記録2_トモダチ
学校の授業が終わった。
俺は早速、真人にゲームの誘いをしようと思ったのだが…
「………いないね」
あいつは消えるのが早いのだ。
毎回毎回、帰りのHRが終わってふと机を見たらもはや元から居なかったかのようにいない。
やはり。
あいつは学校やら授業やらなんぞどうでもよくて、そっちを多少疎かににしても優先順位一番はゲームなのだ(学校もゲーム内なのだが)。
学校さえゲームになってしまったあいつは、多分最近外に出たのは2年前だろう。
不健康すぎるだろうなと思いつつ、それでも真人とゲームがしたかったから、あいつがいつも行っているであろう惑星《ウォーマー》に足を向けるのだった。
〉〉〉
「ハァ……こんな、ハァ…激戦区に…ハァ………いるのかよ……ふうぅぅぅ………」
「こんなんでへばってんだったら絶対一緒になんてやらん方がいい。あいつ規格外だし」
いま喋っているのは、《睡魔》とよく一緒に遊んでいると噂を聞く中見 早昌。別名《霊卓》だ。
家系が神社で仏教とか、そういうものに近いものだったから、自然に霊について詳しくなったし、家系的に霊感が強いのだ。
そのせいで、何故か真人に気に入られてここに至ると言うところだろう。
そいつにほぼ毎回いる場所を教えてもらった。
来てみれば、そこにはデカい観測所を逆さにしたような建物。
「あの変な建物の中にいるぞ。一応俺から紹介するから一旦待っててくれ」
そう言って早昌は中に入っていった。
ていうか、なんでこんなバリバリのPvPエリアに拠点なんで構えてんだ。
こんなとこに構えてたら絶対……
「おい!ここが《睡魔》の拠点かぁ?ハン!おかしな形状しやがってぇ!」
あーぁ。なんか世紀末みたいなやつの大群出てきたし…
でもここにいるやつら多分全員俺よりレベル高いから嫌なんだよな……。
てか、こっちくるし。
「おい!テメェ、《睡魔》について知ってること吐きやがれぇ!ぶっ潰すぞ……コ、ラ………?」
え?
いつのまにか、世紀末野郎と俺の間に、黒い騎士鎧の男が出てきた。
「こちらの家主なら俺なんで、用件なら俺に言ってくださいねぇ〜。ま、用件なんて聞くまでもないからすぐに叩き斬るけど」
ずっと見ていたはずの世紀末野郎の首が、今はくっついていなかった。
「早……い…」
「お、おまえ俺と同じクラスのやつか。……か、か……翔!だっけ?」
俺は驚いた。
あの真人が俺のことを認識していたという事実に驚かされたのだ。
「なんで俺の名前を?」
「いやぁ、他のやつの名前は覚えてないんだけど、結構面白そうなやつの名前は頭入れてんだよねぇ〜。役に立ってよかったよかった」
「ほぇ〜、そりゃ嬉しい。天下の《睡魔》と一緒にやるために練習しといて良かったわぁ。一応自己紹介するけど、俺は浜崎 翔な。臣長 真人であってるよな?」
「OKOK。とりあえず、ちょい待ってて。世紀末倒してくるから」
「あ、『世紀末』は俺と同じ認識なんだ」
「だってそれ以外の何に見えるっつんだよ」
そんな軽口を叩きながら、いつの間にか2本の剣を構えていた。
その剣を向ける先を見るともうすでに何人かは首のつながっていない世紀末達がいた。
〉〉〉
「よーし!終わったからこっちきなよ!かぁ………けるだ!」
「そう、翔だ」
体感1分もたたずに、世紀末達は駆逐されていった。
それはもう、芸術の域に達していると言っても過言ではないほど鮮やかな手並みで、綺麗に首を飛ばしていっていた。
「じゃあまず、今日の用件を聞こうか?」
「あ、えっとだな。一緒にゲームがやりたいと思ってきたんだが……」
「え、なんか一緒にゲームするにあたってできない理由があった?もしかして」
「ゲームスキルが全く釣り合ってないからどうしようかと……」
正直、現実であんなのが縦横無尽に戦場を駆け回っていたらこの世の戦争など数分で片がつくだろう。
もうなんでもありの領域に踏み込んだ。
いってしまえば『合法チート』。
このゲームの設定上に則っている人達は、こいつを超えることはできないのだ。
そんなこいつがPvPにいる理由など、色々聞きたいことがあるのだが。
今の光景を見ると、ちょっと腰がひける。
そんな時に、早昌が耳打ちしてきた。
『仲良くしてやった方がいい。あいつ、ゲームスキルが高すぎるせいで一緒にゲームできるやつが全くいないんだ』
『まぁ、今のやつ見たら納得だ』
『…あいつ、授業中寝てるくせに結構な寂しがりなんだ。普通に友達作りたいのに少なくて傷心中だったんだよ』
『あ、そうなんだ………』
なんとなく、友達は少なそうだと思ったが、友達を作りたがってたのは初耳だった。
じゃあ俺は、アイツが結構喜ぶようなことを持ってきたってことか。
「ま、まぁ、でも。普通にゲームスキルに差があっても、カバーしてもらえれば楽しめるからな」
「え、じゃあ…」
「あぁ、一回ここ周辺で遊んでみないか?」
俺から、そう提案する。
この提案が、この後々の厄介事に巻き込まれていく原因だったのかもしれない。