記録34_会敵①
「………おかしい」
「??どうした、真人」
ある地点、《睡魔》と《スナイパー》は立ち止まって辺りを見回している。
「前、俺は数回ここに来たことがあったんだ」
それは、自分が《案内人》となった時と、《霊卓》を案内した時。
《錬金翁》は初めて来た人の実力を確かめるためにこの場に招待する。
《断罪の巨城》と呼ばれる、特殊領域。
そのため、ここに来たものを試すギミックが何個もあった。
さっきの謎生命体だってその中の一種だ。
だが、こんなに少なくなかった。
今いるここにだって、彼が意図的に配置した、かなり強い巨兵人形があったはずだ。
間違いない。
ここで何かあった。
何か、戦闘が起きるようなこと。
《鋼鉄魔人》チームや、《霊卓》チームがいち早くここに来てそれを倒したのかもしれない。
だが、この周りに僅かに残った戦闘痕を見るに、もっと違う能力が使われているだろう。
「……もう、来たか」
「??なにを、言っているの?真人…………」
「ちょっと急ぐぞ、舞。かなり、まずいことになってる」
「……わかった」
うっそうと茂った草むらをかき分けて進んできたが、もうかなり非効率だ。
面倒だ。
《スナイパー》の実力云々は二の次だ。
《錬金翁》の元へ急ぐ。
「《地獄の門》。とりあえず、道を開け!!」
剣は地に突き刺さり、門は開く。
『絶望の権化は今ここに。“汝ここをくぐるもの、一切の望みを棄てよ”!』
今いる場所は森林エリア。
森林エリアに立ち上がっている、草木は全て、根こそぎ門の中に収納された。
〉〉〉
「おい、おっさん。これはどういう状況だ」
「フハハハ、ハハハハハハ!!愉快、愉快であるぞ!愚かなる裏切り者!《食龍》よ!!!」
「すまないね。君は私の信頼を得ていない。残念ながら、彼らは君を好意的に見ていた。だから、君を倒すなら、ここだと思ってね」
《食龍》は対峙する。
対峙するは仲間だと思っていた彼………《鋼鉄魔人》であった。
「彼らも、君に恨みがあるらしいからね。抜け道につながりそうなところを作る役として、私は事前にここに来ている」
《鋼鉄魔人》と同じ側にいる、彼ら…………《引力核》達は《鋼鉄魔人》と一時的な協力態勢を敷いていた。
「いいかい?君らも、我が街を脅かした罪があるんだ。後で取る責任は取ってもらうぞ」
「そのくらいなら、余裕で取ってやろう。そのくらいで裏切り者を蹂躙できるのならば、お釣りが来るというものであろう!!フハハハハ!!!」
今回来た奴らの中には、見たことがない奴らもいた。
今回、来ていると思われるやつは《引力核》、《翔身》、そして、新参者がそこにいる。
いずれも、《隠し能力》を使う、違法プレイヤー。
今すぐ罰せられるべき者達である。
「そういえば、別働隊になった《マスター》さん、しゃんと仕事できていますかねぇ?どうしても、僕はかなり気になっちゃいますね」
「そういうはやめておいた方がいいぞ。こういうのが信頼が大切なんだ」
「そう信頼して、貴殿はこの者に裏切られたのでは?《引力核》殿」
侵入者である3人は和気藹々と雑談している。
そんな中、《鋼鉄魔人》は一言、《食龍》に向けて言葉を放った。
「お前が反省して、我が街の防衛クランの一員として誠実に働くのと確約するのであれば、お前を一旦解放してやってもいい」
その言葉に、耳聡く《翔身》が反応する。
「んん?おやおやぁ?今、『反省するなら解放』と言っていませんでした?」
「ああ、言ったが」
「あちゃ〜。それはダメ。ダメですよぉ。なんのために僕らを呼んだんですかぁ。もちろん、裏切り者は痛めつけたいので」
「反省しているのであれば、不要な暴力は了承しかねる」
《食龍》の扱いについて、《翔身》と《鋼鉄魔人》が言い合っている。
《食龍》としては、《鋼鉄魔人》の意見が通った方が嬉しいのだが、そう簡単に行くわけにも行かず。
「邪魔だ。鉄屑男」
あっさりと《引力核》に背後から、拳で貫かれて倒れた。
「な…………っ!?鋼鉄の、体…だぞ、?」
「君の体、重ければ硬かっただろうが、いかんせん、君の体が金属として、防御が軽かったからね」
《引力核》の拳には、《鋼鉄魔人》の血液がベッタリと付いていた。
「お前……!!」
「やぁ、裏切り者。君はまだなんだね」
「こんな状況にさせた口が何を言い出すか。多重人格か?」
《引力核》はつまらなさそうに《食龍》を見る。
「うん、とりあえずイラつくな。じっくりと痛ぶるから覚悟しn…………え?」
下卑た笑いをした《引力核》の動きが止まった。
その理由となるものは、《引力核》の足に引っ張り付いていた。
腹を貫かれ倒れ伏した、《鋼鉄魔人》であった。
「そのようなことは、私のプライドが許さない」
「知るか、鉄屑ジジイが」
「鉄屑ジジイかも、しれないが」
よろよろと、《引力核》に縋り付く。
「それでも、この私のプライドが、許さない。
街の責任者として、正義の者として、反省し、正しく在らんとする者に、慈悲を享受する、その権利を与える。それが、この私のやらべきことだからだ」
「うるせぇんだよ。老害」
足にまとわりつく《鋼鉄魔人》を蹴り飛ばし、彼の元に近づく。
「この惑星の中に入れた時点で、アンタの役割は終わってんだ。わかったら、さっさと失せろ」
「フ、フフ。フフフフフ、フフ。ハ、ハハハハハ!」
笑いの三段活用みたいなものを使っているが、彼に余力がないのは一目瞭然だ。
なのに、なぜ笑っていられるのか。
「お前達が裏切る未来を、私が予期していないと思っていたのかね?」
「それは、つまり………」
「さぁ、私設団《近衛》。来るんだ」
そこに現れたのは。
かつて、裏路地で真人達の戦いを見ていた、《鯱鉾》と《カタクリフト》、そして最後に、《スターロウ》。
この3人が、たった今、姿を現した。




