記録49_悪夢、そして予想外の合流
「何のために、ここにいるんだよ?」
いつかの自分が、問う。
「何がしたかった?お前は、たったあれだけで忘れてしまっていたのか?」
「………違う」
「いいや、違わないさ。お前は忘れていたし、義務も忘れて楽しんでいた。その結果がこれだ」
「…違う。この結果はそれだけじゃない」
「違う、違うって、いつまで騙し続けるつもりなんだ?お前は結局、この戦いで出る損害を減らすことはできなかった」
まるで責めるように、こちらを見てくる。
「……そうかもしれない……………。わかったから、もう、その目をやめてくれ………………………」
震える、体が勝手に震えてしまう。
今の俺は、いつも感じていた『孤独』だ。
「お前はもっと努力できたはずだ。寝てばっかりで、怠け者のお前にならば時間はあった。なぜ、前と同じ損害の出る状況を選んだ?」
「それ以上…………その目で、俺を見るのをやめろっ!!!」
「いいや、やめない。お前は自分でこの状況に縋っている。そのままでは一向に俺は態度を変えない」
「そんなことは、ない…………」
耐えきれずに頭を抱える。
ずっと、ずっと、視線を感じる。
まるで責めるように。
まるで拒絶するように。
まるで追い詰めるように。
まるで償いを求めるように。
「もう、やめろよ…………」
俺は暗闇の中、頭を抱え、冷たい視線を感じたまま、もはや戦闘不能になったはずだと思い込まれている《マスター》がから戦場へと、意識を向ける。
意識が覚醒し、この悪夢からも遠ざかる。
助かった、と内心思っていた。
だが、そんな甘い話あるわけが無かった。
俺のことを決して許さないその目が、『ただお前を見続ける』とでも言うように、爛々と輝いていた。
これが、一度を撃退した後に見た夢の話。
これからの戦場に不安を募らせ、彼の意識は夢から引き摺り出された。
その時の不安は、《ドクター》と戦っている今でもなお、嫌な汗として背中にこびりついている。
〉〉〉
「チッ……《マスター》のその影人形のせいで全く近づけねぇ……」
「あなたこそなんですかそのチート能力!拳も剣も触れた瞬間に動かなくなるから打撃も効かないし切れもしない!!」
意外にも、《マスター》と《霊卓》は互角の戦いをしていた。
《マスター》には先の戦いでみせた影大砲を使えるほどの隙が与えられず、《霊卓》もダメージが入らないだけで攻撃手段は皆無に等しい。
いや、《霊卓》の方が優勢だ。
例え《マスター》が影大砲を使えたとしても、《霊卓》の《ポルターガイスト》に阻まれる。
そして、《霊卓》にはまだ霊属性の魔法が残っている。
「こい、アーム!!」
かつての試験に呼び出した、あの霊である。
ケタケタと笑いながら、地中から無数に生えてくる腕たち。
鎧を装備し、大剣を持たせ、いつもの霊属性の召喚獣、アームである。
「まずは、小手調べしてやれ」
そう言うと、アームは《霊卓》の周囲にいた影人形を蹴散らし始める。
「ナイスだ、そのまま俺を連れ出して元を叩け」
最強の相棒を手に入れた《霊卓》に、《マスター》も対抗策を出す。
「こっちに切り札があるとは思ってなかったか?」
「そんなの、当然だろ」
《マスター》が取り出したのは、縄であった。
「それは……」
「こいつはウチの工作得意な奴が作った特殊な縄だ。《錬金翁》とか言う例外とかでなければ使えるはずなんだ………よっ!!」
縄をかけられる。
………なんてことはなかった。
徹底的に切り刻まれ、簡易的な魔法で燃やされ、アームに異次元に飛ばされていた。
「………もしかしてこの縄のこと知ってる?」
「まさか。未確認の物を触るほど好奇心に溢れているわけじゃない」
《霊卓》は伸びをして、今まで使ってこなかった戦術を解禁する。
「お前たちは知らないだろうが、俺は1人の方が、先を読むのが得意なんだ」
その瞬間、時空に亀裂が入る。
「「…………はぁ?」」
その向こうの景色は、かなり混雑していて、同じ背格好の人間が数人いたりする異世界のような情報過多であり………。
そこから顔を出したのは、《食龍》であった。
「うまく行った!さぁ、逃げるんだ!!」
「おまっ!このおっさん……さっきまでおじさんは戦えないだの何だのって不機嫌だったくせに流れるってなったら速攻で逃げやがって…………」
「このおっさん、味方の手柄をさも自分の手柄のように言うんですね。もしかして雑魚?」
違う戦場で戦っているはずの《食龍》、《スターロウ》、《翔身》の本体が飛び出てきた。




