記録25_見えざる者
何が起きている?
俺こと、《集眼》である浜崎 翔は、真人の言うとおり《スナイパー》を探していた。
ただし、その最中。
「なぁおい。お前ら部下と上司の戦いを邪魔しに行こうって腹づもりじゃあないよな?あ、《食龍》はもともと部下だったからいいのか?」
「あ、あぁ、そうだったな。確かに、それは無粋だ。本当にお前は頼りになるよ」
「そうだな。俺もあのボスには恨みがあるけど、そこは《スナイパー》に任せた方がいい」
黒いパーカーを着た見知らぬ男が仲良さげに話している姿が見えた。
だけど、なんかおかしい。
あいつは他のやつとは違う。
やばいとか、そう言うわけじゃない。
ただただ違う。
決定的な何かが違っている人間だ。
「なぁ真人、そいつ、誰?」
俺が思い切って真人に声をかけると、その黒いパーカーの男は目を見開いた。
「なんで、認識できる………!?」
「そりゃ、見ない顔だったからな。で、真人、そいつ誰なんだ?」
「!!それはまずい、真人、答えるな!!」
「え、誰って、え、誰だっけ……いや、そうじゃない、俺は、そうだ!こんなやつ、俺は知らない!!!」
目に生気が宿ってきて、ようやく元の真人に戻った。
「どうなってやがる…?……あいつのことを認識できなかった」
「そういう《能力》か?」
「いや、《能力》で、人の意識に介入することなんて無理だ。どうなってる?」
「いや、それができるんだな。残念ながら。最近のゲームの発展はすごい」
「あ、あぁ。確かに、そうだな。でも、メビウスにそんな機能あったか?」
「あったはずだぞぉ?だって、現に俺が使ってるんだから」
「もうお前喋んな、次こいつら相手にその変なやつしたら撃つからな」
また、真人がコイツを認識しなくなった。
でも俺はかかってない。
発動条件はなんだ…?
「おい、お前はなんで俺を認識できてるんだよ?」
「?催眠みたいなやつをかけてるんじゃないのか?」
「似たようなものだが別だ」
「?」
「俺の《能力》の《隠者》は、『そこにあるのが当たり前だと錯覚する』ものだ。スマホを探すためにスマホを使ったり、ペンを探しているのにペンをスルーしたり、よくするだろう。それと一緒だ」
「でも、それはこのメビウスじゃ意図的に起こさないんじゃないのか?」
「残念、実は君らに告知されないようにメビウスをアップデートしたのさ」
「なっ!?」
「今回のアップデートはすごいぞ?なんてったって、臨場感を出すために『脳波』?とか言うのを研究して、それを変化させることが可能になったとか言ってたな」
「つまり、それは」
「人の思考を変えれるらしいぜ?全く、一部とはいえプレイヤーにその情報が入ってないなんて、これは危ないんじゃないかなぁ、この運営は」
「そんな、つまり今のあいつらは………」
「まぁ、メビウス内でできることしかできないよ。そんな、悪い方向に行くことは無いから命に別状はないさ」
「チッ。そんな突然、脳波を操れる機能がこのゲームには追加できるのか?」
「なんか、もともとついてたらしいぞ?付けた記憶は誰も無いらしい。誰の仕業なんだろうなぁ?」
「………とりあえず、そんなこと教えてお前は何をしたいんだ」
「何って、そりゃあ命乞いだよ」
「……は?」
翔は耳を疑った。
コイツは今、命乞いって言ったか?
「俺の《能力》はさっき教えたろ?戦闘向きじゃないからさ、ここで無様に命乞いをしなきゃここから生きて帰れないわけよ。どうしたもんかなぁ……」
「そうか、情報提供ありがとう。それじゃ、お前は用済みだよ」
《隠者》に向かって、刀を構える。
「おいおい。こっちの良心からの説明はどうなったんだよぉ……死ぬじゃんか……………」
「ウルセェ、お前、ボスの関係者だろ」
「あ、バレてた…………!?」
「今気づいたのかよ」
そう、彼は今気づいたのだ。
彼はもう詰んでいることに。
彼との話をしている間、翔は魔力ドーピング剤を使っていた。
使うならここ以外にはないだろうと、後の副作用も考えずに使用した。
彼が気づく頃には、もう詠唱は終了していた。
彼は右手を掲げる。
真人達は………大丈夫だ。当たらないところにいる。
アンウォーマーの住民には申し訳ないが、コイツはここで対処するに越したことはない。
《恐怖の館》で見せた、あの驚異的な魔法。
「フルチャージ………」
今度は、一個人を確実に殲滅するために!!
「《翔身》!!!!」
「バスタアアアアアアァァァァァァァ!!!!!!」
今までで見たことないほどの爆撃を、《隠者》に向けて放った。
〉〉〉
「ま、間に合った!?」
「《女傑》……!」
早昌の彼女(?)であり、高位ランカーの《女傑》が《引力核》と《スナイパー》の間に入ってきた。
「邪魔立てか……!」
「美花…さん………」
「やぁやぁボスさん。私は初めましてかな!?」
「調査用に撮った写真以外ではね。来るなら君だろうと思っていたよ。狂戦士の群れを倒したんだってね?」
「一言が多すぎ。モテないよ?」
「生憎、モテるモテないは暗殺者にはそこまで関係がないんだ」
「つまんない人生送ってんな。ウチのカレピと正反対だわ」
「そういえば、君はあの《霊卓》と交際関係だったな。あの《睡魔》の金魚のフンと」
「一言が多いっつってんだ。潰すぞ」
「おっと、彼氏が馬鹿にされて怒っているかな?無理もない。あんな無能に好意を抱くやつなんてその程度………」
「はい、まずあんたの足貰っとくね」
「!?」
《引力核》は気づかなかった。
彼女の戦法である、神経を飛ばす『神経銃』のみを警戒していたがための、痛恨のミス。
彼は『神経銃』の対処のため、周りに重力が自分から反発するように、つまり自分に近づけないようにしていたのだ。
「クソッ!」
彼女は、口論をしながら神経に地を這わせ、《引力核》の足元まで神経を伸ばした。
神経ぎ地を這いながら近寄れば、植物が重力に逆らうように、彼女の神経にも重力は意味を為さなかった。
「さ〜て、足からどんどん、神経が乗っ取られていくよぉ〜?」
この戦い方……。
人の体内に自分の神経を埋め込み、成長させ、支配させて戦うのが彼女の戦い方だった。




