記録56_デルマノイドの巨人
時は、《食龍》が時空穴《龍喉》を開ける前の話。
そこでは、《スナイパー》と《集眼》と対峙している《引力核》がいた。
「《デルマノイド》」
《集眼》が魔法を唱え、時空の切れ目がめくれて現れたのは、全身真っ黒の、頭の丸い巨人のような化け物であった。
「………へぇ、で?その巨人が何できるっての?」
「アンタを倒すには、生半可な攻撃じゃダメだ。なんてったって、過去の攻撃の重さを変化させることができる能力からな」
「へぇ、よくわかってるじゃないか」
その言葉を聞き、《集眼》が目配せすると、デルマノイドの巨人は行動を始めた。
音を置き去りにする………には程遠いが、その図体からは考えられないほどの俊敏性をその巨人は持っていた。
「一応忠告しておくが─────」
「ん?」
「一撃でも当たれば、即死だと思った方がいいよ」
「何をほざ─────くっ!?」
《集眼》の一言に隙を見せた一瞬。
その一瞬でデルマノイドの巨人は《引力核》に追いつき、地面に肘打ちを喰らわせた。
地面は大きく抉れ、足元が不安定になり《引力核》が足場を探す中、デルマノイドの巨人は全て力技で地面を押し除けて《引力核》を追う。
そして、肝心の《引力核》への攻撃。
またしても《引力核》に追いつき、潰してやろうとするが、足場が悪い中、そこで巨人の弱点である『精密な動きが苦手』を利用して逃げ出す。
「なんだ。攻撃が当たらなければこの程度………」
と、思った瞬間、視界の端に入ったのは、血の流れた右肩であった。
「………は」
なんで今、右肩から血が出て………。
そんな時、後ろから『パアァン!』と音が聞こえた。
振り返ると、そこにはスナイパーライフルを持った《スナイパー》が、遥か遠くからスコープを覗いて彼を狙撃したのだ。
「なっ、いつの間に………。銃弾が早すぎて発砲音がズレた……?だとしても、その程度の傷は………」
「言わせねぇよ?」
その時にはもはや、巨人は辿り着いていた。
デルマノイドの巨人は《引力核》をはたき落とす。
「グッ、痛いな……。でも残念。軽い傷は軽い傷だ……!?」
その言葉と同時に、《引力核》は何か異変に気づいた。
「気になるか?」
気がつくと、《集眼》は真後ろから刀で切りつけてきた。
異変により反応が遅れ、《引力核》はモロにくらってよろけた。
「くぁっ…………。いつから……そこに…………。いや、その前に、これはなんだ!?」
「質問は一つずつしろよ。それに、そんな代名詞で言われてもわかんないって」
ニヤニヤしながら《集眼》は近づいてくる。
「わかっているだろう。何故、能力が発動しないんだ!?」
《引力核》の傷は、《スナイパー》がつけた肩の傷から、巨人のダメージ、《集眼》の切り傷まで、全てが残っていた。
「全く傷が軽くならない……。何をしたっ!《集眼》んん…………」
「何をしたもなにも、そんなことすらわからないなんて………。それでも暗殺者グループの長ですか?」
「お前こそ………。異常な洞察力と成長、俺にすら気配を感じ取れない隠密、あの《ドクター》でも見抜けない《隠者》を看破………」
《集眼》の功績の例を挙げ始める。
ちょっと前の時は無視してきたくせに。
「たった1週間だ?ほざけ。お前は絶対、少なくとも1年はこのゲームのバトル業界に首を突っ込んでるはずだ」
「!?」
何をいうかと思えば、経歴を探りにきた!?
「残念だが、俺の口は軽くない。どこでそう思ったとか、どこで確証を得たとか。そういうのは言わねぇぞ」
「…………いやだなぁ。そんな疑うものでもないだろ。僕は本当に1週間でここまできたんだ」
「じゃあお前は、《睡魔》に誘われるまで、一体どんなゲームをしてたんだ?」
「はぁ……。僕はね?《睡魔》に誘われて《メビウス》を始めたんだよ?まぁ、元々ゲームが得意ってのはあるかもしれないけど……」
「……ま、そういうことにしておいてやる」
そう言うと、《引力核》は立ち上がった。
「あらら、もう回復?」
「長話の間に、能力はもう回復した。デルマノイドの巨人に殴られてちょうど10秒で回復したな」
「秒数、数えてたんだ。もしかしてタネ割れた?」
大方、デルマノイドの巨人の能力。
能力無効系だろうか。
しかし、10秒というのはかなり長い。
連続で殴られたら、残り秒数は仕切り直すのか、加算されるのか。
そう言ったところでも、デルマノイドの巨人は危険だ。
それに、《集眼》にも胡散臭さが漂ってきた。
「ここらでそろそろ、決定打でも………」
その時だった。
「うまく行った!さぁ、逃げるんだ!!」
例の《龍喉》が開いたのだった。




