記録39_違法プレイヤーの追撃
《食龍》付近、《引力核》対《スナイパー》。
「《引力核》……!」
先ほどの一瞬、《食龍》が貸してくれた《顎門》。
それを避ける間もなく喰らった《引力核》はかなり息絶えそうなほど弱っていた。
だとしても。
「……いーや。軽い、軽いとも…………。こんな傷、何度も、受けて、きたからなぁ………」
傷口を押さえながら言う様は、まるで大丈夫ではない状態のそれだ。
だが、このような状態でも能力は発動するのに。
重さを操る、《重力》。
あらゆるものの『重さ』を変えることができる能力。
単純な重量、責任の重さ、傷の重さなど、精神汚染から事実改変までやってのけることができる能力だ。
………やはり。
押さえられた傷は、擦り傷程度に『書き換えられた』。
さっきまで《顎門》により抉れていた脇腹も、布をかぶせるとあら不思議、元通りの健康な体に逆戻りってわけだ。
「もう、《顎門》は使えない………」
手元にある玉石をみる。
粉々に砕かれていた。
その玉石は、他人に触れさせることで能力を掠め取り、代償を玉石に肩代わりさせて撃つことができる代物だ。
流石に、《食龍》の腕さえ折れる《顎門》の反動には、玉石は耐えられなかったようだ。
ちなみに、この玉石は、《睡魔》が持っていた。
曰く、かなり昔に《錬金翁》が作った試作品を、ちょっとしたゲーム内貨幣で《睡魔》が買い取ったものらしい。
いわば、『第五元素の呪物』の下となったものだ。
だが、この玉石はかなり使い切りな部分がある。
「あんまり、近づきたくないね」
「それ、聞こえてるからねぇ?そんなこと言われると近づきたくなっちゃうよ?」
自身を軽くした《引力核》は重力を操り高速でこちらに向かってくる。
「チッ。離れろ、ウジ虫野郎。空気が、腐る!」
「カスとかの方が物としての扱いの程度が低いはずなのに、ウジ虫っていうちょっとしたリアリティがあるだけで暴言のランクが変わるよね。不思議」
自分で言っててもよくわからない、と言った顔で不思議な理論を立てながら、周囲に《撃筒》を展開した《スナイパー》に迫る《引力核》であった。
〉〉〉
《霊卓》側の戦闘。
《マスター》と呼ばれる《隠し能力》を持った違法プレイヤーと、《睡魔》&《霊卓》のコンボがぶつかり合っている。
「《睡魔》、次の攻撃の入れ方は、右左下下右上、だ。行けるな」
「おう。こう言う作戦的なところはお前の得意分野だし、任せるわ」
なにやらコマンドのような言葉を呟きながら、作戦指示をしている。
長年の共戦経歴がものを言ったか、相手に悟られず作戦伝達をすることができる2人に、《マスター》はその場その場で影を使い防いでいる。
「いやぁ、流石に1対2はキツイなぁ。影からの増援もできるけど、《女傑》がいるから長い時間の増援は望めない。なら………」
《マスター》は、守りの姿勢をやめ、攻撃の構えを取り始めた。
「《従士》の能力の見せ所、って奴ですね。本気で行くぞう!!」
《マスター》は何かを召喚するように地に手をつけて、チカラを蓄え始めた。
「まずいぞ、《睡魔》、今までの影人形はノーモーションで出てきていた。こんな溜めを作って出てくるものならかなりの脅威が飛び出るぞ。気をつけろ!」
そんな説明をしている間に、彼の召喚は完了した。
具体的には召喚ではなく、作成。
それに、生物を模したものではなく、一つの武器だ。
今の溜めで増殖が終わったのか、最後の影人形を倒した《女傑》が近づいてくる。
「ねぇ、何があった、の…………………え?」
そこにあったのは、黒塗りの兵器。
《マスター》の奥の手。
人の二倍ほどある大剣。
そして、影でできた、超大型キャノン砲であった。
「この二つ、用途は別です。この大剣は《女傑》が暇になった場合、このキャノン砲だけで3人の相手をするのはきついから作ったものです」
そう言いながら、《マスター》はこの大剣を投げつけた。
当然、避けて外れるはずだが………。
その大剣は、《女傑》のこめかみを掠った。
「……はぁ?つ、追尾機能!?」
かなりの距離避けたはずの《女傑》に当たった。
つまり、かなり投げた方向と大剣の着地場所がズレたはずだ。
つまり、追尾機能しかないだろう。
だが………。
まさか、地面に刺さったあと、また自主的に抜けてこちらに標準を定めてくるとは……。
「頑張るな、この剣」
「残念ながら、私が直接操作しているのでね」
「じゃあ、本体がガラ空き……!!」
そう、《マスター》の方を向けば、自分の真正面には漆黒のキャノン砲が鎮座していた。
「それでは、《霊卓》殿には早めのが退場を願いますか。それでは」
その砲身から、影でできた黒の弾丸が、放出された。
新しく短編書きました。
出来がいいとは言えません
出番の無い【自称】最強勇者はかく語りき
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