記録42_一騎討ち?
《翔身》VS《食龍》&《スターロウ》サイド
「《顎門》」
実体のない不可視の口が迫る。
対して、《翔身》は。
ズモ、ズモモモモモ………。
自分を何度も何度も分割し、的を小さく、そして多くしている。
「分裂する時ってそんな音するんだな!!」
分身の3分の2を喰らう。
「空間捕食……やっぱ厄介だよなぁ」
《食龍》の腕に、《顎門》の反動があることを確認してから、全員集まって結合した。
「相変わらず、全員に同じ分の思考があるんだよな」
「あぁ、痛みもなく体を分けられている感覚だよ」
「………相変わらず、気持ち悪りぃ」
「それ、前も聞いたよ」
距離を保ちながら、両者構えを取る。
《食龍》は相変わらずの薙刀。
そして、《翔身》が扱うのが……。
「弓か」
「弓道を嗜んでいた時期があってね」
《翔身》はなにもない宙から矢を取り出し、狙いを定める。
「いくら薙刀でも、十数メートルも離れてたら当たらないんじゃない?」
「あぁ、詰めるよ、これからな」
そう言いながら一歩踏み出し、そこからノーモーションで加速をつけた。
それに合わせ、《翔身》も狙いを定めた矢を放つ。
矢はやはり薙刀に弾かれ、回転しながら地へと落ちた。
そのまま《食龍》は《翔身》へと突っ込むが、そこで異変があった。
「………っ!?待て、この気配は………」
《翔身》は悪寒がして、その場を後ろに跳び避けると、そこへと薙刀が降ってきた。
(持っている薙刀は幻か……)
《食龍》もまた、暗殺者時代の小技と、短時間でできる《睡魔》式講習のおかげでちょっと高度な魔法を使えるようになっていた。
彼の魔法の属性は水だ。
水による水蒸気、それによる蜃気楼で本来はないはずのものを見えるように細工したのだ。
そして、本物の薙刀は上へと投げて時間差で相手に当たるように調整。
「さすが、元暗殺者って感じだ」
気配では気づくことができなかった凶刃を弾きながら、《翔身》は素直な賞賛をする。
「お前に褒められても嬉しかねぇよ。てか、お前に物理攻撃は効かないんじゃなかったのか」
「普通に生きてたら、上から刃物降ってくるのって恐怖じゃない?」
平気で頭を分割していたから、化け物のようなやつだと思っていたが、ちゃんと元人間らしく、人間っぽい感性があって感心した。
薙刀を投げてしまった《食龍》は急速な方向転換をして、《翔身》から薙刀へと走っていった。
「っていうかもう君が勝つ方法ってある?もう右腕使えないでしょ?」
「………ぁ、あぁ、使えるとは思ってない。だが、何かの時間稼ぎだよ」
「なにが起こるってんだ………?」
ニヤリと笑い、勝つ算段があるかのように言う。
「よぉく言ったよ!侵入者!!後で君にも『案内人』の権力を与えておいてやろう」
声を聞いた。
よくわからないまま、後ろを向く。
一瞬だけ聞いたことのある、ジジイの声だった。
「ヒーローは遅れてやってくるってな!待たせたよ!!」
ここにいるはずのない、《錬金翁》が、現れた。




