記録112_最強のお父さん
《睡魔》が睡眠に入り、《ドロース》たちはまず、《隼鬼》へのお礼参りに行くことにした。
《隼鬼》は神出鬼没、《風姫》も《風走一刀流》の道場で稽古をしているといつのまにか居る、としか捉えていなかった。
なので、まずは《睡魔》と《隼鬼》の会話ログから、どこで落ち合う予定だったのかを探らなければならなかった。
「え、寝てますよね?」
「あぁ。そして、今の状態ならそんな会話ログを覗き見るのは不可能だ」
「じゃあどうするんです?」
「お前だったら思いつくだろ?《カタクリフト》。ほら、今の俺と早昌の関係だよ」
「……そうか、現実!真人の家に凸すれば会話を見れる、ってことか!?」
「あぁ、残念ながら、そう言うことになるな」
「「「はああぁ〜〜〜〜………」」」
その発言に、息を吐く者が数名。
《女傑》、《霊卓》、《錬金翁》だ。
「おい、蓮蔵のジジイ。発案しておいてため息つくな」
「吐きたくもなるさ。あんな思い、俺はもうごめんだね」
「菓子折り持ってかないとだねぇ。今回はどんなこと言われるんだか……」
三人は憂鬱な気持ちになりながらも頭を抱える。
「えーっ……と?話が見えてこねぇんだけど、つまり?」
話の流れが掴めない《食龍》に、《錬金翁》が答える。
「つまり、あいつの親父、『臣長 英治』って《メビウス》の開発者が、これから行く家で、俺たちに対して《メビウス》内での行動に対する批評をしてくるってわけだ」
「言っちゃなんだけど、あーいうのが師匠としては優秀なんだろうね」
「実際、俺たちのゲームスキルはあの人に会ってから格段に上がったし」
嫌そうな顔をしながら、渋々と言った感じで目的地を決定する。
「まぁ、《メビウス》を作ったような人だ。めっちゃ頭がよくて、大金持ちなのは確かじゃ無いかな?」
「えぇ〜、もし行くんだとしたら、スーツとかの方がいいですかね〜?」
「ああ、そんな畏まらなくてもいい。そんな格式を嫌う人間だ。そして、当然お前たちもついてくるんだぞ」
悩みを呈する《風姫》の問いに答えた《錬金翁》が、まだ『臣長 英治』と会っていない《カタクリフト》、《風姫》、《食龍》、《スナイパー》を指さす。
「え。私、たち、行く、の?」
「当たり前だ。俺ん家に何が来たのか、忘れたか?《ドクター》は本気で俺たちを潰しにかかる。ゲーム内からいなくなればいいから、無力な現実世界を奇襲されちゃ、《霊卓》がやったようなこと、できやしない」
「……もしかしてさ、《ドクター》派攻略のための合宿だったりもする?」
「そうなるな。大丈夫だ、アンタの関連施設の全員に休みの許可を取れるように手配しておく」
「………たまに思うんだけど、若者の休日の操作を手配できる《錬金翁》の地位って一体なんなんだよ……」
「まぁ明言はしないが、かな〜り上だと思っておいてくれ」
そう雑談しながら、敵の宇宙船のエンジンを起動する。
「とりあえず、この船の目的地設定したら、全員ログアウトして、移動として5時間後に横浜駅にこい。いいな?」
「5時間か……足りるか?」
「俺は徒歩20分圏内だからなぁ〜」
「5時間はあくまで指標だ。もっと早くてもいいし、もっと遅くでもいい。とにかく、住んでる場所とかも全部考慮した上でここに来ること〜」
そう言いつつ、《スターロウ》の乗った宇宙船の操作を進める。
エンジンがかかり、ドンっ、と大きく機体が揺れる。
その時、《スターロウ》が握りしめていた何かが落ちた。
それは、昔ながらのUSBを使った保存端末。
……つまり。
「…ナイスすぎるだろ、あの小僧………」
「?どうした?《錬金翁》?」
《錬金翁》は、その保存端末をひょいと拾い上げて、こう言った。
「間違いねぇ。コイツは、ウィルスを取り除いた、《スターロウ》が決死で手に入れた位置情報だぜ」




