表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/161

記録5_《ポルターガイスト》






 《霊卓》こと、中見 早昌の能力(アビリティ)、《ポルターガイスト》。



 効果は、半径一メートル以内の範囲で、一度生身に触れたことがある部位を一定時間操ることができる能力だ。



 そう、触れられれば、その部分は操ることが可能になり、私物は全て操れるだろう。



 服などは、常日頃からつけているものなのだから、当然操ることができる。


 ただし、今も言ったように、部位を操ることができるだけだ。

 例えば、コインの表を持って床に落とした場合、コインの表は操れるが、裏となると操ることはできない。


 それに、制限時間がある。今の早昌ならば、短くて5分、長くて30分だ。



 これを服の糸に当てはめると、正確な動きをするには、一度、糸の端から端までに触れる必要がある。



 かなり、発動条件がかなり使い勝手が悪いものだが、発動すれば強い。




 糸だって、ポルターガイストのチカラより刀に切られずにいるのだ。





「切れない……!?」

能力(アビリティ)、《ポルターガイスト》の能力。まぁ、君にはまだ能力(アビリティ)が発現していないが、年の功とでも言って許してもらおう」




「んじゃまぁ、これで終わりなんじゃないか?」


 糸がさらに締め付けてくる。

 全く抵抗できずに刀は首筋に吸い寄せられ……。





 刀の腹を滑らせるように早昌の手が通った。


 つまり、この刀はもう《ポルターガイスト》の対象内……。



「もう、武器もないんじゃどうしようもないね?」



 彼の能力の範囲内に入ってしまった。


 瞬時に刀から手を離し、距離を取る。




 さっきまであった勝てるビジョンが一瞬にして消える。


 いや、それは早昌にわざと見せられていたビジョン。


 元々そこには勝てる可能性などなく、待っているのは敗北と絶望感か。




 でも、まだできることはあるはずだ。

 出来るだけ時間を稼ぎ、出来ることを見つけ出していけ。そうすればまだ勝機は……




「あ、ちなみにこの能力(アビリティ)、生物にも有効だからかなり今さっき触った君の右手。僕の周りではもう使えないね」


 明らかに万能すぎる能力のカミングアウト。

 この宣告から、俺の試練は加速していく。




 〉〉〉




 俺の頭脳で、あいつを超えるのはかなり難しい。

 使えるものはすべて使う。



 あいつの考えを読み取って、その裏をとって、あいつがそれを読んでいることすら範疇に入れて最高の形で一撃を入れる。



 そう考えたとき、彼は早昌に気づかれずにあることを行った。



 〉〉〉




 彼、浜崎 翔の強みは恐るべき動体視力、そして、それに見合った集中力。

 二つの強みがちょうどよく噛み合い、かなり厄介になっているが、まぁ俺の読み内には収まっていた。


 今、彼は丸腰で俺と対峙している。

 最初は、真人を紹介するための仲だったのに、運命とは数奇なものだと思う。



 彼は、次は俺の戦法を真似て罠を作ってくるだろう。

 流石に俺が攻撃をしかけに来るとは思っていないだろうから、作るのならば罠を起動させようとしたときに使うだろう。



 ならば俺は、わかりにくそうでわかりやすい場所に罠を置き、相手にわざと罠を発動させる。


 その後なら、きっと相手は隙だらけだ。


 だが、そこでかからなかった場合は…。



 〉〉〉



 今の俺は丸腰。


 武器の刀は《ポルターガイスト》によって使えなくなり、捉えられた時に触れられた右手もその範囲内に入った。



 かなり手も足も出ないような状態になったが、この状態は好機だ。


 相手はそこまで動いてくることはないだろうと踏んでいるだろう。

 ましては、罠を仕掛けると思っているはずだ。


 まぁ、罠以外に方法はないからするのだが、問題はその罠。



 相手が気づかず、それでいて決定的な一撃。


 今の早昌には、多分、俺が突ける中で唯一無二の盲点がある。

 右手だ。



 右手は使えない。

 これはほとんど絶対条件だが、その右手の使いようが、この戦いのキーになるはずだ。



 まずは、今考えた第一の罠を仕掛けにいく。


 この結末はとうに分かりきっていることだ。だから、そこからの展開を予想し尽くしてから、次の行動に出る。



「いくぜぇ……おらあぁ!」



 渾身の、右ストレートだった。




 〉〉〉



「おらあぁ!」

「うおぉ!?」



 右ストレート。

 右手が使えない状態で仕掛けるというのは、つまりこけ脅しに過ぎず、一メートル範囲で止まるというものの、かなり怖い思いがあると言うものだ。


 だが、彼のストレートは中空で止まる、が。



「そっちが本命じゃねぇってわかってんだろぉ!?」

「右で殴りかかってくるとは思ってなかったよ!」


 左からフック。

 すかさず早昌は手で身を庇うが、


 直前で止まった。




 その瞬間の、思考の読み合い。

 翔と早昌が睨み合う。



 早昌が一歩後ろに後退するのと同時に、早昌がもともといた場所を翔の足がかなりのスピードで通過する。


 翔のローキックは失敗に終わる。



 しかし、早昌が後退したことにより、早昌の1メートル圏内にあった右手は早昌から離れて自由が手に入った。




「……外した」




 次は、ローキック蹴った影響でしゃがんでいる翔の背中に早昌が手を伸ばす。


 翔が転がって手をよけた。

 そして、翔は回転して地面を蹴り、土煙を出す。



 早昌はかなり予想外でもろに目潰しを食らった。





 そうなった隙に翔は裏を取る。




 ………フリをして前に戻る。


 案の定、俺の足音に釣られて裏を取られたと思っている。


 後ろを向いたのが良い証拠だ。





 今なら服越しに一発打ち込める!






 が、このままだとさっきのように突発に防がれるとまた触れられる。

 そこまで学ばない俺じゃない。


 ここで、俺は新武器を放り込んだ。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ