記録20_ボス
白龍が舞う。
真人と翔は器用に白龍の合間をくぐり抜けているが、まぁ速い。
《食龍》もそうだが、彼らは高ランク帯で生き残ってきた猛者だ。
初心者でさえ、あれは絶対に勝てない相手であることを実感させられる強さだ。
背中から出た白龍には再生能力も備わっており、真人と早昌にちょうど5体ずつ向かっている。
そして、肝心の本体は真人と交戦中だ。
改めて、白龍5体と本体で互角に戦える真人がどれほど恐ろしいかを理解した。
5体となると、考えることが多くなりすごく対処が難しくなる。
1体相手にすると4体が死角から攻撃を加えてきて、その1体を早く対処してもう1体に取り掛かれば、倒した1体は再生し、2体目を倒したときには、4体に戻るという、3歩進んで3歩下がっている気持ちだ。
《食龍》の能力、《顎門》のチカラは多分こうだ。
まず、手から不可視の龍(?)で空間を喰うチカラ。
そして、その喰べた空間を好きなように再利用するチカラ。
今も、その能力を応用して応戦している。
自身の足に空間を噴き出させて高速移動をしながら、白龍の制御、薙刀での攻撃もしている。
真人はこんな化け物と一人で戦いながら説得もしているのか。
それに、裏にいる暗殺者集団のボスはこれ以上に強いのだ。
これは、勝てるのか…。
かなり厄介だ。
これは翔たちに手伝いを頼むのも時間の問題かもしれない。
翔たちの居場所を確認した。
翔は、いた。
だが、《スナイパー》の様子がおかしい。
「くそ、やっぱりか………」
真人が、問題を見つけたように呟いた。
その人は、右手を掲げていた。
〉〉〉
ちょっと前
「…お花摘み、終わった。移動しよ?」
トイレ(?)が終わったらしいので、移動することにした。
「どこだったらいいかな…」
真人達からは『合図が見えるところ』、確か指定されていない。
つまり、真人達が見えればどこでもいいのだ。
だが、この都市はかなり近代的で高層ビルも立ち並んでいるので、屋上に行かないと空が見える面積は限られてくる。
ちなみに、この都市の人たちは『真人に関わるとロクなことにならない』と避難していた。
そのおかげで惑星ウォーマーの赤茶色の地面が見えている。
そんなこんなで屋上に登り、真上の白龍の様子を伺う。
《女傑》と攻撃でかなり白龍は疲弊している。
真人と早昌ももう白龍の上で戦いの最中だ。
「あとは、白龍の分身に注意しながら真人たちの合図を待つだけだな、《スナイパー》」
「うん、そうだね」
………なんだ?
何か違和感を感じる。
なんだか、人が変わったような錯覚が………。
そして、その人物は、おもむろに右手を挙げた。
〉〉〉
「……お花摘み…終わった、よ……………?」
路地裏から出てきたのは、《スナイパー》。
だが、待っているはずの《集眼》がいない。
……?
「…どこに行ったの………?」
とりあえず、合図が見える場所、兼《集眼》を探す場所として、どこかのビルの屋上を目指したのだった。
〉〉〉
「早昌、やばいかもしれない。この都市が、潰れるほどの…ッ!?」
「ッッッ!?!?何が起きたんだ!?《食龍》のせいか!?」
体に異変が起きたのはすぐに気づいた。
この異変は……重くなったんだ。
ダンベルを体中につけた感覚に似ている。
その異変は、《スナイパー》が手を掲げた時から始まった。
「なぁ、《スナイパー》の能力ってこれじゃねぇよな?それに、俺たちまだ合図出してないもんな?」
この問いに反応したのは、以外にも《食龍》だった。
「いや、あれは、《スナイパー》じゃない。これは、これは――――」
「俺等の、リーダーだ」
「「なぁっ!?」」
瞬間、重力が一気に大きくなり、白龍は自身を支えきれなくなり、俺たちは落下を始めた。
〉〉〉
「おい!《スナイパー》!何が起きてるんだ!お前、何やったんだよ!?」
「不思議がることでもないさ、僕がそもそも《スナイパー》ではないと仮定したらね」
「!?」
翔が《スナイパー》だと思っていた人が、首元に手を伸ばし…マスクを取った。
ここは仮想現実。
現実では不可能なこともできると、こういうところでも理解させられる。
「気づかなかったのは笑えるけどさ、もうちょっと努力はしようよ。仮に本物の《スナイパー》でも裏切る可能性があったんだから警戒すべきだよ。若さ故かな?」
「《スナイパー》はどこだ」
「まぁ、仲間の居場所を聞くのは定石だよねぇ。上の仲間の心配をしなくても大丈夫なのかな?彼らもあと少しで死ぬよ?」
「そうならないっていうのは、この短期間で痛感したよ。少なくとも、お前の思い通りになるような奴らじゃない」
「信頼があって大変結構」
翔と暗殺集団のボスは、睨み合う。
先に動いたのは、ボスの方だ。
「まぁ、君に用があるわけじゃない。用があるのは『裏切り者』だ。彼、彼女を殺すだけなんだから、君たちと戦う筋合いはないんだよ」
ふわふわと浮き上がり、そして、白龍の方へと移動を始めた。
〉〉〉
「おい!《食龍》!白龍を消すことはできないのか!」
「今やってる!高層ビルの屋上に当たる前には消せるはずだ!!」
真人と《食龍》は、一時休戦をし、ボスへの対策を練っている。
「早昌、翔の方はどうなってる」
「《スナイパー》が変装してたみたいだ。あれが、多分ボスだ」
ここで、ふと早昌が気になったことを言った。
「なぁ、ボスの能力は何だ?」
「…………《重力》。ありきたりなチカラだが、ボスはそれを逸脱してる。無理やりな解釈で、相手だけを傷つけるチカラがある」
「含みのある言い方だな、どういうことだ」
「理屈がわからねぇから、言えない」
不明な所がある、というとこまでわかった。
とりあえず、今は俺たちを重くしてる感じだな。
「まぁいい。早昌、ボスがこちらを気にしてる気配は?」
「結構気にしてるが………っ、こっちに来た。浮いてる」
「来たか…」
今ちょうど、翔との話しが終わり、こちらに向かうところだ。
「おいおい、俺の方来させんなよ?白龍消してるけど、かなりギリギリなんだから」
「お前はそっちに専念しろ。こっちの方は俺がやっとく」
「早昌、近づいてきたボスに、まずは挨拶してやろう」
「お前もお前で、一方的に攻撃はかなり性格悪いと思うぜ……」
真人VSボスの戦いが始まった




