記録115_《ガーデンコール》
「いやああぁぁあああぁぁぁ!!後生ですからぁ!勘忍してくださいいぃぃぃ!!!」
「ダメだよ〜《風姫》ちゃん?」
「酷いよ《女傑》ちゃん!悪魔!鬼!!人殺しいぃ……」
数時間後、空間テレポート、他諸々を使って最短距離で《ガーデンコール》に到着したわけだが、それでも宇宙船を降りることはできていない。
その理由の一つが今のアレ、《風姫》だ。
《風姫》は《隼鬼》の弟子であるが、《風走一刀流》の修行や《コロッシウム》に放り込まれたことを引っくるめて、正直言ってトラウマなのである。
ただいま、《女傑》が、宇宙船から降りるハシゴにしがみ付いている《風姫》の脚を持って宙に浮くように引っ張っている。
その後ろで、《霊卓》と《カタクリフト》がとある用意をしながら世間話をしていた。
「はぁ、《隼鬼の加護》でガッチガチに護って貰ってんのに、なぁんでこんなに嫌われるかね、アイツ」
「まぁ俺たちと同じ年代だし、《隼鬼》も人に物を教えるのがうまくいかなかったんだろ。よくあることだ、きっと」
「でもさぁ、同じく同年代の《睡魔》が育てた《集眼》君はすごいできる子だよ?」
「《集眼》の才能ありきだからな。下積み時代の経験も関係してるんだろうけど」
「ちょっとぉ〜、まだなの〜?」
「もうちょっと待ってろ〜?」
「《霊卓》さんと《カタクリフト》は何やってるんですかぁ〜!?」
「えっ、そりゃもう」
「「《隼鬼》の呼び出し」」
「ぎにぇああぁ……」
「あ、死んだ」
へなっ……、と《風姫》が萎み、《女傑》にズルズルと宇宙船外に引きずり出される。
《睡魔》のみを残して、宇宙船にロックをかけた。
「ほぅら周りを見てごらん?綺麗なお花がいっぱい〜」
「この中を瞬足で駆け巡る《四天王》ですよ?恐怖以外の感情湧くんですか?」
「湧くでしょ、ねぇ?《霊卓》、《女傑》、《カタクリフト》」
「まぁ恐怖もあるかもしれないけど、それも鍛錬の内だよ。《隼鬼》もきっとそう思ってる。俺はそうは思わないけど」
「えぇ〜、なんていうの?緊張しないようにする……そう、胆力ってやつだよ!それを鍛えてるんだよ。多分……ね?」
「私は憧れの《四天王》ですからね。感動でも芽生えるんじゃないですか?もう鍛治師の道辿っちゃったけど」
「へぇ〜、つまり《カタクリフト》以外俺に恐怖を感じてるってこと?ちょっと傷つくわぁ〜」
「そうそう。大体お前は別に怖がられても平気……いやいやいやちょっと待て!!」
「「「え」」」
《霊卓》が後ろを振り返ると、それと同時に《風姫》の頭が何者かによって鷲掴みにされる。
「ピィッ!これって………」
「よぉ、お前ら。現《四天王》、いや《メビウス》史上“最速”の男、《隼鬼》だぜ」
背後には平然と共に歩いている《隼鬼》が存在していた。
「な、なななななんでもうこんなとこに……」
「さぁがしたんだぜぇ?お前らからしたら数秒だったかもしれないが、俺からしたら数時間探してたんだわ」
「あぁ、そういえばお前の能力ってそんな感じだったな」
隼鬼、能力:《倍速》
《事象》の能力であり、現状最強格の能力。
他人から見ると2倍速で動いているように見えるが、一人称視点だと1/2倍速で周囲が動いているように見えるのだとか。
その昔、《霊卓》が模擬試合を行った時に教えてくれた。
まぁ、その当時は俺の能力は発現していなかったから普通に負けたのだが。
怯える《風姫》に、《隼鬼》はお構いなしにアイアンクローを続ける。
「よぉくそんなシケた面ぶら下げながら帰ってきたなぁ?」
「お、お助け、お助けえぇ………」
「まぁまぁまぁ、そんなんだから弟子に嫌われるんだよ?」
「うっせぇな《女傑》!弟子取ったことねぇ奴が簡単に言うな!意外とむずいんだよ!なんか《睡魔》のヤローは成功してたがな!!」
「その内さぁ、弟子同士で戦わせるとかしそうだよね〜あの二人」
「「やりそう」」
《カタクリフト》の空想に《霊卓》と《女傑》は共感する。
「アリかもな。《睡魔》が起きたらやらせるか」
「却下です!ぜったいに!きゃっかイタタタタタ!手、手ェ!アァイアンクルゥー!強くしないでぇ!!」
《風姫》の頭蓋骨がメシメシと悲鳴を上げる。
「と、とりあえずだ《隼鬼》。《睡魔》が迷惑かけたみたいだな。なにか手伝えることはあるか?」
「あーアレな。あの通知のせいで俺は負けたんだ。心苦しいが、《睡魔》にも手伝ってもらおうと思ったんだがなぁ……」
「負けたぁ!?《四天王》のお前がぁ!?」
「あぁ、流石に強かったよ。お前たちもアイツ狙いなんだろ?気をつけろよ」
「いやいやそいつ誰だよ?」
「え?」
「え?」
《霊卓》と《隼鬼》が顔を見合わせる。
話が噛み合わない。
「お前たち、何の目的でここにきたんだ?」
「それはこっちのセリフだ、《隼鬼》。戦闘禁止エリアである《ガーデンコール》で一体何と戦うんだ、しかもお前が負けるような相手に!」
すこし《隼鬼》は黙り、自身の髪を掻きむしって、唇を噛んだ。
その数秒後に、《霊卓》に向き直り、こう言った。
「碑文は知っているか?」
「俺たちがここにきた理由は、その碑文と、《ガーデンコール》の位置情報を敵組織から奪ったからだ」
「そうか……。まぁ、手伝ってもらう予定だった物だ、いいだろう」
そういいながら、《風姫》の首根っこを掴んで引きずる。
「ついて来い。俺たちはこれから、《真実の敵》と戦う」




