記録58_蹂躙の時間
「なんで………。なぜ!なぜここにいる!?《ドクター》はどうした!?答えろ!《睡魔》!!!」
いつになく動揺する《引力核》だが、それに対して《睡魔》はつまらなさそうに欠伸をしていた。
「いや、なぜって。ここ……、元《海岸エリア》っぽそうだったからな」
「《海岸エリア》……?なんでだ。どう見たってここ、ただ延々と白が続く平野だろうが」
最初、《食龍》と《鋼鉄魔人》が降り立った場所は、淡く白い光を放つただの地面のみの場所に降り立たされていた。
それもそのはず、そこは《ドクター》の能力によって海岸の機能を無効にされた《海岸エリア》だったからだ。
なぜそんなことがわかったかというと………。
「俺が何年この惑星通ってると思う?ほら、あっち側見ろ」
指を指された方角は、《鋼鉄魔人》が《集眼》を連れてきた方向と一致した。
「あっち側は、《断罪の巨城》の果て。そこに一番近い方向だ。証拠に、あっち側に海を再現させていた痕跡としてそっち側に地味ーな傾斜がある」
よくよく見てみれば、そちら側には傾斜があり、もっとよくみれば、そちらの方向の奥には壁があるような影があった。
「マジかよ………。それを《龍喉》が腹痛一瞬で見抜いたって??」
「そ。で、そこにいる《集眼》を惑星の中に連れてこようと思ったら、もはやそこにいた、ってわけ」
「キラリン☆」と効果音が出そうなウインクをしながら言う。
「あーでも、《引力核》クンは厄介だからさぁ………。見かけたから処分しようかと思ってね。だからここにきたってわけ」
ウインクの直後に、獲物を狩る眼光に変化して、その場にいる全員の背筋が凍る。
「さぁ、始めようじゃないか」
鎧から槍を出現させ、虚空から《地獄の門》も取り出し、不敵に笑ったのだった。
この数分。
それは、短いようで、彼を蹂躙するには長すぎる時間だった。
〉〉〉
「まー、こんな感じなんじゃない?」
その直後、その場に倒れ込んだのは両腕を無くしてうずくまる《引力核》であった。
「ありえない……………。ありえないありえないありえないいいぃぃぃ!!!!嘘だ!ハッタリだ!!お前も《隠し能力》を持っていたんだ!それしか、ありえないんだぁ!!!」
「いいや、違うね。お前の能力は弱点がある。それは、傷の重傷、軽傷。他においてもそうだが、自分が本心からそう思ってなければ発動しない」
「そ………そんなはずあるか!?《チート》だぞ!?《隠し能力》なんだ!!そんなふざけた話がぁ……………」
蓋を開けてみれば、存外呆気なく《引力核》は倒された。
所詮《引力核》は能力頼りの戦い方しかしてこなかった。
《デルマノイドの巨人》、能力無効系統の特性を持つ拳。
それと《引力核》を一瞬でうまく誘導し、瞬きの直後には《引力核》は《デルマノイドの巨人》に殴り飛ばされ、そのすぐ後に《地獄の門》に両腕を切られていた。
「なんで……。できるはずない………。《デルマノイドの巨人》を誘導?瞬時に俺も拳の着弾点を計算?防御の間もなく両腕切断?チッ、クソ痛えぇ…………。ただの……理不尽の塊じゃねぇか…………」
両腕欠損状態に陥った《引力核》は絶望に打ちひしがれていた。
《地獄の門》に切られた両腕は塵となって虚空へと消え、修復不可だ。
「これで終わりだ。この姿、《ドクター》に見せに行ってやろうか?」
下卑た笑いをしながら《引力核》へと詰め寄る、
「《スナイパー》。お前もなんかやるか?」
「…………やめとく。獲物、取られた。とても、不愉快。それに……………」
ジロッと《引力核》を見て、一言。
「哀れで、白けた」
「ごめんごめん…………。まぁでも、《引力核》を捕えたのは事実。じゃあ、あっち側行くか」
「え、でも、《龍喉》はもう閉まってるんじゃ…………」
「知ってる。だから、その時のための、これだよ」
そういうと、片手を掲げ、指を鳴らす。
「《ビリー・ジーン》。時間は、逆行する!!」
そこにいた、《睡魔》&《集眼》&《スナイパー》&《鋼鉄魔人》。
彼ら以外の全てが、逆行を始めた。




