記録21_仕切り直し
「やぁ、《メビウス》世界一王者、とでも言おうか?暗殺対象の《睡魔》クン」
暗殺者集団のボスは今なお落下している白龍に降り立ち、ゆったりと挨拶をしてきた。
「最近作者がなんでそのネーミングにしたのか後悔してたぜ。まぁ、気に入ってる単語だからいいらしいけど」
「サク…シャ………。というのは置いておいてだな。まぁ君も後ほど暗殺するのだが、その前に裏切り者を始末させてもらっていいかな?」
おっと、つい口が滑ってしまったが、まぁ、その質問は想定内だ。
暗殺とか、そういう裏の業界では、捕えるのは人質をとったりするときだけで、痛めつけたり拘束したりはせず、即刻その場で死刑が鉄板だ。
そう言った目には合わせないと、《スナイパー》と約束したときから決めていた。
「断る」
「それは悲しいね、理由でもあるのかな?ま、おおかた予想はつくがね」
「…《スナイパー》の提案だ。強制的に仕事をやらされて、この際だからやめてやるってな」
ここで口を挟んだのは《食龍》だ。
………知っているのは事前に聞いていたんだろう。
なんか俺無駄なことしたかもしれない
「………あぁ、《食龍》から提案したと思っていたのだがね。まさか彼女の方から提案とは。乱雑に扱いすぎたかな、かなり気に入っていたのに」
ボスが、まるで人の自由を玩具のように扱うように言ってのける。
「まぁ、そんなとこだからさ。裏切り者も、暗殺対象もまとめて殺す。これがベストでしょ」
そう言って、白龍にかける重力を強めた。
必然的に、俺たちも重力を受ける。
ここで天才真人くん、気づきました。
白龍に重力をかけてから今まで、ボスが手を下げたことはありません。
ということは、ボスの能力は手を掲げていないと使えないのだ。
あとは、効果範囲。
これを調べるためには、いろいろなところで実験する必要がありそうだが、どうやって調べるか。
「思い詰めてるな、《睡魔》」
「《食龍》………お前、あの能力の効果範囲、知ってるか?」
「あぁ、それは、ボスが重力をかけたいと思ったところから、球の形でかかる重力が軽くなる。半径1kぐらいじゃないか?」
「そんなにあるのか………」
「はいそこぉ〜、コソコソ話さな〜い」
《食龍》と俺に重力がかかる。
今は、これでいい。
そのまま、そのまま……。
「今だ!《霊卓》!!!」
「!?」
今の声により、ボスは振り向いた。
後ろにあったのは……ただの人形。
当の早昌は、俺の後ろから超高速でボスに忍び寄っている。
「甘いんだよぉ!!」
もちろん、重力がかかっているため、足も重くなってかなり遅いし、ボスの切り替えが早かったから普通に対応されたが、今のでわかった。
今のボスは、頭だけ振り向いていた。
つまり、重力をかけたいと思ったところに手を掲げなければ発動しない、というデメリットがあると見抜いたのだ。
それはつまり、重力をかけるために片腕を使うことになり、必然的にもう片方の手で相手を倒せなければ意味がない。
今の彼は、片腕が使えない状態だ。
「《霊卓》、今の俺はかなり動きが鈍るから、戦闘はお前任せだ」
「なんか〜、俺より強そうだよ?この人」
「俺も、依頼されたのは《睡魔》だけだから、そこまで関係ない人は殺したくないんだよねぇ」
「ボスにはメリットがあるはずだぞ。何てったって《睡魔》の手先が一体倒せるチャンスだからな」
「まぁ……確かに?」
「ねぇ、俺は?俺のメリットは?ねぇ?ちょいねぇ!?」
ボスは、やる気だ。
対して早昌は渋々と言った感じだ。
ここに、《霊卓》対ボスの一騎討ちが始まるーーー
わけでもなく。
ガキン!
鉄の雷が、ボスの掲げていた手にぶち当たる。
鳴り響く銃声。
「!?どういうことだ?銃だと!?《スナイパー》…ではない。誰だ!?」
「おいおい!俺のこと残しといてよぉ!何でこんなへたっぴエイムに当たっちゃってるんだよぉ!?」
ボスが降りてきたビルから声が響く。
無論、そこにいるのは彼…、浜崎 翔その人である。
ボスの手が離れ、重力が解除される。
真人と《食龍》が動けるようになった。
「よし!俺も動けるようになった!!《食龍》、白龍はあとどんくらいで消える!?」
「邪魔が入んなければ、後ちょいだ。全然都市に被害は出ない」
「《集眼》!援護はそういう感じでお願いするわ!」
「もうあんな上手くいく自信ないんだが!?」
「《霊卓》!戻らずに行け。重力のかかってない今が詰めるチャンスだ」
「結局俺は戦闘に参加!?ちょっと!負ける未来しか見えないから!」
真人が一人一人にどんどんと指示を出していく。
その様子に、顔を顰めながらボスはこう口にした。
「一回手に弾が当たっただけで、かなり調子が良くなるじゃないか」
「残念ながら、そうでもしないと生きていけないからね。この世の中」
「なるほど、じゃあ、仕切り直しということか」
「いくら何でも、こっちに有利すぎるけどな」
「さて、それはわからないぞ?」
再び、この争いの火蓋が切られた。




