記録55_チーターの脅威
「うわ、くっさ……土の匂いすごっ……………。てか、あー。おいおい、こりゃあ………」
「能力が、使えない………。おい、これってまさか………」
地面から突如出現した縄に縛り付けられた《隠し能力》派達。
《ドクター》はたった今、自身の過ちに気付いた。
(《睡魔》より…………。いや、どんな者よりも、コイツを一番警戒するべきだったんだ……。あの時!アイツの本体まで辿り着き!倒せていれば………)
《錬金翁》が今作った縄。
先ほど、《ドクター》との戦いで分身が倒された時、一部が《賢者の石》と共に本体の元へと送られた、あの能力封じの縄である。
彼は一部を分身に持たせていたが、そのほんの一部のみ、本体があった《賢者の石》を保管している玉座に残していた。
理由は単純、その縄を解析するためだ。
普通であれば、解析なんてしても意味なんてないだろう。
だが、《錬金翁》が解析したとなれば、話は別だ。
《錬金翁》は解析さえしてしまえば、それをそのまま模倣して使用できるからだ。
つい先ほど、解析していた自身の分身が、解析した情報を持ってやってきた。
《翔身》が疲弊し、他の仲間達も能力の使用不能状態、それに加えて相手側は一人の欠員はあったものの、何か目立ったトラブルがあるわけではない。
《翔身》が疲弊した以外は、全て彼が作り出した影響であると言っても遜色ない。
完全に優先準備を間違えた………。
確かに《睡魔》の使う《ビリー・ジーン》は時間遡行の力を持っている。
《睡魔》と《錬金翁》が戦えば、まず《睡魔》が勝つだろう。
だが、《睡魔》が勝つからと言って、《錬金翁》がこちらにとって、《睡魔》よりも危険度が低いと言ったら大間違いだ。
「さて、と。拘束されちゃったお前らは、どんなことをするんだろうねぇ。楽しみだよ」
ニヤニヤと、《錬金翁》が近づいてくる。
幸い、私は間一髪で、あの縄からは抜け出せているが、戦闘中だった彼らは早く助け出さなければ痛ぶられてゲームオーバーだ。
「《翔身》。分身はあとどれくらい残ってる?」
「やめてくれ《ドクター》。俺、もう分割しすぎて意識が朦朧としてきてんだわ」
肝心な《翔身》もこの有様。
本当であれば、非常に困難な問題だ………。
だがまぁ、所詮こちらは寄せ集めのチーター集団だ。
連携が取れず、計画通りにいかないことなんざ想定済み。
想定済みなら、保険だって用意してある。
「もういいかな。目的は達成したし、本拠地にいる《翔身》の元に帰るとしよう」
手近にいた《マスター》の縄を手刀で切り、縄で縛られた《翔身》の腹部を拳が貫いた。
(!?《翔身》に物理攻撃は効かないんじゃ…………)
そう思った瞬間、どこからともなく《翔身》が現れ、分身がぎゅうぎゅうと集まり始めた結果、一人の人間が姿をなした。
「これが、《ドクター》の能力………。これで《睡魔》も《錬金翁》も倒してくれればいいのに」
「まだ時期尚早ってだけだ」
「こっちはもう一人やられてるんだよ?悠長すぎるだろ」
「彼の離脱は計算済みだ。ほら、早く行くぞ」
こ《マスター》、《翔身》、《ドクター》の3人は揃った。
そして、《死神》はもうやられたと考えて間違いないだろう。
あと、残っているのは…………?
「待て。待て待て待て!」
辺りを見回す。
いない。
いない!!
「《引力核》が…………。消えた?」




