記録48_1対1×3
「らあぁっ!!クソォォォオオオオ!!」
刺さりかけていた《練槍》を霧散させ、《カタクリフト》の方へ振り返る。
「《練槍》!」
この能力には、《顎門》のように自身に返ってくるデメリットは無いため、魔力があればどれだけでも【コピーの玉石】により発射することができる。
「ぐっ……らあぁ!!《錬金翁》うぅぅ!!!」
だが、まだ《死神》にダメージを与えるには、決定的に何かが足りていない。
もともと、《鯱鉾》が使っていた《練槍》とは違う。
もっと違う何かがあるはずだ………!
「そこだ!」
《カタクリフト》が《練槍》を放つが、《死神》を穿つ目の前で《死域》にはじかれてしまった。
《カタクリフト》も必死に隙を見つけて《練槍》を捩じ込もうとするが、《死域》による凶刃により近づけずにいた。
そんな中、《錬金翁》が浮遊する槍を増やし、《カタクリフト》の攻勢の補助に入る。
数多の槍が、《死神》の周囲を駆け巡る。
《死神》は、地から生える《死域》の刃を以てそれに応える。
「《死域》がいつ『心停止』に変化するかわからんから気をつけろ!『心停止』になれば回避が難しくなる!」
《錬金翁》の呼びかけに聞き耳を立てながら、《死域》の刃をいなす。
『こんな一進一退の戦況でいいのか……?』
これは、《カタクリフト》の思考であった。
こう思ってしまうのは当然と言えるほど、今の状況は良くなかった。
だが、彼はまだ知らない。
《錬金翁》が隠している、最後の切り札について……。
〉〉〉
時は少々遡り、《マスター》VS《睡魔》の戦場。
この場にいる6名。
《睡魔》と《ドクター》、《マスター》と《霊卓》、《女傑》と《翔身》がそれぞれ構えあっていた。
「《錬金翁》を逃した責任を取らないといけないからね。遊んでもらうよ?《睡魔》クン?」
「遊び感覚でこのゲームやってんだったら、あんなことしないはずなんだけどな」
「あんなこと?よくわからないなぁ?」
「お前に《睡魔》の邪魔はさせねぇよ。《ドロース》ナンバー2の俺が相手だ」
「お前がナンバー2?にしては弱すぎない?」
「よし、墓場に行く覚悟をするんだな」
「…………その脅し、《隠し能力チーム》の誰にも使うなよ?」
「アンタ、《集眼》ってやつから聞いたよ?キモいんだってね」
「ハハッ、僕嫌われすぎじゃないかな?そんな、自分の思考を切り捨てることがそこまで人に嫌われる理由になる?」
「………何というか、冗談のつもりなんだろうけど、それを笑いながら言ってるところとか、キモいんじゃないの?」
「何?つまり、僕が人間離れしていくのが怖いっていうの?」
「アンタの能力は自身が分割されると思考も分割されるんだよな?それを平然とするのが気持ち悪いっての」
「じゃあ君の、神経乗っ取って相手のコントロール権を奪うっていうのも反則だと思うけどね?」
意見の言い合いのような口論を繰り広げ、戦闘準備は整っている。
「じゃあ、僕から行かせてもらうよ?」
「ダメだね、俺からいく」
「なら、同時だ……ねっ!!」
《睡魔》と《ドクター》の戦闘が始まる。
最初に距離を詰めたのは《ドクター》。
彼の手が《睡魔》に向かって伸びる。
が、そんな安直な攻撃に当たるほどバカな《睡魔》でもない。
その瞬間、誰の目にもたまらぬ攻防の嵐が、彼らの間を通り抜けた。
「あー、まずまず俺たちはアイツらについていけないな」
「ハッ、戦う直前に、敵に弱音吐くやつがどこにいるんだ?」
「弱音に聞こえたんだったら謝ってやるよ!!」
「じゃあなんだぁ!?レベルが違って話かぁ!?」
ここでも、戦闘が始まった。
大量に出てくる影はあるが、《霊卓》の《ポルターガイスト》により誰1人として《霊卓》に傷をつけることはできなかった。
一瞬にして、ここら一体が影に呑まれた瞬間であった。
「で?そんなキモいおっさん、今回私が相手取るのは分身なんでしょ?」
「そうとは言っても、本物と遜色ない。それに、今までお前たちに見せてきた姿は全て分身だし、物理攻撃は効かない」
「じゃー、自殺まで追い込めばいいわけね!?」
「ハッ!発想が短絡的!お前の《神経階位》が僕に効く証拠がない!!」
「それなら!試してみるとしましょうか!?」
ここでも、神経が飛び交う中ワープし、分裂し、広範囲を巻き込むほどの拳同士の衝撃波が、あたりに響き渡った。
ここに、1対1×3が始まった。




