で?かかる時間なんて俺がわかるわけないだろ」
「まぁ、あの惑星までの運転任されてる俺が一番わかってんだがな」
《錬金翁》の分身体が1番、惑星までのルートを知っている。
どのくらいのスピードでいけば何時間、なんて計算もお手のものだ。
それに、《錬金翁》は学生などの時間が限られる役職を持つ年齢じゃない。
なので、一日中ログインして、運転できるわけだ。
ちなみに、《スターロウ》も一日中ログインしているが、《メビウス》にログインしながら寝ている為、今はポッドの別の部屋を使っている。
「で?あとどのくらいで着くって?」
「そうだな、もうそろそろゲートが見えてくるはずだ」
そう言った瞬間に、他の惑星とは違う、一際明るい惑星が見えた。
「噂をすれば、見えたぞ…………」
それとほぼ同時に、《霊卓》、《女傑》、《集眼》、《食龍》、《スナイパー》がゾロゾロとやってきた。
「さてさて、今日も頑張りますかぁ〜」
《食龍》が伸びをしながらやってきた。
《スターロウ》も、寝ぼけた目をこすりながら奥の部屋から出てくる。
「お、ほとんど全員揃ったんじゃないか?《鋼鉄魔人》も、自分の船で《ウォーマー》に戻って行っちまったからな」
「え?そうなの?」
「そう言えば真人は寝てたんだった………」
《霊卓》が呆れる。まぁ、それもそうか。
「そうだ。《コロッシウム》で面白そうな女を見つけたぞ」
「え?レンゾーちゃん、ナンパ男だったの??」
「違う、久しぶりに聞く名前っぽそうだからな」
《女傑》がいると話が進まない、と《錬金翁》は頭を抱える。
「で?誰だよ」
「いやな?構えと呼び方で思い当たったんだが、多分《隼鬼》の弟子だと思ってな」
「え?あの仏頂面ジジイ、弟子取ってたの!?」
「美花、流石に驚きすぎて失礼だ」
相変わらず、《霊卓》は手綱を握ってるなぁ、と思う。
周囲から《四天王》のように呼ばれる、四人の最強プレイヤー。
その内の一人、《隼鬼》。
時の流れを操る《睡魔》、『無』から『有』を作り出す《錬金翁》、もはや誰にも存在を認識されない速さの《隼鬼》、自己改造専門家《アスモデ》。
この四人は、自他共に『並び立つ者たち』として認め合っている。
その中の一人である、《隼鬼》と、あの女子。
構えから太刀筋まで、まんま似ていて、師匠と呼び慕うものがいると言う情報だけ考えると………。
「確かに、どっかで弟子取ったって言ってたかも……」
「大事なことは全部忘れるなお前…………」
肝心なところで役に立たない《睡魔》であった。




