記録36_衝突する軍勢
「おいおい。こんなジジイをプリンセス役にするってのは、やめといた方がいいぜ?」
椅子に縛りつけられた《錬金翁》が《ドクター》と呼ばれた彼に話していた。
辺りを見回せば、金属製のテーブルに薬品やパソコン、最先端の電子機器や計算機、見上げるほどの大量な資料が山ほどあった。
ここで《ドクター》が何かしらをやっていたのは明白だ。
「大丈夫ですよ。プリンセスのように人質として扱うわけじゃありません。ただただ、あなたが警戒を解くのを待つだけです」
「警戒が解けたら?」
「殺します」
「解けなかったら?」
「延々と警戒が解けるような行動を取るとしましょう」
「俺を解放してくれたら警戒解いてやるよ」
「遠慮しましょう」
解放する、というプランが無さそうであり《錬金翁》はため息をついた。
「じゃあ、俺は警戒を解く気はないが」
「警戒心というのは、解こうと思って解けるわけではないのですよ」
《ドクター》と呼ばれた彼は微笑みながら周りの机でさまざまなものを弄っている。
「というか、なんで俺はこんなちゃちな縄で縛られてんだ?」
ふと、疑問に思ったことを聞いてみた。
「その縄は特別でしてね、能力を封印できる縄でして。ほら、使えないでしょう?」
確認してみる。
うーん。なるほど。
内心でニヤリとほくそ笑む。
「なるほどな。この縄、能力なら封印できるみたいだな」
「でしょう?自慢の研究成果なんですよ」
「でも、まだ足りないな」
「??」
驚いたような、困惑したような顔でこちらをみる。
「この縄、能力を封印できるみたいだが、この縄には欠点がある」
「なんでしょうね?聞かせてほしいものです。私の更なる発展のために」
ニヤリと笑みを浮かべながら、得意げに説明を始める。
「だが、この縄は一部でも本体に触れなければいかなければいけない。服の上から縛るだけじゃ無意味だ」
「まぁ、そのことは把握しています。ですが、あなたの首にも手にもキツく縄を縛ったはずですが」
「あぁ、その通りだ。もちろん、本来ならば、この縄は効果を発揮している」
「…………まさか」
《ドクター》が急に臨戦体制に入った。
「この縄、能力を封印する縄でありながら、能力に触れてもなんともないみたいじゃないか」
「まさか、私が連れてきたのは………」
「そのまさか、ってやつさ」
突如、《錬金翁》は弾かれたように椅子ごと浮き上がり、彼の周囲の床から金属の槍が生えてきた。
「っ!!《錬金術》!!」
《ドクター》は防御に成功したが、周りの資料などはすべて宙を舞った。
宙を舞う紙吹雪の中、先の金属の槍により拘束が解けた《錬金翁》とまだバグが続く《ドクター》が睨み合う。
「まさか、そのレベルまで来ていたか!!」
「あぁ!!ちなみに、記憶は保持している!!接続は完了した!!!これで会うのは三度目か!?」
「なっ!そ、そこまで……」
血が滲むほど、《ドクター》は唇を噛み締めた。
「やはり貴方はあの中で、《睡魔》と同じく警戒しなければならない存在だ!!貴方を最初に暗殺しようとして正解だった!!!」
「そりゃ、光栄ってもんだ!このラスボスがぁ!」
最強の男と、最強の敵が激突した瞬間である。
〉〉〉
《鯱鉾》、《カタクリフト》、《スターロウ》は並び、《隠し能力》を有した3人と対峙する。
「よう、《翔身》。お前は少し怪しいと思ってたんだ」
「………《カタクリフト》か。同じクランに僕と相対することができるやつなんてほとんどいないと思ってたんだがな」
「………俺たちの街を襲撃したクソ暗殺者テロリストか」
「おや、俺のことかな?確か……えっと、誰だっけ?面識ないよな?《翔身》、わかる?」
「《鯱鉾》、だったはずだ。気をつけろ、《引力核》。そいつの能力はかなり厄介だ」
「あらあら、久しぶりなやつもいるなぁ。喧嘩してたかなぁ?《スターロウ》おじさん」
「クラン長の仕事一旦休んできてんだ。こんな戦闘、歳を重ねるごとにつらくなってくんだからな?キッツイんだよ?」
三者三様に、戦闘体制に入っていく。
《鋼鉄魔人》は、《食龍》や《スナイパー》への不信感により、悪いと思いながら《隠し能力》勢に肩入れしていた。
《断罪の巨城》への侵入方法を考え、『案内人』として内側から侵入経路を開いた。
だが、侵入経路を開けた張本人であるからこそ、自分の保険として《近衛》をすぐに自分を助けられる状態でこのエリア内に張らせておいたのだ。
結果、こちらと《隠し能力》勢の意見は食い違い、こちらは負傷を負ったが、保険は意味をなしていた。
ここでも、2つの軍勢による衝突が起きる直前であった。
そこでも、アクシデントは起こる。
弾が飛んできたのだ。
それも、かなり遠方から、《引力核》に向かって。
「見つけた、ぞ!《引力核》ぁ!!」
怒り狂った《スナイパー》がこちらに突撃してきたのだ。




