記録110_彼の違和感
……何かおかしいのは、わかってる。
外に敵がいるのだってわかってる。
私だって、ふざけてるフリをしながら、船の周囲には能力で文字通り神経を張り巡らせているから、近くに怪しい奴がいたら手に取るようにわかる。
《スターロウ》さんがそれを言い当てたのは流石だ、とは思ったけど、彼らしくない、とも思った。
いつもの彼ならば、そんなものは『ちょっとトイレ行ってくるね〜』とかはぐらかして、誰にも心配かけないように終わらせる。
それで、後々になって隠れて戦ってることがバレて、《スターロウ》さんがクランのみんなから怒られるんだ。
「《スターロウ》さん一人が支えていかなくても、俺たちは俺たち全員で支え合っていけばいいんですから、そんな気を遣わずに、俺たちにも戦わせてください」ってね。
それが、元々私たちのいたクラン、《舞獅子》のいつもの風景だ。
それなのに、叫ぶほどの大声で、外の敵を呼びかけるようなこと。
おかしい、と思わないはずがない。
舞ちゃんと外に出た後に、ちょっとだけ頭の片隅に残っていた違和感。
今来てる刺客と戦闘になれば、消えるだろうと思っていた違和感。
でも、その違和感は次第に大きくなってきて……。
一つの、結論にたどり着いたわけだ。
「《スナイパー》、今すぐ戻るよ」
《女傑》は脇目も振り返らず、振り返って一直線に元いた船に戻ろうとする。
《スナイパー》は、当然困惑した。
「な、なんで?まだ、相手、残ってる。もしかし、て。メッチャ、強い?それ、とも、《睡魔》、から、呼び出し?」
「違うよ、ちょっとした確認。彼ならやりかねないからね」
「かれ……?」
《女傑》は急いで船に辿り着き、船の扉を強引に開ける。
《スターロウ》さんが大声で叫ぶように外へ誘導したのならば、危機は中にある。
なんであんな危険なことをしておいて気づかなかった?
相手はあの天才ハッカー《ドクター》。
あの本拠地である惑星からこの船までなら、ヨユーで遠隔地ハッキングで、アカウントを乗っ取ることは可能。
ましてや、ウィルスなんてものが入れられていたら、回避は必死!!
そんな奴からの録画、どんな細工がしてあってもおかしくは無い。
《スターロウ》にだけ、あからさまに分かるように敵意を見せつけて、《スターロウ》だけを支配する映像だって、時間があれば作り出せる。
扉を開けて、船の中を見る。
「大丈夫!?おっさん!!」
そこには、先ほどから流れていた《ドクター》の録画と、その録画に向かうように付けられた座椅子に深く座りながら眠っている男がいた。
『待っていたよ、《女傑》。さすが元クランメンバー。彼の性格を知っているから、彼がなぜあんな行動を取ったのかも理解できる……。優秀な部下だね』
「…この映像、録画じゃなかったの?なんで私が来たってわかって………」
『通話かと見間違うかな?残念ながら、そんなことをしてられるほど暇ではないんだ、僕は』
「じゃあ、なんで私の言いたいことが…」
『あー全くもう!じゃあ答えてあげるよ。未来予測演算の最新型、それの改良版の式を頭の中で立ててるんだよ。元《四天王》として、これくらいわね』
相変わらずのぶっ飛びぶりに嘆息しつつ、本題に入る。
「で?《スターロウ》になにか小細工したみたいだけどさぁ。それでなんとかできると思ってるわけ?」
『少なくとも、《睡魔》たちを脅すくらいなら、コイツで十分だ』
そういうと、《睡魔》たちから、《コロッシウム》での戦闘が終わった旨を送信されたので、こちらからは救援要請を出すことにした。
ここから、ゲーム《メビウス》は大きく変わっていくこととなる………。




